Eighter -Scarlet Nocturne-
39ther 〜嵐を呼ぶ秘密結社 D〜
#7
化野梶太郎「てめぇ……」
俺とソカタの戦いに水を差すとはいい度胸だ!と言わんばかりにソリスを睨みつける梶太郎(。
謂之府(ソリス「愚かな……俺にかまっている場合ではなかろうに」
荒曲井(ソカタ「いい加減手を放せ、この野郎」
ズドゴンッ
梶太郎(「ふげはっ!?」
確かに、ソリスにかまけている場合ではなかった。ソカタの重量を自在に操るが故に重い一撃が梶太郎(を襲い、
そのまま吹き飛ばされる。
梓與鷹(「無事に帰ってこられたようで何よりだ」
そんな梶太郎(をキャッチしながら與鷹(が言う。
梶太郎(「てめぇ、巫山戯(ている場合か?」
上(総介「そんなことよりも撤退だ!」
一同「お、おう!」
梶太郎(が帰ってくるのを待っていたかのように、一行はその場を逃げ出す。
ソカタ「無様だな……姉の仇も取れず遁走とは……」
ソリス「お前も、親友の仇も打てずに逃げるなどと、そんなことでは草葉の陰で彼も嘆き悲しんでいることだろう
よ」
出音(・グロウシュベル「てめぇ、姉さんを愚弄するとはいい度胸だな!」
セイ・ニングライト「貴様!何故それを……いや、そうか、貴様か!貴様がッ!」
総介「安い挑発だ!乗るな」
出音(、セイ「ぐっ……だがっ!」
怒りを爆発させ、今すぐにでも飛び掛からんとする二人を止めるのは総介。
梶太郎(「ヘッ、だが、俺は奴と死合って一つ分かったことがある。奴を掴んだあの時、奴の使う幽闘術から逃れら
れることができた!」
古畑呂司(「はっ、そうか!相手に触れさえすれば、幽闘術の影響を受けないってことか!」
これで、こっちが幽闘術を使えなくとも、相手の幽闘術を無視して戦いに挑める!
※ただ、無視できるのはソカタの幽闘術みたいな自分にも影響があると困る奴だけだと思います。
新田姜馬(「道理で、ソカタに近づくまでは鈍重で、ソカタを掴んでからは身軽になったわけだ……」
正しく、勝機を掴んだと言わんばかりの梶太郎(であった。
ソカタ「あぁ、あれには少し驚いた……あの時のお前は、1tの重さを持つ衣服に潰されているようなものだったと
いうのに……」
梶太郎(「ヘッ!見たか!これが双虎拳、鉄の掟よ!双虎拳をあまり舐めるなよ!」
ドヤ顔で言う梶太郎(だが、それは絶対に双虎拳の鉄の掟とは関係がない。
#8
ソリス「だが、同じ手が二度通用すると思うなよ?」
自分の周りの空間を自在につなげる幽闘術の持ち主、ソリスがいる以上、今後、二度と相手に触れるということ
はできないだろう。
総介「フッ、ここまで来れば大丈夫か……」
暫く逃げた後、総介がそんなことを漏らす。
ソカタ「ここまで来れば安全だとでも?」
ソリス「それは、楽観視が過ぎるというものだな……」
イングランド、嵐ヶ丘周辺……そこは《ザ・テンペスト》のホームグラウンドなだけあって、彼らに地の利があ
る。
総介「フッ、俺は別にあの場所から逃げ出したかったわけではない……ただ、ユーサーから距離を取りたかっただ
けだ!」
ソカタ、ソリス「何!?」
総介「ユーサーの幽闘術……あれは無制限に……いや、どんなに離れていようとも幽闘術を無効化する代物とは思
えん」
呂司(「あっ!」
出音(、セイ「なるほど」
ソカタ、ソリス「貴様ッ!」
ここで今まで優位に立っていた《ザ・テンペスト》の二人が初めて顔色を変える。
総介は《ザ・テンペスト》の拠点から逃げ出したかったのではない。ユーサー・コージィから距離を置きたかっ
たのだ。
相手が一方的に幽闘術を使ってくるから逃げるしかなかったが、こちらも幽闘術を使えるのであれば、その限り
ではない。
呂司(「ん?ちょっと待って……じゃあ、ユーサーが追ってきたら意味がないんじゃ……」
そんな中、素朴な疑問を投げかける呂司(
総介「フッ、奴は追ってこん!」
與鷹(「なっ、なんで言い切れるんだ?」
総介「そうだろう?お二人さん?」
ソカタ、ソリス「……」
沈黙は皇帝、もとい、肯定とみなす。
総介「奴は拠点防衛の要なのだろう……だから、拠点がバレてしまった今、迂闊に奴を動かすことはできない……
そして、これは俺の推測だが、おそらくは奴の幽闘術は幽闘術を無効化することにのみ特化した代物ではない……
違うか?」
ソカタ、ソリス「……」
再び沈黙する二人。やはり、それは肯定とみなしてよいのだろうか
姜馬((コイツ、そこまで考えて行動を!?)
前々から頭が切れる奴だとは思っていたが、まさかここまでとは……と驚きを隠せない姜馬(
※実際には真理に触れたことによる影響でもあるんですがね
#9
暫くにらみ合う両雄。やがて、口を開くのは《ザ・テンペスト》の方だった。
ソリス「……いいだろう。今日のところは見逃してやる!」
ソカタ「いつでも好きな時にかかってこい!だが、貴様らでは絶対にユーサーには勝てない!」
それだけ言い残すと二人はその場を後にするのであった。
梶太郎(「なんだよ、嵐と共に去るんじゃねぇのかよ」
與鷹(「いや、近距離なんだからその必要はないってことじゃないのか?」
梶太郎(のどうでもいい感想に、どうでもいい突っ込みを入れる與鷹(。
與鷹(「それはさておき、総、お前、こうなることが分かって今回の出撃を行ったな」
総介「フッ……」
なんで最初の時点で出撃を止めないんだろう?と考えていた與鷹(だが、今になってそれが分かった。
呂司(「え?それはどういう?」
姜馬(「……無策で飛び出して行っても意味がないと口で言っても分からない奴には、直接体験してもらった方がい
い。そういうことだ」
出音(、セイ「……」
《ザ・テンペスト》と決着をつけるには相応の準備と覚悟がいる。それが分かっただけでもよしとしよう。
こうして一行もまた帰路に就くのであった。
END
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