Eighter -Scarlet Nocturne-
42nder 〜智利(チリ)(ちゅ)ら伝(かげ)り剣 D〜



#7
 一方、ヴァルカナ確保のために別動隊として動いていた姜馬(きょうま)呂司(りょうじ)はロス・リオス某所にある小さな祠の前にい
た。
 そこは歴史から忘れ去られし小さな祠。何の為に作られ、何が祭られていたのかも今となっては分からない。
 しかし、確実にここにヴァルカナは存在する……と姜馬(きょうま)は感じていた。
古畑呂司(りょうじ)「どうしてここに?」
新田姜馬(きょうま)「コレがな……」
 そういって姜馬(きょうま)は冥爪甲モナチェロを装備した右手を見せる。
呂司(りょうじ)「流石です」
 憧れの眼差しで姜馬(きょうま)を見る呂司(りょうじ)姜馬(きょうま)(祠を動かした後がある……しかもつい最近。これは既に何者かが祠の中に侵入していた証……)
 だが、既にヴァルカナが奪われた後……ではない。もしそうだとすれば、祠の位置を元に戻す必要がない。つま
り、これはヴァルカナを設置するためにここを訪れた跡だ!と、言う風に冷静に分析を始める姜馬(きょうま)姜馬(きょうま)「行くぞ!」
呂司(りょうじ)「はい!」
 姜馬(きょうま)も祠を動かし地下への空間へ
姜馬(きょうま)(思った通り、人の気配はなし……)
 それはつまり、まだヴァルカナはこの地に眠っているという証。
呂司(りょうじ)「早いとこヴァルカナを確保して戻りましょう!」
姜馬(きょうま)「あぁ……そうだな……」
 そんなことを考えながら、暫く進んでみると、開けた場所にたどり着く。
姜馬(きょうま)「これは!?」
 そして、その中央に装飾が施された美しい一本の黒い剣が突き刺さっていた。
 だが、それだけだ。それ以外は特に何も見当たらない。
呂司(りょうじ)「ヴァルカナじゃ、ない……!?」
姜馬(きょうま)「……その昔、レキオからグフナウェーカタなる人物ら数人が流れ着いた……」
 彼らは故郷に帰ることができなかったが、しかし、生涯この地を守ってくれたことに感謝を示してこの祠を作成
したと書いてある。
 そして、この黒い剣はそんなグフナウェーカタが使っていた剣……を過度に装飾したものらしい。
姜馬(きょうま)(レキオとは琉球……そしてウェーカタというのは琉球政府の階級の一つにして氏族の最高位……つまり、彼
は沖縄からチリまで漂流してきたということか?)
 漢字で表記するならば、さしずめ具譜那親方(グフナウェーカタ)……あるいは我覇那(ガハナ)の誤りなのかもしれないが……

#8
韻麗(いんれ)「なんだ、ハズレか!?」
クラウド・ノシュケー・マルーメ「密かに後をついてきたが、これはダメか……」
 姜馬(きょうま)呂司(りょうじ)が振り向くと、そこには韻麗(いんれ)とクラウドの姿があった。
 折角後を追ってきたのに、期待外れだったな……と、言った様子である。
呂司(りょうじ)「お前ら!?」
 大神の降真靈(こうしんりょう)、ノース光輪結社は別動隊を動かし、ヴァルカナの確保を行おうとしていたのは事実。
 しかし、検討虚しく韻麗(いんれ)とクラウドの二人はヴァルカナを見つけることができなかった。
 そんな折、姜馬(きょうま)がこの祠の地下に降りていくのを発見、姜馬(きょうま)らの後をついていった結果がこれである。
 結果として姜馬(きょうま)は知らずに敵を導いてしまったのだが、しかし、そこに目当ての物はない様子。
韻麗(いんれ)、クラウド「まあ、いい、ここでてめぇらの足止めをしておけば……」
 そして、考えることは一緒だった。
姜馬(きょうま)「チッ、どうやら奴らを倒さない限りこの場から逃げることもできないか……」
 前門の虎後門の狼といった感じだ。
※でも、虎も狼も同じ場所を塞いでいますが……
 しかし、そこへその場を混迷させる、もう一人が新たに出現する。
 『破』って漢字をもじった仮面を付けた『いや、破面(アラ〇カル)ってそういうんじゃねぇから!』の突っ込みでお馴染みの
バーベラエである。
バーベラエ「……はぁ、今回も、あの人はいないんですね……」
呂司(りょうじ)「また敵が……厄介な……」
 だが、U(セカンド)シレントワイザードは大神の降真靈(こうしんりょう)だろうがノース光輪結社だろうがお構いなしに喧嘩を売る組織。敵
の敵は味方と言うが、バーベラエの場合、敵の敵は第三軍という感じで味方にすることはできない。
バーベラエ「あぁ、もう面倒臭い……あの人がいないこの場所に何の価値もない……だから、何もかも全て、壊れ
てしまえばいいのに……」
 ズズズズっと静かに、怒りにも似た(おぞ)ましい気配が膨れ上がる
一同「この女、ヤベェ……」
バーベラエ「幽闘術、狂化されし鳳凰の愛殺(フェニックス・アナザートライアル・エール)」
 殺気が縦横無尽に走り、一同は迷わず後方に飛び退る。
バーベラエ「愛です。愛です。愛ですよ!」
 度し難いその声は、狂気に満ちていた。
 バガアンッ
 そして、そんなバーベラエの狂った愛の波動が黒い剣を打ち砕く、と、同時に中からヴァルカナが出現する。

#9
一同「なっ!?」
 そこには紙幣に火をともして明かり代わりにする男性と-XIVの数値が描かれていた。
 ヴァルカナ。No.-XIV《浪費(スクアンダー)》(これも後からアドラに聞いた)
姜馬(きょうま)(ここ、ロス・リオスはチリの州番号で言うとXIV……そして、この地に出現したヴァルカナは-XIV……果た
してこれは偶然か!?)
 とかどうでもいいことを考えている間にもヴァルカナはくるくると宙を舞い、そして、偶然にも韻麗(いんれ)の下に渡る
韻麗(いんれ)「ヴァルカナ、確かに手に入れた」
呂司(りょうじ)「しまった!」
クラウド「てめぇ、そのヴァルカナをよこせ!」
バーベラエ「みんな、まとめて砕け散れ!」
 ズガアアムッ
 大神の降真靈(こうしんりょう)の手に渡っただけならば、まだ奪い返せるチャンスはある。そう考えたが、しかし、バーベラエの
容赦のない攻撃の前に、一同は撤退を選択するほかなかった。
バーベラエ「あはははははっ……あはははははっ」
 あとに残されるのは、バーベラエの狂ったような笑い声だけ。
 かくて、今回のヴァルカナ争奪戦は幕を閉じる……


END

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