Eighter -Scarlet Nocturne-
27ther 〜魔術師の業背負い B〜



#3
 吸い込まれるように、仕込みモップの一閃が直撃……派手に吹っ飛ぶ姜馬(きょうま)
古畑呂司(りょうじ)姜馬(きょうま)様?!」
新田姜馬(きょうま)「ぐ、ふ……」
ヴィルヘル・奈美「GB(グレートバシャール)様殺害に加担、傍観した罪、その身で贖え!」
 トドメを刺そうとする奈美。
 そんな時、姜馬(きょうま)はここへ来るに至った経緯を思い出していた。

 それは、総介が突如有嗎幇(ユーマハン)の日本での活動拠点に単身乗り込んできたことが始まりだった
※単身乗り込んできたと言っていますが、山咲(やまざき)桜も一緒です。(じゃあ単身じゃないじゃん……)
御御脚(ユウ・ユウジャオ)「貴様ハ……」
(かみ)総介「急遽俺と一緒に来てもらおう……」
旧透水(ジウ・トウシュイ)「何ヲ言っていル?」
山咲(やまざき)桜「新田姜馬(きょうま)さん、それに古畑呂司(りょうじ)さんもです」
 言葉が足りないので補足してあげる桜。
姜馬(きょうま)「一体どういうことだ?」
総介「これはお前が、かつて所属していた組織に関連する事項だ」
 そこまで言われれば姜馬(きょうま)はシレントワイザードに関連することだと悟った。
姜馬(きょうま)(シレントワイザードに関係することで急を要する案件……まさかとは思うが……)
 情報厨の姜馬(きょうま)のことである。当然GB(グレートバシャール)にはフィアンセがいることを知っている。
呂司(りょうじ)「ま、待ってくれよ……まさかとは思うが……」
総介「そのまさかだ」
 更に状況は悪い。奴は一族郎党皆殺しにする位の勢いでやってくるだろう……と告げる
御脚(ユウジャオ)「一体、どうイウことダ?」
姜馬(きょうま)「すみません、どうしても外せない事情があり、少し出かけてきます」
透水(トウシュイ)「それハ、構わヌが……」
総介「待て!」
 しかし、いざ出陣しようとする二人を突如止める総介
呂司(りょうじ)「いや、急ぐんだろ……」
総介「我を通すならば、アレを持っていけ!……そうでもしないと、話にならんだろうからな」
呂司(りょうじ)「あれ!?……アレってなんだよ!?」
姜馬(きょうま)「……」
 そして、総介は桜と共に去り、この二人もまたEighter本部へと急ぐのであった。

 かくて、時は戻る。
姜馬(きょうま)(まさか、ここまで読んでいた?!……だとすれば、奴は一体!?)
 すっ
 今、凶刃が姜馬(きょうま)を捕える……と、思われたその時、姜馬(きょうま)は懐より一枚のカードを取り出す。
 それは騎士の絵とダイヤが書かれた一見するとトランプのようなものだった。

#4
奈美「なっ、それは、まさかッ百万朱版の転生小聖印(ヴァーミリオン・トランスマイグレーション)?!」
 そう、先ほどの回想にて、総介がもしもの備えとして持ってこいと言われたのがコレだ。
 そして、今ここに姜馬(きょうま)はデミカナリアクターとして覚醒する。
姜馬(きょうま)「行くぞ!」
 反撃の狼煙は上がった。
奈美「くっ……」
 少しだけ気圧されるが、しかし、すぐクールダウン
 慌てるな……奴はデミカナリアクターになったばかり、キャリアで言えばこちらが上。
 そして、とりあえず上空へ逃げる。
※いや、これもうフラグでしょ……
奈美「迦楼羅の光翼(ガルダ・ウィング)、最大パワー!」
姜馬(きょうま)氷河で騒乱せし猫の九尾(グレッチャー・レルム・カッツェ)!」
 光の翼VS氷の猫、再び。
奈美「フッ」
 相変わらず狐面で隠れているので表情は分からないが、ニヤリと笑みを浮かべる奈美。
 ズバンッ
呂司(りょうじ)「ああっ!?」
 そして、無情にも先ほどと同じように氷の猫は光の翼によって真っ二つに切り裂かれる。
奈美「さぁ!神の裁きを受けよ!」」
※いや、いつからGB夫人(ミセスグレートバシャール)が神になったんだよ!……まぁ、彼女からしてみれば女神のような存在なのかもしれない
 が……
 しかし、姜馬(きょうま)は慌てず騒がず静かに呟く
姜馬(きょうま)「翼をもがれた天使は、墜落するだけだ」
 あるいは太陽に近づきすぎたイカロスは墜落する運命にある……
 がくんっ
奈美「えっ!?」
 突如奈美、落下。
 慌てて背中を見てみると、氷の猫を切り裂いた方の光の翼が凍り付き、そして、砕け散っていた。
 べしゃりっ
 そして、そのまま地面に激突する奈美であった。

奈美「くっ、まさか、この私が!?」
姜馬(きょうま)「勝負あり……だな」
 ビシっと氷の爪めいたカタールを突き付ける姜馬(きょうま)。
奈美「……だが、よく考えたら貴様に裁きを下すのは私ではなくお嬢様だった……」
一同「え〜!?」
 今更それ言うの!?
 本当に今までの絶対殺す発言はなんだったのか……と一同が心の中で突っ込んだ瞬間だった。

#5
姜馬(きょうま)「俺を連れていけ!」
奈美「何!?」
姜馬(きょうま)「俺が直接話を付ける!」
奈美「なっ!?」
呂司(りょうじ)姜馬(きょうま)様!?」
 それは断じてGB夫人(ミセスグレートバシャール)に許しを請いに行くわけではない。
 文字通り、話を付けに行くのだ。
呂司(りょうじ)「待ってください、それは、死に行くようなものですよ……」
姜馬(きょうま)「それでも、俺は逃げるわけにはいかないからな……」
奈美「……クッ、いいだろう……」
 どのみち私では勝てなかったのであれば、後はお嬢様に任せるしかないのだから……

 と、いうわけで、姜馬(きょうま)と奈美の死合は終わった。しかし、姜馬(きょうま)の死合はまだ終わっていない。
(むし)ろここからが本番。
 千葉県某所、悪夢(ゆめ)の国
GB夫人(ミセスグレートバシャール)「うふふふ……遥かなる時の果てに忘れられし魔星、その御力、我が砲となりてここに顕現せよ、ルギハク
ス」
 奈美が連れてきた姜馬(きょうま)を一目見た瞬間、GB夫人(ミセスグレートバシャール)は召喚呪術で巨大なピザカッターのような杖を顕現する
GB夫人(ミセスグレートバシャール)「死ね!」
姜馬(きょうま)「今はまだ死ぬわけにはいかない!」
 そして、ここから姜馬(きょうま)は言葉巧みにヴァルカナ争奪戦終了までの猶予を勝ち取ることになるのだが、それはまた
別の話である。


END

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