Eighter -Scarlet Nocturne-
2nder 〜盗まれし錻力(ブリキ)野郎 A〜



#0
 ブリキ人形やソフビ人形……それは今の美少女フィギュアやスーパーロボット超合金に比べれば雲泥の差の出来
のチンケな玩具ではあるが……その道の人からすればのどから手が出るほどの逸品である
 そして、これはそんな玩具とそれを扱う店と、ある種の人間に纏わる一大騒動に纏わる物語である。

#1
 東京都、大人(ターレン)玩具堂
 そこは、ブリキ人形やソフビ人形など、アンティークな玩具が軒を連ねる東京都きってのアンティークショップ
である
 事件はそんなお店で起こった
*「て、店長!こ、これを見てください!」
*「あ?どうした?」
 血相を変えて倉庫へやってくる店員。そして、店長に防犯カメラの映像を見せる
*「なっ、こ、これはッ!」
 そこには一人の男性が棚に飾ってあった一体三十万超過のブリキ人形を堂々を持っていた鞄の中へ詰めて去って
行くという決定意的瞬間が映し出されていた
*「野郎ッ!ナメた真似をしてくれる!」
 そして、店長は思い切った行動にうって出たのだった。

 天四斗(あまよと)、Eighter本部
梔曹(くちなし・つかさ)「東京都、大人(ターレン)玩具堂からブリキ人形黎明期に造られたゲキ・ガンガー人形三点百万円相当が盗まれる。か…
…世の中には物好きな奴もいるもんだな……」
梓與鷹(よたか)「まぁ、その手の人にとってはお宝だからな……」
(つかさ)「これに対し、大人(ターレン)玩具堂の店長、辜木覇図流(つみき・ぱずる)は、犯人が盗み(コト)を起こした決定的瞬間を撮った映像を公開……」
 一応プライバシーを護るために顔にはモザイクがかかっているが、一週間以内に返却されない場合はモザイクを
外すことも辞さない構えとのこと。
 後悔したのならば、名乗り出て返却し、公開を取り下げろという話である
※なぜにダジャレ……
(かみ)総介「だが、犯人(ホシ)の素顔が公開されることはない!」
一同「どわぁっ」
 唐突に現れたる総介に一同は驚きを隠せない。
與鷹(よたか)「総……」
山咲(やまざき)桜「その行為はいくらなんでもやり過ぎです」
 だから、既に警察の手の者が素顔の公開を取りやめるように要請を出しているところなんですと桜
 後は警察に任せて連絡を待ってください……ということでこの事件は一旦幕引きになるのかと思っていたが、そ
うではない……
 なぜならば、総介がEighter本部へ現れたためである。
※いや、総介がやってきたから事件が怪訝しい展開になるってわけじゃないんですけど……

#2
総介「あの店はな……表向きはアンティークショップだが、その実態は中華マフィア、有嗎幇(ユーマハン)の隠れ家の一つだ」
※ちなみに、有嗎幇(ユーマハン)の『嗎』とは『口+馬』で一文字の常用外漢字である。
(つかさ)「なっ、中華マフィア、有嗎幇(ユーマハン)だと!?」
與鷹(よたか)「知っているのか?」
(つかさ)「いや、全然」
一同「おい!」
 あのなぁ……と一同が盛大にズっこけるのであった。
 さて、ちょっと話を戻すことになるが、有嗎幇(ユーマハン)の『有嗎(ユーマ)』とは『ありますか?』を意味する。だから何か?と言
う人もいるだろうが、『ありますか?』とは『あるかな?』という意味に他ならない。
 つまり、『有嗎幇(ユーマハン)』というのは『アルカナ・ファミリア』の中華版という意味である。
※いや、どんなだよ!
総介「奴らが勝手に犯人の画像を公開しだしたのには理由(ワケ)がある……」
(つかさ)「マフィアだからこそ、警察に頼めるわけもなかったってことか……いや、マフィアだからこそ、盗まれたなど
と沽券に関わるってことか?」
桜「いえ、違います」
 ふるふると首を横に振る桜。
(つかさ)「違うってのは、どういうことだ?」
総介「おそらくは盗まれてはいけないものが盗まれたのだろうな」
與鷹(よたか)「つまり、有嗎幇(ユーマハン)に関連する何かってことか……」
総介「ああ、そうだ……表沙汰に出来ないことから奴らはどんな手を使ってでも奪還を試みるだろう」
桜「そして、こちらへ依頼が回ってくるのではないか……と睨んでいるわけです」
與鷹(よたか)「ははぁ、分かったぞ……総……つまり、依頼を断ってやれってことだな」
 総介の考えを理解した與鷹(よたか)だったが、しかし、総介は違うと叫ぶ。
総介「いや、違う、受けれやれ」
與鷹(よたか)「え?」
 驚きを隠せない與鷹(よたか)。
 それは遠まわしに警察に売れって言っているようなものでもあった。
総介「行くぞ、山咲(やまざき)」
桜「はい」
 言いたいことを全て言い終えると、総介は颯爽とEighter本部を後にするのであった。
 それは、有嗎幇(ユーマハン)の手の者とバッティングするわけにもいかないからである。
與鷹(よたか)「それはさておき、今日は梶太郎来なかったな……」
 どうでもいいことを呟く與鷹(よたか)であった。


続

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