Eighter -Scarlet Nocturne-
38ther 〜過負荷なりし影智(マイナスヴァルカナ) B〜



#3
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「おらおら、双虎拳の使い手様のお通りだ!」
 考えなしに突っ込んでいく梶太郎(かぢだろう)※お前はどこの死神だよ!與鷹(よたか)「ったく、考えなしに突っ込む馬鹿があるか……」
 梶太郎(かぢだろう)が全力を発揮するまでには時間を稼がないといけない問題が解決したのに、次は考えなしに突っ込んでい
くのをどうにかしてほしい。
 一つの問題が解決しても別の問題が出てくるのはよくある事です。
古畑呂司(りょうじ)「ええと、まずはあの馬鹿を止めますか?」
新田姜馬(きょうま)「……いや、奴の好きにさせとけ」
呂司(りょうじ)「ですよね〜」
 呂司(りょうじ)もいい加減に自分の意見を持ってほしいのだが、それは今はおいておこう。

 ひとまず、梶太郎(かぢだろう)を追う形で残りのメンバーも遺跡の中へと急ぐ。
(かみ)総介「それよりも、気づいているか?」
與鷹(よたか)「あ?何がだ?」
山咲(やまざき)桜「乾藤葦嵩(いぬいとう・あしたか)の姿が見えません」
 確かに、ここにやってきたU(セカンド)シレントワイザードの連中の中に、葦嵩(あしたか)は見当たらなかった。
與鷹(よたか)「つまり……この遺跡はあの詐欺師のでっち上げではないということか?」
総介「ああ、断定はできないが、その可能性は高い」
ジョスィフ・クロード「チッ、やはり宣教倶楽部程度では足止めにすらならんか……」
韻麗(いんれ)「ノイエDAもあまり役に立たない……か……」
 最初からフルスロットルの梶太郎(かぢだろう)をノイエDAや宣教倶楽部が止められるわけがなかった。
 ないよりはマシかと思って連れてきたのが間違いだった……やはり、ヴァルカナ争奪戦を戦い抜けるのはヴァル
カナリアクター、あるいはデミカナリアクターのみ。
 ジョスィフも韻麗(いんれ)もそんなことを考えながら同じく遺跡の中へと足を運ぶ。
與鷹(よたか)「な、なんだ、アレは!?……」
姜馬(きょうま)「アレが……この地に眠るヴァルカナ……だと!?」
 遺跡の中、それは何も置かれていないワンルームのような部屋。そして、その真ん中にヴァルカナはあった。
 しかし、そのヴァルカナが問題だった。
 両腕や頭部を始めとして全身の八割以上が刃物でできている人物が描かれた透明なタロットカードのような代物
……それがこの地に眠るヴァルカナ。しかし、タロットカードにそのような図柄は存在しない。
 何よりもそこに記載されている数値が怪訝しい。

#4
一同「マッ……-III?!」
 そう、そのヴァルカナには-IIIの数値が刻まれていた。
 すとっ
 その場に居合わせた全員が、あのヴァルカナは何か?と考えていたその一瞬の隙をついてヴァルカナに近づく影
があった。
 それはバーベラエ。U(セカンド)シレントワイザードの連中はGB夫人(ミセスグレートバシャール)に忠義を尽くすもの。
 ヴァルカナがどんなものであれ疑問を持たずに奪う。それが功を成した。
バーベラエ「今日もあの方がいないようですし、これは私がもらい受けます」
與鷹(よたか)「しまっ?!」
 そのヴァルカナを握りしめると、次の瞬間にはバーベラエの右手の甲には赤と青の四角を組み合わせた八芒星に
-IIIの数値が刻まれていた。
ジョスィフ「ええい、またしても……」
韻麗(いんれ)「仕方ない、ここは撤退する」
 大神の降真靈(こうしんりょう)、ノース光輪結社、撤退を決意。
 同じく、ヴァルカナを手に入れたことで満足したU(セカンド)シレントワイザードもこの場を立ち去る。
星露(シンルー)・ユピテルメア「なっ、クソ兄貴!逃げる気か!?」
弥如(びぎん)「愚妹よ、また会おう」
星露(シンルー)「逃がすかぁ!クソ兄貴ぃ!」
 なお、星露(シンルー)弥如(びぎん)だけは暫く戦闘を続けていたのだが、シアに強制的に戦闘を終了させられ、撤退。
※ちなみに、バーベラエはそんな二人を放置して一人で勝手に帰っていました。

 そして、その場にはEighter・有嗎幇(ユーマハン)連合軍が取り残された。
呂司(りょうじ)「しかし、あのヴァルカナ……なのかは分かんないですけど、なんだったんですかね?」
出音(でおん)・グロウシュベル「だが、アレがなくなったことでこの地からヴァルカナの反応は消えた。で、あ
れば、アレはヴァルカナだったとしか考えられない……」
姜馬(きょうま)「そうか!ヴァルカナはタロットカードを……大アルカナを模して造られたものというのが間違い!」
 その時、何かに気づいた姜馬(きょうま)は静かに呟く。
出音(でおん)「どういう?」
アドラメレク「ご名答」
 パチパチと拍手をしながら唐突に出現する《弑逆(リベリウス)》のアドラメレク。これには一同、驚きを隠せない。
梶太郎(かぢだろう)「つまり、鶏が先か卵が先かならぬ、ヴァルカナが先か大アルカナが先かってことか?」
 言いえて妙だ

#5
梶太郎(かぢだろう)「で、それが何か?別にどっちが先だろうが変わらないんじゃ?」
與鷹(よたか)「大ありだ!」
桜「大アルカナがベースとなってヴァルカナが作られたのならば、ヴァルカナも0〜21の22種類しか存在しないは
ず」
総介「だが、それが逆ならば……そして、ヴァルカナの内、半分だけが大アルカナとして利用されたのだとしたら
……」
 もしそうであるならば、ヴァルカナにマイナスがあるのも道理だ!
※本当か?
アドラメレク「ちなみに、ここにあったヴァルカナは-III、《僧正(ビショップ)》」
総介「つまり、ヴァルカナは0〜XXIの22種類ではなく、-XXI〜XXIの43種類!」
 え?-21から21までなら42個じゃねぇの?って言う変な人はいないよね?
姜馬(きょうま)「だとしても、分からないことがひとつある」
 なぜ今までマイナスのヴァルカナが出てこなかったのか?
アドラメレク「さぁ?なんでだろうねぇ?」
梶太郎(かぢだろう)「『なんでだろうねぇ?』じゃねぇよ!……っていねぇし!」
 そして、現れた時と同じようにいつの間にかアドラはいなくなっていた。
 さておき、これからのヴァルカナ争奪戦にはマイナスのヴァルカナも関わってくることとなったのだが、今まで
なぜマイナスのヴァルカナが出てこなかったのか、それは分からず終いであった。


END

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