Eighter -Scarlet Nocturne-
6ther 〜影より出ずる虚構 A〜



#0
 ヴァルカナリアクターからヴァルカナを引き剥がすことができるのはヴァルカナリアクターのみ。
 しかし、ヴァルカナリアクターはヴァルカナを奪われると死に至る。
 ヴァルカナ争奪戦……それは血で血を洗う争いとなるのだろうか……

#1
 天四斗(あまよと)、Eighter本部
梓與鷹(よたか)「まさか、ヴァルカナにあんな秘密が……いや、制約が隠されていたとは……」
 先日の死合を経て、ヴァルカナ争奪戦は一筋縄ではいかないことを改めて思い知らされ、ため息とともにそんな
ことを呟く與鷹(よたか)
(かみ)総介「だが、ヴァルカナもオーパーツである以上はEighterで管理すべきだ」
與鷹(よたか)「それは、わかっているが……」
 俺は殺しあいがしたいわけじゃないんだ!と叫ぶ與鷹(よたか)化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「ヘッ、ヴァルカナを奪えないにしてもだ、ヴァルカナリアクターをぶっ倒して捕縛すりゃいいんじゃ
ねぇのか?」
與鷹(よたか)「確かにな……」
山咲(やまざき)桜「ですが、実際にそんなことができると思いますか?」
 例えば、《ザ・テンペスト》……と桜が呟くと、すかさず出音(でおん)が奴は俺のエモノだ!としゃしゃり出る。
與鷹(よたか)「例えば……先日の、ノース光輪結社の司祭とかいう奴……奴を確実に倒せるという自信はあるか?」
梶太郎(かぢだろう)出音(でおん)「そ、それは……」
 奴の使う幽闘術の底がまだ見えない以上、軽々しく倒せるなどと豪語はできないのが現状だ。
出音(でおん)「だったら……俺がヴァルカナリアクターになれば……」
 懐から《運命の輪(ホイル・オブ・フォーチュン)》のヴァルカナリアクターを取り出し、静かに告げる出音(でおん)
與鷹(よたか)巫山戯(ふざけ)るなよ!そんなことをさせるために俺はお前にソレを託しているんじゃないぞ!」
 いつにもまして声を荒げる與鷹(よたか)。
 もし、本当にそんなことを考えているのであれば、お前にそのヴァルカナを任せるわけにはいかない!
 Eighterで管理する!とまで豪語する與鷹(よたか)であった
出音(でおん)「なっ……」
 與鷹(よたか)の壮絶な覚悟に唖然とする出音(でおん)
白拍子かんな「それに、はたしてあなたのお姉さんは、あなたがヴァルカナリアクターになるのを望んでいると思
いますか?」
出音(でおん)「はっ!?」
 かんなに忠告され、思わず出音(でおん)は自分の世界にトリップする。
※いや、トリップって……

#2
 暫く姉さんハァハァ……とか息を荒げた後、再び出音(でおん)はキリっとした顔でこう告げる
出音(でおん)「確かに、姉さんはそんなことを望んでいないはずだな!」
一同「……」
 いいこと言ってるはずなのに直前の行為ですべてが台無しである。

 それに、問題はヴァルカナだけに非ず。
 百万朱版の転生小聖印(ヴァーミリオン・トランスマイグレーション)のこともある。
 こちらはヴァルカナの倍以上はある。つまり、最悪はそれほどの死者が出る可能性があるということだ。
與鷹(よたか)「いずれにせよもっと情報がないことには何とも言えないが……」
デミウルゴス「なるほど、もっと情報があれば……ですか……」
一同「うぉおう!?」
 例によって例の如く、唐突に出現するデミウルゴスに驚きを隠せない一行。
與鷹(よたか)(やっぱ心臓に悪いな……)
 と、言うか、毎回思うが、どこからどうやって現れるのか?
 かつて七罪塔は自分の影に沈んで消えた。で、あれば、その逆もまた可能なのかもしれない。
※あれ?影の中だけ移動できるってどこかで聞いたことあるな……
出音(でおん)「うおおっ?!なんだコイツ?!」
與鷹(よたか)「あ〜、そうか、お前は初めてなのか……」
 なんて説明をすればいいものか……と與鷹(よたか)が頬をぽりぽりかきながら考え込んでいると、デミウルゴスはどこぞ
の貴族令嬢もかくやといった感じの佇まいで自己紹介を始める
デミウルゴス「クスクスクスクス……私はデミウルゴス」
出音(でおん)「デミウルゴス!?……なっ、まさか!?」
デミウルゴス「あらあら、私のことをご存じですの?」
出音(でおん)「あの、ナザ〇ック地下大墳墓随一の智慧者の!?」
一同「それはデミウルゴス違いッ!」
 思わず一同が盛大に突っ込んだ瞬間であった。
 さておき……
與鷹(よたか)「で、だ……さっきの話に戻るが……」
デミウルゴス「何かしら?」
與鷹(よたか)「お前は知っているのか?……ヴァルカナのことを」
デミウルゴス「クスクスクスクス……知りたい?」
梶太郎(かぢだろう)「知っているなら教えろや!」
総介「フン、そいつがタダで教えるとは到底思えんな……」
桜「天命(ネフェシュ)と引き換えになどと言い出すのであれば……しかし、この際致し方ありませんが……」
與鷹(よたか)「ぐっ……」
 確かに、先日は何かの気まぐれだったかもしれないが、今回もまた同様とは限らないだろう。
 で、あるならば、やはり覚悟を決めるしかないのだろうか……


続

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