Eighter -Scarlet Nocturne-
35ther 〜黄泉国(ヨモツクニ)を封じる島 B〜



#3
 U(セカンド)シレントワイザードは倒すことに成功したが、今度は暴走した交喙(いすか)を止めなくてはならない。
古畑呂司(りょうじ)「ってか、かっこよく言ってるけど、マッチポンプだよね、それ……」
 思わず口にしてしまう呂司(りょうじ)であった。
 ズパァンッ
梓與鷹(よたか)「な、なんだ!?」
 その時、葦嵩(あしたか)が落下した地点で閃光が走り、一拍子遅れて、鬼の胴体が左右のズれる。
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「野郎、まだやるってのか!?」
新田姜馬(きょうま)(いや、これは奴の幽闘術ではない。もっと別の……」
(かみ)総介「……迂闊だった。U(セカンド)シレントワイザードが一人だけだと決めつけて俺たちは行動していた……」
與鷹(よたか)「おい、それじゃあ、まさか……」
 一同が注目すると、鬼たちがいた中心地には、気絶している乾藤葦嵩(いぬいとう・あしたか)は勿論の事、もう一人佇んでいた。
 まるでユニコーンみたいなツノが生えた仮面をつけた女性がそこにいた。
 彼女の名は天音(あまね)シア。言わずと知れたU(セカンド)シレントワイザードの一員であり、今回は刀身に桜の描かれた薙刀を手
にしていた。
呂司(りょうじ)「な、なぁ……これってもしかして、前回と同じ……」
天音(あまね)シア「……」
 無言で薙刀を持つ手……その甲を見せつけるシア。そこには赤と青の四角を組み合わせた八芒星にVの数値が刻
まれていた。
梶太郎(かぢだろう)「いや、待て……奴が最初からヴァルカナリアクターだとすれば……」
呂司(りょうじ)「そうか、あたかも、この地で発見したヴァルカナはもう手中にあると思わせて撤退させる作戦かもしれない
ってことか!?」
総介「いや、それは違う」
 ふるふると首を横に振る総介。
呂司(りょうじ)「どうしてそう言い切れるんだよ?」
 呂司(りょうじ)の突っ込みに対しては、敵が答えてくれる。
スィーロゥ・A・マクサル「してやられましたね……この地のヴァルカナの反応が消えています」
慈円(じえん)「やれやれ……作戦は失敗ですか……」
 ノース光輪結社、そして大神の降真靈(こうしんりょう)もそうなのだが、ヴァルカナが唯一無二の存在ではないと判明してから複
数の地点で同時にヴァルカナが出現するかもしれないと考え、ヴァルカナの奪取には単独で行動するようにしてい
た。
 今回はそれが裏目に出たといえよう。
※ただ、今まで複数の地点で同時にヴァルカナが出現したことってありましたっけ?

#4
 鬼界島のヴァルカナ反応が消えたということは、目の前のシアがこの地のヴァルカナを手に入れたという証左で
ある。
スィーロゥ「こう続けてヴァルカナを奪われるのは癪ですが……この場は退きましょう……」
慈円(じえん)「だが、次のヴァルカナはこうはいきませんよ!」
 そして、ヴァルカナが奪われた以上、最早この地にいる意味がないと悟ったスィーロゥと慈円(じえん)は一目散にこの場
から撤退。敵同士とは言え、こんな時だけは息がぴったりである。
 後に残されたのはEighter・有嗎幇(ユーマハン)連合軍とU(セカンド)シレントワイザードのみだ。
交喙(いすか)「ハアッ!」
 そして、先に動いたのは暴走状態の交喙(いすか)であった。
交喙(いすか)九留紅霄(くどこうしょう)雲日(うんじつ)!」
 太陽を背にシアの上空を取る交喙(いすか)。通常ならば、逆光による目晦ましでシアに隙ができるはずだった。
 しかし、シアは仮面をつけており、光の目晦ましは余り意味をなさなかった。
シア「ほいっと」
 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
 繰り出される九回の打撃をバックステップで華麗に回避するシア。
乾藤葦嵩(いぬいとう・あしたか)「ごぺあっ!?」
シア「あっ……」
 代わりに、シアの近くでノびていた葦嵩(あしたか)が攻撃を食らう羽目になる。
交喙(いすか)九留紅霄(くどこうしょう)陰諧(いんかい)!」
シア「リバース!」
 ダダンッ
 続いて、地面に金匙玉楊(きんしぎょくよう)を突き刺し、シアの影から九回の打撃を繰り出す交喙(いすか)だったが、シアは薙刀を自分の影
に突き刺して上空へ退避して難を逃れる。
呂司(りょうじ)「な、なんだ、あいつ、強いぞ!?」
 あれが奴の幽闘術なのか?って呂司(りょうじ)が聞くが、しかし、姜馬(きょうま)はまだ分からんと答える。
総介「お前の相手は俺がすると言っているんだがな……」
交喙(いすか)「ソォオオオオオオッスケェエエエッ」
 交喙(いすか)の背後に総介が立つと、すぐさま交喙(いすか)は総介をターゲットに決める。
 暴走状態であっても、誰をぶちのめしたいかは本能でわかるようだ。
総介「交喙(いすか)、お前は暫く眠れ!」
 ドゴオッ
交喙(いすか)「ガッ!?」
 怒りで我を忘れているような攻撃が、総介に届くはずもなく、一気に間合いを詰められた交喙(いすか)はそのまま総介の
手により、意識を刈り取られるのであった。

#5
シア「それでは皆さん、ごきげんよう」
 そして、矛先が自分から逸れたことを察知すると、シアは葦嵩(あしたか)を掴んでその場から撤退する。

梶太郎(かぢだろう)「おいおい、これからだってのに、鬼もいなくなっちまったぞ……」
呂司(りょうじ)「あ、本当だ……」
総介「ならば、今の内に俺たちも撤退するぞ!」
與鷹(よたか)「……」
 おお!と言いたいところだが、與鷹(よたか)だけがなぜかぼ〜っとしていた。
総介「おい、與鷹(よたか)與鷹(よたか)「え!?……あっ、すまん……」
 與鷹(よたか)がぼーっとしていたのは理由がある。それはシアの持っていた薙刀のことである。
與鷹(よたか)「……あの薙刀……まさか……な……」
 ズゴゴゴゴゴゴゴゴッ
 と、その時、突如島全体が揺れ始める
梶太郎(かぢだろう)「な、なんだこの揺れ!?」
総介「フッ、大方この地に眠るヴァルカナがなくなったことで、島が沈没するとか崩壊するってところだろう」
一同「いや、なんでお前はそんな冷静なんだよ!逃げろ〜〜!」
 島と共に無理心中なんて御免だ!というわけで、一行もすぐさまシーゼロの待つ港へと直行。
 間一髪、島が沈む前に脱出することに成功するのであった。


END

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