Eighter -Scarlet Nocturne-
46ther 〜奥多摩は魔影間者 B〜



#3
梓與鷹(よたか)「アンタがユーサーに何を吹き込まれたのかは知らないが、それは一般人の手に余る代物なんだ」
 だから……と言いかけたところで総介が與鷹(よたか)の肩をポンと叩き制止する。
(かみ)総介「いや、こいつらは一般人ではない」
 首を左右に振りながら静かに告げる総介。
與鷹(よたか)「おい、総、それはどういう!?」
一同「……」
 総介の言葉を聞き、包英清堅(つつみひで・きよかた)を含め従業員一同が一瞬だけ動きを止める。
総介「よく訓練されているようだが、それが仇となったようだな」
包英清堅(つつみひで・きよかた)「はて?なんでしょうか?……当方には見当もつきませんが……」
 平静を装いつつ、清堅(きよかた)は何故?と内心首をかしげていた。
 目の前にいる漢はSRAPの(かみ)総介……確かに、総介には独自の情報網を持つと聞いてはいたが、それでも、我々の
正体に辿り着けるとは思ってもいなかった。
*「六ツ石山は奥多摩三大急登の一つ。訓練するのは普通では?」
総介「フン、通常の訓練ならばな……だが、お前たちは違う。日常生活の中で音を立てずに歩いたり、気配を消し
て佇んだりする修業を積み過ぎた……」
與鷹(よたか)「そうか!俺が感じた違和感はソレか!」
 総介の言葉を聞いて與鷹(よたか)は先ほどから感じていた違和感の正体を知った。
総介「そんな修業をするのは、忍びしかいない!」
 そこまで看破され、従業員は思わず清堅(きよかた)を見る。
清堅(きよかた)「なるほど……これは失敗でしたな……よもやそこから気づかれてしまうとは……」
総介「いや、俺が貴様らの正体に気づいたのはそれではない」
一同「なんだと!?」
 総介の言葉に清堅(きよかた)ら一行は身構える。
総介「貴様の名前よ……包英(つつみひで)……『包む』は英語で『wrap、wrapper』……転じて乱破(らっぱ)!……隠すならもっとマシ
な偽名を使うんだな」
清堅(きよかた)「ハッ……ハッハッハッハッ!……見事だ!我が名前からそこまで見抜くとは……」
與鷹(よたか)(ダジャレかよ……)
 呆れてものも言えない與鷹(よたか)であった。
清堅(きよかた)「ならば、改めて名乗ろう。私は包英清堅(つつみひで・きよかた)……ここ六ツ石山に拠点を構える忍びの一派、送魔(オクタマ)の棟梁だ!」
與鷹(よたか)(奥多摩に居を構える忍びの一派の名前が送魔(オクタマ)て……)
※まぁ、埼玉の秩父盆地に居を構える忍びの一派の名前が咲魔(サイタマ)って言うくらいだし……奥多摩に居を構える忍びの
 一派の名前が送魔(オクタマ)だったとしても何ら不思議ではない。(いや、不思議だよ!)

#4
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「おいおい、咲魔(サイタマ)の次は送魔(オクタマ)かよ!」
 こいつは傑作だぜ!と腹を抱えて爆笑する梶太郎(かぢだろう)清堅(きよかた)「……やはり、貴様らが咲魔(サイタマ)を壊滅においやった張本人か……そして、今度は送魔(オクタマ)をも壊滅せんとやってきた
ということだな……」
與鷹(よたか)「え?いや、違うけど……」
*「おのれ!」
*「許すまじ!」
 しかし、聞く耳持たずの送魔(オクタマ)一行であった。
清堅(きよかた)「だが、我ら送魔(オクタマ)咲魔(サイタマ)と同じだと甘く見ると後悔するぞ!」
総介「チッ、ユーサーに吹き込まれたのはソレか……」
 殺気立つ送魔(オクタマ)一行を見て、既に話し合いで解決するのは不可能だ……と総介は悟った。
 ズドオンッ
與鷹(よたか)「な、なんだ!?」
 その時、突如遠くで爆発が巻き起こる。
清堅(きよかた)「何があった!?」
*「はっ、謎の集団が……いえ、アレは……間違いなく、咲魔(サイタマ)です!」
一同「なんだと!?」
 予め断っておくが、ここに奴らが来たのは全くの偶然である。奴らは軍事演習のためにここに来た。
 送魔(オクタマ)のことを知る咲魔(サイタマ)だからこそ、そして、手に入れた力を試すために奴らはここへ来たのだ。
総介「フッ、これでわかっただろう?俺たちが咲魔(サイタマ)を滅ぼしたなどと全くのデタラメだと」
 これは好機とばかり送魔(オクタマ)を丸め込めようとする総介。
*「ど、どうします?」
清堅(きよかた)「……ぐっ……」
 総介の言葉を信じるか、それとも疑うか……しかし、情報が少なすぎる。
 だが、総介が咲魔(サイタマ)と結託して送魔(オクタマ)を滅ぼすべくやってきた……とも考えられなくもない。しかし、時間は待って
くれない。決断が遅くなれば、取り返しのつかないことになるのは必定。
陀疎(だうと)「さぁ、者ども、その力を遺憾なく発揮せよ!」
 と、清堅(きよかた)が考えていると、咲魔(サイタマ)の一人が叫ぶ。
梶太郎(かぢだろう)「あっ、あいつは……咲魔(サイタマ)の棟梁の座を奪い取った陣野影路(かげみち)陀疎(だうと)「違う!もはや咲魔(サイタマ)など過去の遺物!私は陀疎(だうと)……大神の降真靈(こうしんりょう)が高僧の一人!」
 陣野影路(かげみち)はもう死んだ!ってな感じで否定する陀疎(だうと)與鷹(よたか)「なっ、奴ら大神の降真靈(こうしんりょう)の軍門に下ったのか!?」
総介「フッ、どうやらそれだけじゃないようだな……」
梶太郎(かぢだろう)「それはどういう?」

#5
 総介はまず陀疎(だうと)を見ろと言う。奴の右手の甲には赤と青の四角を組み合わせた八芒星にCCCXIVの数値が刻まれて
いる。デミカナリアクターの証である。
 次に奴が引き連れてきた咲魔(サイタマ)の連中を見てみると、なんと、奴らは全員赤と青の四角を組み合わせた八芒星とそ
の中が真っ黒に塗りつぶされた入れ墨のようなものをしていた。
梶太郎(かぢだろう)「な、なんだありゃあ!?」
 まさかアレもデミカナリアクターの証だとでも言うのか?!
陀疎(だうと)「私の幽闘術、影の道極み(シェード・プロ)は影でいろいろなものを生み出すエクストラスキル」
※よく考えると影の道極み(シェード・プロ)って3DCGを作るエクストラスキルであって3Dプリンタのエクストラスキルではないので
 は?と考える人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
 そして、その影の道極み(シェード・プロ)の真骨頂がこの量産型百万朱版の転生小聖印(ヴァーミリオン・トランスマイグレーション)だと豪語する。
與鷹(よたか)「量産型……百万朱版の転生小聖印(ヴァーミリオン・トランスマイグレーション)?!」
 そう、陀疎(だうと)は自らが生み出した量産型百万朱版の転生小聖印(ヴァーミリオン・トランスマイグレーション)の性能試験のためにここへやってきたのだ。


END

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