#0
　これは北海道にて起きた密室殺人に関する事件簿である。

#1
　北海道、函館市、函館港
警官「……式挺(しきて)警部、ガイ者は米橋月月弘(こめはしづき・つきひろ)（42）だそうです。」
式挺冠人(しきて・かんと)「ふむぅ……」
　ガイ者はタクシーのトランクの中……麻袋に詰められていた……
警官「第一発見者の証言では、港に見慣れない無人のタクシーがあり、中を覗いて見ると座席付近で血痕を発見。
　これは何かの事件だとのことで……」
冠人(かんと)「……で、このタクシーは……どこのモンだったんだ？」
警官「はっ、北斗市の『らもん交通』のタクシーとのことです」
警官「売上金が残っていないことから金目当ての犯行だと思われますが……」
冠人(かんと)「ふむ……」
　かくて、式挺(しきて)警部以下はまずは北斗市のらもん交通へと足を運ぶ。

　一方、その頃……

　東京都、警視庁
上(かみ)総介「新宿にてゴミ袋に入った男性の切断遺体が見つかる……遺体の腕には結核の予防接種（BCG）の痕が無い
ことから外国人の可能性もあると見て捜査が進められている……フン……」
　総介が何やら調べ物……のついでに近くにあった調書を読んでいる。
警官（あの、上(かみ)警部は……なぜこんな場所にいるんですかね？）
警官（んなこと俺に聞くか！？）
警官（ですよね……アハハハ……）
山咲(やまざき)桜「警部……調書が届きましたので、どうぞ……」
　と、そこへ、調書を抱えて桜がやってくる
総介「む、ご苦労」
　桜から調書を受け取り、早速目を通す総介
総介「……フン、なるほどな……」
　調書を読み終えると、すぐさまそれを机に放置する総介
総介「山咲(やまざき)……行くぞ！」
桜「はい、警部」
　そして、総介はそのまま北海道へと飛び立った
警官「……本当に上(かみ)警部は何しに来たんだ？」
警官「さぁ？」
警官「まぁ、一つだけ言えることは……」
警官一同「言えることは？」
　そこで、一同は固唾をのんで見守る
警官「今日は上(かみ)警部に叱責されなくてよかった……ってなことだ」
警官「なるほど、確かに、それは言えてるな……」
警官「いや〜、ビクビクしていた自分が情けないですよ……」
警官一同「アハハハハ……」
　駄目だ、この警官、早く何とかしないと……

#2
　北海道、道警察
総介「麻袋にも血痕が残っていたそうじゃないか……」
　早速タクシーのトランクの中で見つかった死体の事件に関して総介が口を開く
警官「……は……はぁ、確かに……」
総介「……ガイ者の左腕には何か針のようなもので刺したような痕も残っていたという……」
冠人(かんと)「……確かに……ですが……それが何か？」
桜「……らもん交通に訪ねてみたところ、米橋月(こめはしづき)氏は最近売り上げが思うように伸びず悩んでいた……との証言が
得られました」
警官「……つまり、売り上げが伸びず、さらに強盗殺人までされる……泣きっ面に蜂ですね」
総介「いや、これは殺人事件ではない」
警官一同「え！？上(かみ)警部……何を！！？」
総介「……分からんか？お前ら……」
警官一同「はい、さっぱり」
※うぉい！！！
　恐れることなく宣言する無能警官……ここまで来ると逆に清々しくもある
総介「……いいか！左腕の針の刺し痕は注射針の刺し痕……座席の血痕はその血痕。麻袋に残っていた血痕は麻袋
の中で吐血した際に付着したもの……加え、タクシーからある漢の指紋が検出された……」
　ちょっと怒りながら語る総介
警官「……そ、その漢とは……？」
桜「不自殺自殺志願者……自殺摺造(みずとり・しょうぞう)です……」
　総介に代わって、桜が宣言する
警官一同「なっ……」
冠人(かんと)「ちょ、ちょっと待ってくださいよ……上(かみ)警部……まさか……じゃあ……」
総介「……そうだ」
警官「……不自殺自殺志願者にセッティングを頼み、自分は麻袋の中で毒薬を飲み……自殺した……？」
　そして、1人の警官が今回の事件の顛末を語る
総介「そういうことだ……」
警官「バカな……」
冠人(かんと)「しかし上(かみ)警部……注射器は……現場にはそのようなものは発見できませんでした……」
桜「……ここは港ですよ……注射器など、海に捨てればいくらでも証拠堙滅は可能です」
　ふぅ、とため息をついて桜が答える
警官「あ、そうか……」
警官「しかし……上(かみ)警部……なぜこいつは北斗市からわざわざ函館市まで来たんですかね？」
桜「警部、これ……」
　そんな折、桜がホトケの財布の中に花札が入っていたとの記述を発見し、総介に見せる。
　財布に入っていたのは、松のカス札であった……
総介「……フン、さてな……」
　財布に忍ばす松のカス札……それはとあるヤク中勝負師(ギャンブラー)のお守り……そして、そやつの故郷はこの函館である…
…
総介「行くぞ、山咲(やまざき)」
桜「はい、警部」
　そして、何も告げず総介は北海道を去っていくことに……

#3
　……自殺が相次ぐ現代社会……今日もどこかで不自殺自殺志願者は自殺のドタキャン＆自殺志願者を支援する…
…
※全く、本当に世も末だな……
自殺摺造(みずとり・しょうぞう)「へへっこれだから自殺はやめられない」
※いや、だから、アンタは自殺してないでしょうに！


END