Eighter -Scarlet Nocturne-
41ster 〜火山の底に眠る影 D〜



#7
新田姜馬(きょうま)「これは……まさか!?」
 エンケラドゥスを倒すために、姜馬(きょうま)は冥爪甲モナチェロを手に取った。
 しかし、そもそもこの地に冥爪甲モナチェロがあったのはなぜか……それを考えれば、この地響きの理由もわか
るというものだ。
姜馬(きょうま)「エトナ火山の噴火を鎮めるためにアレはこの地に祭られていたということか……」
古畑呂司(りょうじ)「え!?それってどういう……?!」
梓與鷹(よたか)「オイオイ、どうすんだよ!?」
 この地響きは、エトナ火山噴火の前兆……

慈円(じえん)「噴火……ですと!?」
韻麗(いんれ)「ヴァルカナを手に入れるよりも先に命を落とすことになると!?」
ジョスィフ・クロード「チッ、ここまできてタダ働きなんて冗談じゃねぇぞ!」
クラウド・ノシュケー・マルーメ「だが、まだヴァルカナの所在が完全に分かったわけではない……」
乾藤葦嵩(いぬいとう・あしたか)「よし、ヴァルカナ争奪戦も十分引っ掻き回せたし、帰るか……」
 ならば、撤退もやむなしか!?……と、この場に居合わせた全員がそう考えた。
 しかし、ただ一人だけは違った。
姜馬(きょうま)(俺が巻き起こした出来事ならば、俺が責任を取るしかない……まぁ、当然だな)
 ヒュオオオ〜〜ッ
 右手に装着した冥爪甲モナチェロから冷気が迸る。
姜馬(きょうま)氷河で騒乱せし猫の九尾(グレッチャー・レルム・カッツェ)!」
 氷で出来たモナチェロが縦横無尽に辺りを駆け巡り火山を冷やしていく。
一同「こ、これは!?」
 なんということでしょう!エトナ火山はエトナ氷山にクラスチェンジしてしまったではありませんか!
※いや、氷山って火山の氷バージョンじゃないから!
呂司(りょうじ)「あ、あれは!?」
 そしてマグマの海、その真ん中にヴァルカナはあった……いや、浮かび上がってきたと言った方が正しいのかも
しれない。
 漆黒のフードコードに身を包んだシスターと-IIが描かれたソレは《黒巫女(マリヤ・マグダレナ)》のヴァルカナ。(ちなみに、この
件が終わった後にアドラから聞いた)
 噴火が鎮まったのであれば、後は早い者勝ち。一同が我先にとヴァルカナに群がるが、その時、光が走る。
一同「な、なんだ!?」
ヴィルヘル・奈美「皆さま、ご苦労様でした」
一同「貴様はッ!」
 誰よりも速く、彼女はヴァルカナの下に舞い降りた。

#8
 《黒巫女(マリヤ・マグダレナ)》のヴァルカナを手に取ると、今まで使っていたCCXIIの百万朱版の転生小聖印(ヴァーミリオン・トランスマイグレーション)とすぐさま交換を行う。
奈美「幽闘術……迦楼羅の光翼(ガルダ・ウィング)、改め、爆塵の神翼(ダスト・ウィング)」
 ガギュゥウ〜〜〜ンッ
一同「なっ、速ッ!?」
 今までの幽闘術、迦楼羅の光翼(ガルダ・ウィング)も速かったが、爆塵の神翼(ダスト・ウィング)は更にその上を行く常軌を逸した速さだ。それは、明
らかに人体に負担を強いるスピードだ。
姜馬(きょうま)(ヴァルカナによる回復能力で反動を抑え込む無茶苦茶な使い方だな……)
葦嵩(あしたか)「残念だったな!お前たちが手に入れようとしたヴァルカナは我らU(セカンド)シレントワイザードの手に落ちた!」
 まるで奈美の手柄を自分の手柄の様に自慢する葦嵩(あしたか)。次のヴァルカナ争奪戦もかき乱してやるからそのつもりで
いろ!と捨て台詞を残すと、葦嵩(あしたか)もまた、悠々とその場を去っていくのであった。
 流石にこう何度もヴァルカナ争奪戦に敗北していれば、腹いせにU(セカンド)シレントワイザードに挑みたくもなるが、し
かしまだ次のヴァルカナがあると言い聞かせ、怒りの矛先を鎮めるノース光輪結社と大神の降真靈(こうしんりょう)。
ジョスィフ「……撤退だ!」
クラウド「やむなしか……」
 苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべつつ、ノース光輪結社は撤退を決めた。
韻麗(いんれ)(これを……)
慈円(じえん)(なるほど……)
 大神の降真靈(こうしんりょう)は何やらヒソヒソ会話を行うと、こちらもまた撤退するのであった。
総介「俺たちも帰るか……」
與鷹(よたか)「そう……だな……」
 Eighter・有嗎幇(ユーマハン)同盟軍にとっても、最早エトナ火山、もといエトナ氷山にいる必要はない。
 ちなみに、一瞬梶太郎(かぢだろう)のことを忘れて置き去りにしてしまうところだったが、それは梶太郎(かぢだろう)には内緒である。

與鷹(よたか)「……おい、大丈夫か?」
 (ゆたか)と死合った場所で大の字で倒れ込む梶太郎(かぢだろう)に声を変える與鷹(よたか)。
 怪我とかないかと確かめようとすると、突如カっと見開き、ガッツポーズを決め手立ち上がる
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「おっしゃ〜!見たか!與鷹(よたか)!俺は遂に双狼拳を超えた!」
與鷹(よたか)「あ〜、うん、ソウダネ……」
 今ならてめぇも倒せる!とか粋がる梶太郎(かぢだろう)だったが、案の定與鷹(よたか)に軽く返り討ちされるのであった。

#9
 (ゆたか)を倒せたからと言って與鷹(よたか)を倒せるとは限らないのだ。(そもそも(ゆたか)と死合ったことで疲労していたこともあ
るのだが……)
與鷹(よたか)(ゆたか)……安らかに眠れ……)
 例え邪道に堕ちたとしても、双狼拳の使い手として、與鷹(よたか)は黙祷を捧げた。
呂司(りょうじ)「それはそうと、奴のヴァルカナは?」
梶太郎(かぢだろう)「知らん」
一同「ヲイ……」
 (ゆたか)が倒され、死んだことにより、《悪魔(デビル)》のヴァルカナは再びタロットカードの姿としてこの地に出現するはず
だ。しかし、ソレが見当たらない。
 実は先ほど慈円(じえん)らがヒソヒソ話し合っていたのは、ここに新たなヴァルカナの反応が出現したことを発見したた
めだった。
 つまり、《悪魔(デビル)》のヴァルカナは大神の降真靈(こうしんりょう)の手に渡ったのだ。
※ノース光輪結社の連中はなぜ気づかなかったのか……それは謎に包まれている。

 ノース光輪結社がそのことに気づいたときには既に遅し……しかし、彼らは(ゆたか)與鷹(よたか)を殺すことを目的に動いて
いたことを知っており、《悪魔(デビル)》のヴァルカナはEighterの手で奪われたのだと結論付け、Eighterを目の敵にする
のだが、それはまた別の話である。
 実にはた迷惑な話である。


END

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