#0
 これは、世にも奇妙な殺人事件の顛末を綴った事件簿である。
　事件(きみ)の名は……
※いや、『事件』を『きみ』って読むのやめい！

#1
　東京都、某所
＊「飛び降りてみろ！」
　とある場所で1人の漢がそう叫ぶ……その視線の先……アパートの5Fほどのベランダには……また別の漢が立っ
ていた……
＊「どぉした！？飛び降りてみろってんだ！ボケ！」
　ヒュッ
一同「なっ！？」
　グシャアアッ
＊「きゃ〜〜〜〜！！飛び降りよぉ！！！」
　ベランダにいる漢を見上げていた漢は、まさか本当に飛び降りるとは思わず……そして、付近の人間の通報によ
り、警察が動く

警官「飛び降り自殺か……こいつはヒデェな……」
　駆けつけた警部、刀持警部も思わず顔を顰める
警官「刀持警部……どうやら、ただの飛び降りではないようです」
刀持隕山(いんざん)「何！？どういうことだ！？」
警官「飛び降りろ！と叫んでいた漢がいたようです。そして……事件後、現場から立ち去る漢を見た……との情報
もあります」
隕山(いんざん)「なるほど……それで本当に飛び降りるとは思わず……そして、怖くなって逃げ出した……と言うわけか」
警官「刀持警部……」
隕山(いんざん)「ああ、分かってる！」
　と、言うわけで早速、飛び降りを示唆していた漢の捜索を行うことになったのだが……

　数日後……
　東京都、警視庁
警官「見つかりませんね……」
隕山(いんざん)「……おかしいな……」
＊「当然だ……飛び降りを唆した奴は既に死んでいるからな……」
一同「！！！！」
　そこに、唐突に総介登場……一同は面白いくらいにビビりまくる
隕山(いんざん)「かっかっかっかっかっかかっ上(かみ)警部！？」
警官「上(かみ)警部……飛び降りをさせた漢は既に死んでいるって……どういう？！」
隕山(いんざん)「そうか！慙愧(ざんき)の念に捉われて……」
上(かみ)総介「バカヤロウ……」
山咲(やまざき)桜「遺体はきちんと見ましたか？」
隕山(いんざん)「……ああ、見た！しっかりとな……」
警官「……で、それが何か！？」
　はぁ……とため息をつく総介……そして、そのまま続ける
総介「……死亡していたその漢こそ、飛び降りを唆していた漢だ！」
一同「んなっ！？馬鹿なぁ！！」
　急な展開……しかも、考えていなかった事態に一同は困惑……どういうことですか！？とそのまま総介に質問攻
めを……

#2
警官「上(かみ)警部……つまり、今回の事件は……自作自演だった……と！？」
総介「バカヤロウ……事件後、現場から逃げ去った漢がいるんだろ！？」
隕山(いんざん)「あ、そういえば……」
警官「それに、確かに、アパートの5F位から飛び降りる人を目撃したってな情報もあったはずです……」
隕山(いんざん)「……うん！？じゃ、どういうことだ！」
桜「……だから、遺体をきちんと見たのですか……と言ったのです」
　飛び降り、地面に激突して死亡したはずなのに……そんな形跡はなく、遺体の腹部には何かが貫通した痕だけが
残っている……これが致命傷となり死亡したのだが……何かを貫通させるような物は事件現場のどこを
　探しても見つかっていない……
隕山(いんざん)「あ、そうですよね……人を貫いたものを持ち帰る物好きなんていませんよね……」
　で、結局どういうことですか！？と一同
総介「……お前ら、本当に分からないのか……被害者……入原大悟とかいうらしいが……そいつを貫通し、死に追
いやったのは人間だ……」
桜「それも、アパートの5Fから大悟目がけて飛び降りた……」
総介「つまり、これは飛び降りと言う名の殺人だ！」
一同「んなっ！？馬鹿なあぁあああ！！？」
　予想だにしなかった結末に、一同は驚愕……その叫び声は警視庁を震撼させる
※Q:そもそも、5Fから飛び降りた漢が……無事ですむのか！？
　A:大悟をクッション代わりに衝撃を吸収した……ってなことでここはひとつ（何が『ここはひとつ』だ！）
警官「し、しかし、上(かみ)警部……」
総介「遺体から、近くの水場まで、血痕が河のように残っていたそうではないか……」
隕山(いんざん)「……そうか！水場で帰り血を洗い流し……その場を立ち去って行った……」
桜「そうです。事件後、逃げ出したのは、飛び降りを唆した漢ではなく、飛び降り殺人を行った漢……」
警官「クッ……」
総介「……飛び降りた漢は……体だけは丈夫だったようだな……」
　総介がそう呟いたころ、刀持警部以下は真犯人の逮捕に早速出向いて行った……
総介「……やれやれ……騒がしい奴だな……」
　総介はそう呟き、振り向いて桜を見る
総介「行くぞ、山咲(やまざき)」
桜「はい。警部」

　その後……
　東京都、某所
隕山(いんざん)「座鳴冠人(ざなる・かんと)！貴様を飛び降り殺人の容疑で逮捕する！」
座鳴冠人(ざなる・かんと)「……」
警官「しっかりと目撃されていたんだぞ！大人しく……投降しろ！！」
　ツカツカツカツカ
　すっ
　刀持警部の元へ歩み、両手を差し出す冠人(かんと)
隕山(いんざん)「ほぉ、殊勝だな……」
　……アッサリと冠人(かんと)は観念し、逮捕され、事件は解決したのだった
※ちなみに、大悟と冠人(かんと)の間には一体何があったのかは結局わからず終いである


END