Eighter -Verdant Nightmare-
2nder 〜暗闇を封じる護符 D〜



#7
 剣を肩に担ぎ、傲岸不遜な態度で一行を待ち受ける泱硫堕(オルクス)。先手は譲ってやるからかかってこいと言ったその態
度は、人間如きには後れを取らないという自信の表れだった。
(かみ)総介「さて、どうする?……最悪撤退を視野に入れる必要もある」
泱硫堕(オルクス)「クハハ!この俺から逃げられるとでも思っているのか?」
 再封印が失敗した時点で一目散に逃げ出していれば、まだ逃げ切れる可能性もあったかもしれない。
 だが、今は最早逃げることも難しい状況だ。
白拍子かなり「逃げるなんて選択肢はありえないわ!大体、ここで無様に逃げてみなさい、そうするとかれんの死
が無駄になるだけよ!」
総介「フッ、それもそうか……」
白拍子かれん「え?いや、私死んでないけど……」
 見事な連携プレイ(悪意)に思わずかれんも泣きたくなってきた。
レース・アルカーナ「そうだな、私としても、できるならばここで奴を叩いておきたい」
かなり「と、いうわけで、かれん!死んでいる場合じゃないわよ!」
かれん「だから、私、死んでない!」
 が、かなりにそこまでイジられると、本当に自分が生きているのか不安になってくるかれんであった。
※まぁ、かれんは実際に一回死んで黄泉帰ったようなものなので、なおさらだ
かれん「ってか、そこに……って言ってもどこに隠れているのかは知らないんだけど、アンタは……」
レース・アルカーナ「私の事はレース・アルカーナと呼んでくれ」
 ここぞとばかりに名乗りを上げるレース・アルカーナ。レース・アルカーナ、レース・アルカーナをお願いしま
すと言った感じのソレは選挙活動を彷彿させた。
かれん「あぁ、うん……レース・アルカーナ、アンタは手伝ってくれないわけ?」
レース・アルカーナ「済まないな。今はまだ手を貸すことができないんだ」
総介(今はまだ……と来たか……)
山咲(やまざき)桜(つまり、この先、手を貸してくれる時が来るということですか……)
 それはいつになるのだろうか……だが、今は泱硫堕(オルクス)との死合に集中するべきだ。
かれん(で、実際のところ、どうするわけ?)
 さっきは確かに油断したのもあるけど、全力を出してもどうにかなるとは思えないかれん
レース・アルカーナ「何、大丈夫だ。ここ萬聖院(ばんしょういん)家は日本でも有数の界間撤鋼接衝点(アクセスポイント)なのだから」
総介「ほぉう……界間撤鋼接衝点(アクセスポイント)か……」

#8
 ではここでここで改めて説明しよう。界間撤鋼接衝点(アクセスポイント)とはこの世界と別の世界とを隔てる壁を貫き、二つの世界
にパスを張るエリア……簡単に言うと異世界との繋がりが特に強い場所のことである。
 要するに異世界の神の力をいつもより発揮できる場所と考えてよい。
 萬聖院(ばんしょういん)家が異世界からの恩恵を受けていたのは、この場所が界間撤鋼接衝点(アクセスポイント)だったからなのだ。
かれん「ふっふっふ、良いことを聞いたわ!」
 ずおおおっ
 かれんの額の奠夷瑪(ディーヴァ)の紋章が一際光を放つ。
かれん「さぁ、覚悟はいいかしら?」
 さっきまでの弱気はどこへやら、予兆共鳴者と光焔熾(こうえんし)で作った炎の刃の二刀流で泱硫堕(オルクス)を睨みつけるかれん。
泱硫堕(オルクス)「ならば、見せてみろ!貴様の力を!」
※『力』の破壊神だけにな(をい)
 だが、忘れてはいけない。こちらが異世界の神の力をいつもより多く発揮できるということは、あちらもまた同
様であるということを!
かなり「まぁ、こうなったら仕方がないわね……ひとまずはかれんに任せましょう」
かれん「え!?ちょっと、ここは普通みんなで協力して倒しましょうって流れじゃないの?」
 かなりの発言に思わず振り返って抗議するかれん
かなり「えぇ、普通ならばね。でも、お生憎様。私は普通じゃないのよ!」
 ドヤ顔でそんなセリフをのたまうかなり。やはり彼女は普通じゃなかった。(何をいまさらと言った感じではあ
るが……)
白拍子かんな「かれん姉さん……ファイトです」
 そして、かなりに逆らうことは許されない……故にかんなも見守る事しかできないのだ。
かなり「あぁ、もう……()ぁあ〜〜ってやるぜ!」
 ヤケクソ気味に叫ぶかれんだった。

桜「……いいのですか?」
総介「フッ、好きにやらせるほかないだろうな……どの道、この場はあいつらに任せるしか道はない!」
 界間撤鋼接衝点(アクセスポイント)だからいつも以上に鬥址偶襾(ツァトゥグア)の力を引き出せると言っても、限度はある。
 それを超えれば力に飲まれて暴走するだけだ。そして、自分を保っていられる限界まで鬥址偶襾(ツァトゥグア)の力を引き出せ
たとしても、泱硫堕(オルクス)を倒すことはできない。総介は彼我の実力差を考え、その結論に達していた。

#9
奠夷瑪(ディーヴァ)(奴と死合う前に少し私の話を聞け!)
かれん(え?)
 一足飛びにかかろうと思った矢先、奠夷瑪(ディーヴァ)に出鼻をくじかれる。
 だが、浚澄羽帝(サラスヴァティー)世界の破壊神のことは同じ浚澄羽帝(サラスヴァティー)世界の破壊神に効くのが一番であり、奠夷瑪(ディーヴァ)の忠告に耳を傾
けるのは重要だ。
奠夷瑪(ディーヴァ)(奴は『蒼天』の破壊神)
かれん(うん、それは聞いた)
 蒼天とは春の空を意味する。そして泱硫堕(オルクス)の役割は春を破壊して夏を呼ぶことだ。
※春を破壊して夏を呼ぶなんて言い回しが浚澄羽帝(サラスヴァティー)世界ならではのユニークなところだ
 そして、ここからが本題である。鵺帛主(ヤヌス)世界には『春眠暁を覚えず』という(ことわざ)がある。春は寝心地がよく、夜が
明けたことに気が付かず、なかなか目が覚めないことの例えだ。これは浚澄羽帝(サラスヴァティー)世界としてもそれは同じというの
はさておき、重要なことは相手が動いたことに気が付かず、いつ攻撃を食らったのかが分からないということであ
り、先ほどかれんが泱硫堕(オルクス)の攻撃に気づけなかったのもソレが原因なのだ。
※『春眠暁を覚えず』の拡大解釈が凄まじいことになっている
 注意していればどうなるというわけでもないが、奠夷瑪(ディーヴァ)はそれをかれんに伝えたかったのだ。


END

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