Eighter -Practical Era-
69ther 〜過去の惨劇を追え C〜



#5
樫木堅(かしぎ・けん)「なぁ、罅割弐玉(ひびわれ・にぎょく)についてもっと詳しく知りたいんだが……」
 彼のことを知れば、事件の真相にたどり着けそうな気がするんだ!と豪語する天四斗(あまよと)の逆コナン。
 しかし、そんな彼の発現に、クラスの女子連中の眼は冷ややかだった。絶対零度と言っても過言ではない。
罅割弐玉(ひびわれ・にぎょく)の情報が知りたいんじゃなく、盗撮の事が知りたいだけだと思われるので……
楸木(ひさぎ)秋「さて、馬鹿はおいといて……」
櫟木樂(いちい・らく)「みんなの悩みを聞いていた硝子さん以外に犯人はどうやって情報を収集することができたのか……」
 きっとそれが事件を解く鍵となる……もとい、勝利の鍵となる。
榛木(はしばみ)秦「……盗撮ができるってことは盗聴もできるってことじゃないのか?」
一同「あっ、それは、確かに……」
(けん)「そうかぁ?……盗撮ができるなら盗聴なんてしないんじゃ……」
 しかし、その時、(けん)に電撃走る
(けん)「はっ……映像じゃなく、音だけで愉しむということも……例えばブスがトイレしている映像なんて萎えるけど
音だけなら妄想は自由だ!」
女子一同「本当に最低な考え方……」
 えげつないほどに(けん)の好感度が下がっていくのだが、まぁ、自業自得ということで……
秋「……でも、待って……もし、彼が犯人だったとして、自分の盗撮趣味で脅されたとか白状するかな?」
(らく)「確かに、秘密をばらされるって点において考えると……」
 自分の秘密を天秤にかけて人を陥れるのは流石に……
秦「そう考えると雨踊風呂止(うよう・ふろと)も犯人ではないと思うな……母親の幸せを願っているならその秘密を白日の下にさら
すことはしないはずだ」
秋「逆島映(さかしま・ばえる)もまた同じ……流産してしまうほどのショックを自ら与えるか?」
(けん)「異議ありッ!妊娠は想像妊娠だった可能性も考えられる!……いや、(むし)ろ教師を懲戒免職に追い込むために態
と付き合っているフリをしていた可能性も……」
 いや、お前『異議あり』って言いたいだけだろ……と一行は心の中で突っ込んだ。

(らく)「話を続けるけど、舗道缶蹴(ほどうかん・しゅう)もまた、万引きしていることを白日の下に晒すかな?」
一同「確かに……え!?……ちょっと待って……」
 ここに来て、一行はあることに気づく。

#6
 売未来(うるみく)哀の盗作騒ぎ……これがもし、彼女が盗作だと喚き散らしているだけだったとしたら……
一同「それよりも、何よりも……彼女だけが他と違って、誰かに秘密をばらされたわけではなく、自ら被害に遭っ
たと宣言している……」
鈔金少(そうかね・すくな)「と、いうことは、十年前の惨劇……その犯人は……」
 誰もが事件の真相にたどり着いたと思われたその時、南が声を上げる。
楠木南「ちょっと待った!」
一同「な、何!?」
品辛斬子(ぴんから・きりこ)「おいおい、折角のクライマックスに水を差すんじゃない」
南「いいえ、この事件、まだ真相にたどり着けていない!」
風見原莉暗(りおん)「ほう、そこまで言うなら……その発言に花〇院の魂を賭けるか?」
一同「いやいや、勝手に人の魂を賭けるなッ!」
 一同、渾身の突っ込みであった。

 南は一体何に気づいたというのか!?
南「彼女の生徒手帳はどこにあった?」
一同「ん?ミステリー研究部の部室にあったんだよな?」
 正確にはこれはミステリー研究部の部室、その先輩方の活動記録を保管していた段ボールの中から発見された。
秋「活動記録を保管した段ボールの中!?」
(らく)「そうか!どうして生徒手帳はその場所に!?」
南「そもそも、十年前にそんな事件があったのならばいくら学校がもみ消したとしても、何らかのニュースになっ
ていて然るべき……」
斬子(きりこ)莉暗(りおん)「ふっ、こんなこともあろうかと思ってな、十年前の新聞がここにある!」
 天四斗(あまよと)のDr.キリコとGTRのタッグが取り出した古新聞……十年前の日付のそれには、天四斗(あまよと)工業で一人の女子生
徒が失踪という記事が書かれていた。
斬子(きりこ)莉暗(りおん)「さぁ、無駄な抵抗はやめて十年前の事件の真相を告げるんだ!」
南「いえ、まだよ!この新聞のロゴ……その背景にある立山連峰!」
斬子(きりこ)「それが何か?」
莉暗(りおん)天四斗(あまよと)新聞の象徴ではないか!」
南「知ってる?この立山連峰の写真、実は左右逆だったってことを」
一同「左右逆ぅ!?」
南「今から数年前、とある男性がそのことを指摘、慌てて左右反転したという逸話があるの」
斬子(きりこ)莉暗(りおん)「だが、今はそんなトリビアを披露する場ではない!」
南「そして、この新聞の立山連峰は正しい姿である!」

#7
(らく)「そうか!数年前に正しい姿になった天四斗(あまよと)新聞の象徴が、十年前の時点で正しい姿なわけがない!」
斬子(きりこ)莉暗(りおん)「し、しぃまったぁッ!」
 ここまで来ればもうお分かりであろう。十年前の惨劇など、なかった。全てはミステリー研究部が残した作品
※ってか、左右逆なのか、正しいのか、そんな簡単にわかるものなのだろうか?
斬子(きりこ)莉暗(りおん)「かんな以外にわかるわけないと思っていたのに……」
南「まぁ、私もかんなに聞いたんだけどね」
一同「えぇ〜〜……ズルい」
 これも、かんなの策。あえて南が喋る事で天四斗(あまよと)のDr.キリコとGTRの疑惑を退けたのだ。

斬子(きりこ)莉暗(りおん)「はぁ、バレてしまっては仕方がない……」
 だが、楽しい催しものだっただろう?とのたまう天四斗(あまよと)のDr.キリコとGTR
一同「催し物って……」
(すくな)「これにて、一件落着」
一同「いや、一件落着ってか……」
 最初から事件などなく、創作だった場合、一件落着と言っていいのか?
 さておき、こうして、この話は幕引きとなったのだった。


END

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