Eighter -Verdant Nightmare-
2nder 〜暗闇を封じる護符 C〜



#5
メイド(まぁ、いい。奴らがどこまでてきるのか、お手並み拝見といこう)
 たかが人間が、神を封印できるわけがない。そして、例え『力』、『技』、『位』の破壊神が揃っていようとも
人間に力を貸している程度では脅威たりえない。と、思っていた。
 ドカアンッ
 どこからともなく(やじり)が飛んできて封印のお守りに突き刺さる。
メイド「何!?あれは封界(ほうかい)(やじり)!?馬鹿な……なぜそんなものがここに!?」
 褐色の怪しいメイドさんが驚くのも無理はない。封界(ほうかい)(やじり)とは浚澄羽帝(サラスヴァティー)世界の破壊神を封印するためのアーティ
ファクトである。それを使えば再封印も不可能ではない。
 おそらくレース・アルカーナが自信ありげにしていたのはこの切り札があったためだろう。
メイド「だがッ!」
 封界(ほうかい)(やじり)の力を十全に発揮できるのは浚澄羽帝(サラスヴァティー)世界の破壊神のみ。人の手で使いこなすことなど不可能なのだ。
 バキィンッ
白拍子かれん「うわっ、びっくりした!」
 突如封界(ほうかい)(やじり)が砕け散る。
山咲(やまざき)桜「これは、封印は失敗ということでしょうか?」
レース・アルカーナ(……やはり、滅壊四魔貴族には嗅ぎつけられるか……)
 だが、それも想定済み。復活を阻止できなくとも、少しでもその力を削ぐことができれるのであれば……
 ビシリッ
 そして、空間に亀裂が走ると同時にその隙間から指がガッと飛び出してくる。
かれん「ちょ、軽くホラーなんですけど!」
白拍子かなり「この程度で腰を抜かしてたらこの先持たないわよ?」
 かくて、空間を引き裂き、ソレは現れる。
*「クハハ!遂に、この時が来た!最早俺を縛るものは何もない!」
 ソレが出現するとほぼ同時に、かんなとかなりは臨戦態勢を整える。そして、一拍子遅れてかれんも臨戦態勢を
整える。
女王禍(ジョーカー)(薄々感づいてはいたけど、やはり『蒼天』……)
茜瑙哭(セドナ)(ええ……鵺帛主(この)世界に侵攻して封印されたとは聞いていたけども……)
上総介「チッ、奴は?!」
 総介も桜を庇うように前に出て蒼王の刃(ブルーロード)を抜き放ち、問う。
白拍子かんな「アレは『蒼天』の破壊神、泱硫堕(オルクス)です」
総介(破壊神と来たか……ならば、浚澄羽帝(サラスヴァティー)世界の……)
 そう、封印を破って現れたるは『蒼天』の破壊神、泱硫堕(オルクス)!
 褐色の怪しいメイドさんやレース・アルカーナが言っていた滅壊四魔貴族の一柱だ。

#6
 ここまで来れば最早隠すことも無かろう。彼ら彼女らが復活させようとしている破壊神とは『究極』の破壊神、
微朱主(ヴィシュヌ)。
 そして、滅壊四魔貴族は微朱主(ヴィシュヌ)の従属神である。そう、従属神……つまり、微朱主(ヴィシュヌ)より弱い破壊神なのだ。
かれん「微朱主(ヴィシュヌ)より弱いってことが分かれば十分よ!」
 予兆共鳴者(オーメンレゾナンス)を片手に先走るかれん
かんな「あっ……」
 ガッ
泱硫堕(オルクス)「確かに、俺は弱い……」
 迫る予兆共鳴者(オーメンレゾナンス)を片手で受け止めつつ、泱硫堕(オルクス)は静かに告げる。
かれん「あら……えぇと……」
 泱硫堕(オルクス)の凄みに圧し負け、冷や汗が止まらないかれん
 ズドンッ
 一体いつの間に動いたのか、泱硫堕(オルクス)の動きにかれんは一切気づくことができず、気が付けばかれんは派手に吹き飛ばされていた。
かなり「オ〜〜ッホッホッホッホ!無様ねぇ、かれん!」
奠夷瑪(ディーヴァ)(全くだ……あれほど油断するなと……)
かれん(いや、聞いてないけど?)
 先日、微朱主(ヴィシュヌ)に匹敵する刺舞鴉(シヴァ)(の肉体)と戦って生き延びたという事実がかれんを勇気だたせた。
 いや、助長させたと言った方が正しい。
 確かにかれんら三人は刺舞鴉(シヴァ)(の肉体)と戦い、生き延びた。しかし、それは刺舞鴉(シヴァ)が魂を持たぬ抜け殻だった
からに過ぎない。
 魂無き刺舞鴉(シヴァ)の肉体と泱硫堕(オルクス)……果たしてどちらが強いのか……意見が分かれるところだが、少なくとも従属神
だからと言って甘く見て言い相手では断じてない。
泱硫堕(オルクス)「チッ……力が制限されてやがる……先ほどの妙な儀式のせいか……」
 手を握ったり開いたりしながら、そんなことを呟く泱硫堕(オルクス)泱硫堕(オルクス)「だが、まぁ、よかろう。貴様ら程度が相手ならば、さほど問題にはなるまい」
かれん「物凄い自信ね……」
総介「フッ、それほどまでに実力差があると言いたいのだろう」
 いや、そんなクールに言っている場合じゃないですが……
泱硫堕(オルクス)「全員まとめてかかってこい、一気に始末してやる!」
 天に拳を突き出す、と同時に虚空から剣を引き抜くとそのまま一行に刃を突き付けてそう吠える泱硫堕(オルクス)
メイド「万全でないのならば、退却を選択してほしかったのですが……」
 一方、褐色の怪しいメイドさんはため息をつきながらそんなことを漏らすのであった。


続

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