Eighter -Scarlet Nocturne-
18ther 〜魔狼は幾度も蘇る A〜



#0
 天宮(ゆたか)……與鷹(よたか)に恨みを持つ、いや、恨みなどという言葉では生温い!なんて言い出す狂人。
 彼はサイレントウィザードとの決戦の際に、魔術師としての命脈と、拳法家としての命脈を断ち切られ、ここに
與鷹(よたか)との因縁は潰えたはずだった。
 だが、しかし、因縁はまだ完全に終わっていたわけではなかったのだ……

#1
 熊本県、天草市(かつて牛深市と呼ばれていた都市)
 ここはノース光輪結社日本支部。そして、その一角にて、地べたを無様に這いずり回る哀れな芋虫がいた。
 もとい、天宮(ゆたか)だった。
天宮(ゆたか)與鷹(よたか)ぁあああ!……貴様だけは、殺す!絶対に殺す!」
 何故彼がここにいるのか……それは、サイレントウィザードとの最終決戦の後、カイゼルグがもしかしたら何か
に使えるかもしれない……と思って引き取ってみたからである。
 無論、戯れに過ぎず、実際には役に立つとは到底思ってはいなかった……あの日までは……
(ゆたか)「……なんだぁ!貴様ぁ!」
 気が付くと、目の前に足があった。そのまま顔を持ち上げて睨みつけてみると、そこには前髪で目が隠れている
弱気そうな少年がいた。ユーザー・コージィである
ユーサー・コージィ「すいません。すいません……」
(ゆたか)「あぁ!?てめぇ……」
 ぺこぺこと頭を下げるユーサーに怒りが収まらない様子の(ゆたか)。その大半が俺を憐れんで馬鹿にしてるのか!と言
う感情によるものだ。
 すっ
(ゆたか)「あぁ?」
 ユーサーが(ゆたか)に何かを手渡す。それは無地のタロットカードのようなものだった。
 それは一見するとヴァルカナのようにも見えるが、しかし、ヴァルカナにブランクカードがあるなんてことは聞
いたことがない。
(ゆたか)「てめぇ、一体何を」
ユーサー「あっ、あなたに力を……」
※お前はどこのティ〇ァだよ!
 そして、ユーサーは(ゆたか)に何かを告げる
(ゆたか)「何だと!?」
 その言葉を聞き、目の色を変える(ゆたか)(ゆたか)「待っていろよ與鷹(よたか)!貴様は必ずこの俺がブチ殺す!」
 決意を新たに、意地と根性で立ち上がる(ゆたか)。その執念をもっと別のところに生かしてほしいものである。
 なお、余談だが、気が付いたらユーザーは姿を消していました。奴は一体どうやってここへやってきて、そして
どうやって去っていったのか……
 しかし、今の(ゆたか)にとってそんなことはどうでもいい出来事だった。

#2
(ゆたか)「おい、そこのお前!」
ヨシーマ・Q・タヌァクァ「え?俺!?」
 ヨシーマがなんとなく、そこを通ったことが彼にとっての悲劇であった。
 壁にもたれかかっている(ゆたか)に呼び止められ、いきなり因縁を吹っかけられたのだ
(ゆたか)「ヴァルカナをかけて俺と勝負しやがれ!」
ヨシーマ「何を馬鹿なことを……」
(ゆたか)「俺にはどうしてもヴァルカナが必要だ!奴を殺すためにな!」
ヨシーマ「寝言は寝て言うんだな!……それにヴァルカナリアクターでもない貴様がヴァルカナリアクターである
俺に勝てると本気で思っているのか?」
(ゆたか)「ハッ!てめぇこそ、ヴァルカナリアクターになったものの、幽闘術も使えない役立たずだって知っているぞ」
ヨシーマ「ほう、貴様どうやら死に急ぎたいようだな」
 それは事実ではあるが、同時に触れてはいけない逆鱗だった。
ヨシーマ「貴様みたいな半死人如きは、幽闘術なくても軽く殺せるわ!」
 何かの役に立つかと思って戯れで拾った生命……それは今、ここで散るためのものだったと知れ!と怒りと共に
殴りかかるヨシーマ
 ドゴンッ
(ゆたか)「うぐっ!?」
 しかし、與鷹(よたか)の手によって拳法家としての命脈を断ち切られた(ゆたか)は相手の攻撃を回避することも受けることも厳
しい状況にあるのだ。
ヨシーマ「貴様如き、指一本で十分だ!」
 どすどすっ
(ゆたか)「おごおお!?」
 軽く突っついただけでもこの有様。最早勝負は目に見えている……と、誰もが思った。
(ゆたか)(俺は、與鷹(よたか)を殺すためならば、悪魔にだって魂を売り渡す!奴を殺すためならばッ!)
 ズドスッ
 ヨシーマの繰り出す一本拳を掌で受け止める……が、しかし、貫かれる。
(ゆたか)「あぐっ!?」
 痛みを無視してヨシーマの手を握る(ゆたか)。しかし、その力は弱々しい。
ヨシーマ「身の程を知れ!カスが!」
(ゆたか)「うぉおおおおおおぅ!」
 ガシッ
ヨシーマ「なっ!?何ぃ!?」
 雄叫びと共に、(ゆたか)が手に力を籠める。半死人とは思えぬ力に一瞬驚くも、生命の灯が消えゆく前の最後の煌めき
だと感じたヨシーマは慌てず騒がず(ゆたか)の死を待つ
 カカッ
ヨシーマ「な、なんだ?!」
 次の瞬間、本当に生命の灯の最後の煌めきとでも言わんばかりの光が(ゆたか)の右手から放たれる。
 この光は一体!?


続

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