Eighter -Scarlet Nocturne-
26ther 〜魔術師のやり直し C〜



#5
ヴィルヘル・奈美「ぬ、ぬぬぬ……」
 押しても退いてもびくともしない……ややあって、仕方がなく、奈美は話を聞いてみることにする。
奈美「いいだろう、貴様の話だけは聞いてやろう」
 あくまで聞くだけで終わったら殺すと言っているような雰囲気だった。
エスティリオ・アリーフ・ザンスパイン「まず最初に言っておくが、我が盟友、大導師(グランドマスター)を殺したのはワガハイでは
ない。ロズエリクの青瓢箪である!」
奈美「それ位知ってるわ」
一同「え〜〜」
 じゃ、GB(グレートバシャール)の仇!とか言って襲い掛かってきたのは何だったんだ……と一同は心の中で突っ込んだ。
奈美「GB(グレートバシャール)様殺しに加担した者も同罪!」
ファルゼシア「マスターは大導師(グランドマスター)の殺害に加担したわけではありません」
奈美「そして、傍観した者も同罪!」
エスティリオ「傍観もしてないのである」
 駆けつけたときには既に遅し……だった。
 そしてエスティリオはエルザと共に大導師(グランドマスター)の仇を討とうと奮戦した。しかし、敗北した……エルザも失い敗走す
るハメとなった。
奈美「……そうか」
 事情は分かった。どうやら貴様は違うようだなと刃を納めてくれる奈美であった。
雨水朧(うすい・おぼろ)「そういえば、素朴な疑問なんだけど、どうしてここが?」
一同「……」
 確かに、今更ながら素朴な疑問であった。
奈美「それは貴様がブログで記載していたからだ」
ファルゼシア「マスター……情報漏洩には気を付けてとあれほど……」
エスティリオ「ワガハイ、情報漏洩シナイ、絶対アル」
 なんで唐突に中国人風!?
 さておき、エスティリオは、Eighterに身を寄せてから(いや、ブログ自体はそれ以前からあったのだが……)
大々的に今の状況をブログで紹介していたのだ。
 エスティリオのことに関しては先ほど言った通り、情報漏洩には気を付けていたが、しかし、Eighterについて
はその限りではなかったのが失策であった。
 そして、エスティリオのブログのことはGB(グレートバシャール)も知っていた。つまり、それはGB夫人(ミセスグレートバシャール)も知っていたということに等し
い。
※ある意味怖いな、それ……
 ただ、GB夫人(ミセスグレートバシャール)はエスティリオには興味がなかったのですぐ閲覧をやめたが、奈美は何か手掛かりになるような情
報でもないかと、しかし、別段期待もしてなかったのだが、Eighter本部に身を寄せているという値千金の情報を
見事に引き当ててここへやってきたということだ。

#6
奈美「貴様に聞きたいことはそれだけではない!」
 加担した奴、傍観した奴も許さないのであれば、次に聞きたいことは他の……呪装四天王の居場所だろう。
エスティリオ「奴らの居場所……であるか……」
梓與鷹(よたか)「……」
 かんなの力を借りれば、一発で居場所などわかるだろう。しかし、與鷹(よたか)には懸念事項が一つあった。
 それは、同盟関係にある有嗎幇(ユーマハン)のことである。
 かつての呪装四天王の一人、ネサリウスこと新田姜馬(きょうま)と、彼の部下のラキエルこと古畑呂司(りょうじ)……この二人は居場
所は知らないが、同盟を結んでいる以上、呼び出すことは可能だ。
※あと、エランドラ、フキエルも長崎にいるって知ってるけど……
エスティリオ「ただ、エランドラ、フキエルはワガハイに協力してくれたのであるが……」
奈美「少なくとも貴様と同じスタンスだというわけか……ならば、残りは!?」
 追及の手を緩めない奈美。
 本当はギロリと睨みつけているのだろうが、生憎、狐面のせいで表情は分からない。
エスティリオ「そ、それは……」
 ここより先、エスティリオには未知の領域(だって知らないんだもん)
與鷹(よたか)「……あ〜、そこから先は俺から話そう」
 ひとまず挙手しつつ、與鷹(よたか)が告げる。
奈美「貴様が?」
與鷹(よたか)「その前に一ついいか……アンタもデミカナリアクターならば、もしかしてヴァルカナ争奪戦に参加するの
か?」
奈美「そんなもにに興味などない!」
 我ら赴くは復讐の道!と、言い切る奈美。とても潔かった。
 と、なれば……と頬をかきながら與鷹(よたか)は続ける。
與鷹(よたか)「一人……というか、一組……は大神の降真靈(こうしんりょう)に、そして、もう一組はノース光輪結社に身を寄せている……」
 大神の降真靈(こうしんりょう)にはサーフィスこと惹閃(じゃくせん)と、バーニーヤこと灰漸(はいぜん)が……ノース光輪結社にはウェステリアことカイ
ゼルグとドキエルことアレフがいる。
奈美「では、最後の一組はどこにいる?」
與鷹(よたか)「それは……」
 言い淀んでしまう。ここで二人の名を出すということは、仲間を売るということになるのではないか……
 それは、同盟に反するのではないか……

#7
 しかし、意外なところから救いの手は差し伸べられる。
 いや、救いの手なのかどうかは分からないが……
(かみ)総介「有嗎幇(ユーマハン)だ!」
與鷹(よたか)「総!?」
 颯爽と桜と共にその場に現れ、堂々と仲間を売り飛ばす総介。そこに痺れる、憧れるゥウウ!
※いや、痺れても憧れてもいけません。
與鷹(よたか)「おい、総ッ!」
 有嗎幇(ユーマハン)とEighterは同盟関係にある!勝手に仲間を売ることがどういうことかわかっているのか!?と総介の襟
首を掴んで問いただそうとする與鷹(よたか)山咲(やまざき)桜「既に話はついています」
與鷹(よたか)「話はついている?!」
 一体、どういうことだ?と與鷹(よたか)が訝しんでいると、桜はこう続ける。
 総介はかつて真理に触れ、そして、断片ながらもこれから起こる事象を知ることができるようになったのだ。
 故に、今日、Eighter本部に刺客が襲い来ると知り、そして、そのことを有嗎幇(ユーマハン)に伝えてからEighter本部にやっ
てきたのだ。
與鷹(よたか)「と、いうことは……」
総介「もう間もなく来るぞ……」
 姜馬(きょうま)呂司(りょうじ)が!
 それは、罪を贖うためか……それとも……


END

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