Eighter -Scarlet Nocturne-
36ther 〜双虎は世界を廻す A〜



#0
 ヴァルカナ争奪戦はまだ終わりそうもない。
 そして、それはヴァルカナリアクターとの戦闘が激化するという意味でもある。
 そんな中、與鷹(よたか)はあることを憂いていた。

#1
 天四斗(あまよと)、某所
 ある日、梶太郎(かぢだろう)は突如與鷹(よたか)と総介の二人に呼び出された。
(かみ)総介「今日貴様をここに呼び出した理由は分かっているだろうな?」
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「おうよ!ヴァルカナ争奪戦だろ?次はどこだ?」
梓與鷹(よたか)「違ぇよ!」
梶太郎(かぢだろう)「は!?」
 どこにだってついていくぜ!と最早忠犬のような振る舞い(なんとなくふりふりと動く尻尾が見えたような気が
するが、きっときのせい)の梶太郎(かぢだろう)をすっぱりと切り捨てる與鷹(よたか)與鷹(よたか)「お前にはそろそろ双虎拳を……虎伏絶掌(こふくぜっしょう)を極めてもらう」
梶太郎(かぢだろう)「な、なんだ?いきなり?」
総介「分からんか?……ならばハッキリ言おう。今の貴様は足手まといだ!とっとと虎伏絶掌(こふくぜっしょう)をモノにして貰わな
いことには話にならん」
 ガガァンッ!
 それはまるで頭上にタライが落ちてきたような衝撃であった。
梶太郎(かぢだろう)「だ、だが、俺がいないと戦闘面で困るだろ?」
與鷹(よたか)出音(でおん)がいるし……」
梶太郎(かぢだろう)「なんだと!?俺はあのシスコン野郎にも劣るのか!?」
 それは梶太郎(かぢだろう)にとって地味にショックだった。
総介「最初からフルスロットルで行く。死にたくなければ虎伏絶掌(こふくぜっしょう)をマスターしろ!」
 そう叫ぶと総介は蒼王の刃(ブルーロード)をスラリと抜き、殺気を放つ。
*「お取込みの最中に失礼。ちょっといいかい」
與鷹(よたか)「な、なんだ!?」
 與鷹(よたか)も天狼甲ショロトルを装備して梶太郎(かぢだろう)に襲い掛かろうとしたその時、一行に声をかける謎の存在が現れる。
 やってきたのは金髪のサワヤカなイケメン。韓流スターか何かと見紛う程の美形である。
*「お前が化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)だな?」
梶太郎(かぢだろう)「あぁ?てめえ、何モンだ?」
*「僕の名前は毛禰魯(ねろ)……」
梶太郎(かぢだろう)「なっ、まさか!?貴様!?」
 思わず禰魯(ねろ)から距離を取る梶太郎(かぢだろう)與鷹(よたか)「お前の知り合い……なのか?」
梶太郎(かぢだろう)「知り合いって程でもねぇがな……毛ナントカって言う毛沢東を馬鹿にしたような名前……間違いない。奴
は毛沢東の百人のクローンの一人」
與鷹(よたか)「なんだって!?」
 改めて毛禰魯(ねろ)を見る與鷹(よたか)。この金髪のサワヤカなイケメンが毛沢東のクローンとは到底信じられなかった。

#2
與鷹(よたか)「……あいつ、本当に毛沢東のクローンなのか?」
 全く毛沢東の面影がないので、思わずそんな疑問を口にする與鷹(よたか)。誰だってそう思う。
毛禰魯(ねろ)「フッ、毛沢東とは似ても似つかない姿形でという要求(オーダー)で作られし存在(モノ)……それがこの僕、毛禰魯(ねろ)だ!」
総介「百人の毛沢東のクローンか……この世に再び毛沢東を黄泉帰らせようとする計画が進んでいると聞いたこと
はあったが……まさかここまで進んでいたとはな……」
與鷹(よたか)「ちょ、ちょっと待ってくれ……」
 どうしても突っ込みたいことがあるので思わず声を出す與鷹(よたか)與鷹(よたか)「お前は毛沢東をこの世に再誕させるために作られたクローンだと言ったか?」
禰魯(ねろ)「あぁ、そうだよ。それが毛沢東再誕計画!」
 キラッと効果音が出そうな感じで髪をかき上げる禰魯(ねろ)與鷹(よたか)「だったら……毛沢東を黄泉帰らせる計画なのに、毛沢東とは似ても似つかない姿形って、毛沢東の再誕を真
向から否定してるじゃねぇか!」
 與鷹(よたか)、魂の叫びだった。
一同「……」

禰魯(ねろ)「フッ……言いたいことはそれだけかね?ならば部外者は引っ込んでいてもらおうか?」
與鷹(よたか)「何?」
総介「まぁ、待て」
 気を取り直して、禰魯(ねろ)がそう呟き、與鷹(よたか)が手を出そうとした矢先、総介がそれを止める。
與鷹(よたか)「総……」
総介「俺たちは双虎拳については門外漢だ!」
與鷹(よたか)「それは……確かに……」
 そして双虎拳を極めさせるには相手は双虎拳の使い手の方がいい。だから、ここは梶太郎(かぢだろう)に全て任せてみるべき
だというのが総介の弁だ。
総介「と、言うわけだ。勝て!そして極めろ!俺からは以上だ!」
梶太郎(かぢだろう)「へいへい」
 相手が誰であろうと敵ならば倒す。それが双虎拳の鉄の掟である。
※双虎拳の鉄の掟は諸説あります……と、言うか、双虎拳の使い手が各々勝手に作り上げている感じです
禰魯(ねろ)「君のことは調べさせてもらったよ、化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)……」
梶太郎(かぢだろう)「あぁ?」
禰魯(ねろ)「相手のことを調べ上げなくては、勝てる戦も勝てない。我々の業界では常識だよ」
梶太郎(かぢだろう)「どこの業界だ、コラ!」
 業界というか、孫子の『彼を知り己を知れば百戦危うからず』だよなと心の中で突っ込む與鷹(よたか)であった。


続

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