Eighter -Scarlet Nocturne-
47ther 〜影の影闇中に咲く C〜



#5
元咲魔(サイタマ)「げはっ!?」
元咲魔(サイタマ)「ごほおっ!?」
 その後も次々と元咲魔(サイタマ)の連中が吹き飛ばされていく。
陀疎(だうと)「貴様、何をした!?」
包英清堅(つつみひで・きよかた)「それが分からないようでは貴様もそこまでということだ!」
陀疎(だうと)(ただ走っているだけなのに、何故……いや、走っているだけ……?!)
陀疎(だうと)「なるほど、読めたぞ、貴様の力……その走ることで生まれるスリップストリーム……いや、ソニックブーム
こそが貴様の幽闘術の真の力だ!」
 ビシィっと決めて叫ぶ陀疎(だうと)清堅(きよかた)「そうか……やはり、貴様はその程度だったというわけだな……」
 対して、清堅(きよかた)はガッカリした様子でそう告げる。
(かみ)総介(当然だな……そんなスピードで走っているのならば、走っている本人も持たない……)
梓與鷹(よたか)(まぁ、ヴァルカナリアクターの再生能力をアテにしてそれほどのスピードを出す……なんてことも考えら
れるが、残念ながら、違う)
※大体、そんなスピードで走っていたらもっと分かると思う。
 そして、陀疎(だうと)とは違って與鷹(よたか)と総介はそのカラクリが分かっていた。
 幽闘術、天翔る流の運び(スカイウォーク・ストリーム)……その真価はあらゆる場所に足場を作り出せるところにある。
 地面をしっかり踏み込むというのは武術にとって重要な因子(ファクター)である。そして、当然の事だが、人は空中で地面を
踏み込むなんて芸当はできない。(そもそも空中に地面なんてないんだから)
 だが、あらゆる場所に足場を作り出せる幽闘術、天翔る流の運び(スカイウォーク・ストリーム)は違う。
 どんな場所だろうが、地面……足場をしっかりと踏み込み、攻撃を繰り出せるのであれば、その攻撃は十全に行
えるということだ。
陀疎(だうと)「だ、だが……」
 清堅(きよかた)がどんな手を使おうが、まだ大神の降真靈(こうしんりょう)が優勢のはずだ。
総介「フッ、そろそろ俺も全力を出すか……」
與鷹(よたか)「総!?」
 突如そんなことを言い出す総介。思わず総介を見る與鷹(よたか)を無視して、総介は蒼王の刃(ブルーロード)藍后の刄(ブルーエンプレス)を一本に統合して
神の特刀(デウス・エクス・ブルー)となす。
総介「後のことは任せる!」
與鷹(よたか)「え〜、ちょっ……」
 しかし、総介は與鷹(よたか)を無視して突撃を敢行する。

#6
総介「臠蒼極連(れんそうごくりん)!」
 ズバババババッ
 元咲魔(サイタマ)の集団に飛び込むと同時に斬撃の嵐を浴びせる総介。
梶太郎(かぢだろう)「ヘッ、やるじゃねぇか……だったら、俺も休んではいられねぇなぁ!」
梶太郎(かぢだろう)(行くぜ!)
ウェル(あ〜、うん。そね……)
梶太郎(かぢだろう)「おらあ!死にたい奴は名乗り出ろ!金鯱流楼(きんこるろう)!」
 梶太郎(かぢだろう)も今一度立ち上がり、迫る元咲魔(サイタマ)に対して流れる水の様な華麗な動きで拳打を叩き込む。
陀疎(だうと)「な、なんだと!?」
 奴らにまだこんな力が!?と驚きを隠せない陀疎(だうと)。
 おろおろ……
 そして、いかにデミカナリアクターと同等の回復能力を要するとはいえ、元咲魔(サイタマ)の一行も疲弊や動揺が体に出て
くる。
與鷹(よたか)(あと一歩ってところか……)
 だが、今ここで與鷹(よたか)が全力を出してもいいものか……
 そんなことを考えつつも、識狼天見で回りの注意を怠らない與鷹(よたか)。すると、ここへ近づいてくる者の気配を感じ
る。
與鷹(よたか)(新手!?)
新田姜馬(きょうま)吹雪く悲鳴に山猫と輪刃廻舞(ゲシュテーバー・ゲシュライ・ルクス)!」
 カキィンッ
 しかし、次の瞬間、氷を纏ったモナチェロが辺りを駆け巡り、元咲魔(サイタマ)の連中を氷漬けにする。
出音(でおん)・グロウシュベル「陽明閃刃破(ようめいせんじんは)!」
 ザザンッ
 更に氷漬けになった元咲魔(サイタマ)出音(でおん)がX字に切り裂いていく。
総介「ハァハァ……どうやら俺達の勝ちだな!」
 地面に神の特刀(デウス・エクス・ブルー)を突きさし、肩で息をしながらも、総介が宣言する。
陀疎(だうと)「なっ、こいつらは……」
山咲(やまざき)桜「援軍ですが、何か?」
 そして、桜も呟く
陀疎(だうと)「チッ、さっき逃した奴か……だが、たかが二人増えたところで……」
御御脚(ユウ・ユウジャオ)「いヤ……」
旧透水(ジウ・トウシュイ)「二人だけデはなイ!」
 有嗎幇(ユーマハン)の幹部だっている。
陀疎(だうと)「き、貴様ら一体!?」
古畑呂司(りょうじ)有嗎幇(ユーマハン)だ!」
清堅(きよかた)有嗎幇(ユーマハン)……か……」
総介「行け!與鷹(よたか)!今がチャンスだ!」
與鷹(よたか)「そ、総!?」
 と、その時、総介が叫ぶ。
 元咲魔(サイタマ)の連中が氷漬けになっている今が陀疎(だうと)を討つ最大のチャンス。それを総介は與鷹(よたか)に伝えた。
 そう、元咲魔(サイタマ)の連中がどれだけ強かろうとそいつらを統括するヘッドが潰されればたちまちに組織は瓦解する。

#7
與鷹(よたか)「オオッ」
 天狼甲ショロトルを装備すると、一足飛びにかかる。
陀疎(だうと)「ひああっ!?」
 元咲魔(サイタマ)の連中が氷漬けで動けない今、大将の防御は丸裸である。
 情けなく両手を翳して防御する陀疎(だうと)だが、そんなもので與鷹(よたか)の拳を止められるはずなどない
 ガキンッ
與鷹(よたか)「何!?」
 しかし、そんな與鷹(よたか)の拳を受け止める一本の錫杖。
 それは大神の降真靈(こうしんりょう)の高僧のみが持つことを許される錫杖、轟曦真靈杖(ごうきしんれいじょう)
韻麗(いんれ)「軍事遠征もこの程度でよかろう。撤退だ!」
 唐突に現れた韻麗(いんれ)はそんなことを告げる。
 量産型百万朱版の転生小聖印(ヴァーミリオン・トランスマイグレーション)を作れるのは陀疎(だうと)のみ。
 だから、ここで陀疎(だうと)を失うわけにはいかんのだ。
 ズドオムッ
梶太郎(かぢだろう)「な、なんだ!?爆発!?」
 氷漬けになっていた元咲魔(サイタマ)が自爆。しかし、それは氷から脱出するためであり、そして、煙幕を張るためでもあ
る。
 そして、爆煙が晴れた時、そこに大神の降真靈(こうしんりょう)の連中は一人もいなくなっていた。


END

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