Eighter -Practical Era-
62nder 〜黒点と紅炎と光冠〜



#0
 コロナ……それは太陽の周りに見える自由電子の散乱光のことでラテン語で王冠を意味する。
 そして今、そんなコロナの名を関したウィルスが猛威を振るっている。
 これはそんなコロナウィルスにまつわる話……だったらいいな
※いや、なんでそんな感じなの!?

#1
 天四斗(あまよと)天四斗(あまよと)工業3-J
一同「くっ……」
 その日、教室は異常な暑さに包まれていた……
 全ての元凶は『スマホで操作できるアンドロイド』で有名なギャラクシアン・エクスペリヤ、(あくた)アリアである。
 彼女から謎の熱波が放たれており、教室は妙に蒸し暑くなっているのだ。
 そう、それはさながら太陽の周りに見える自由電子の散乱光の如く……
品辛斬子(ぴんから・きりこ)「おし、今日はお前らに重大な発表がある」
風見原莉暗(りおん)「心して聞くように!」
一同「……」
 また、なんか厄介なことが起こる。そんな予感がしてならない一行であった。
 と、その時、教室のドアが開き、一人の漢が入ってくる
一同「あ、アンタは!?」
 その漢の名は角去田鎬諏(かくされた・こうしゅ)。境界線上のベライゾンジャパンに務めるエンジニアにしてこの教室にスマホで操作で
きるアンドロイドを転入生として送り込んだ張本人である。
角去田鎬諏(かくれた・こうしゅ)「やはり……」
 アリアを一目見るなり苦虫を噛み潰したかのような顔をする鎬諏(こうしゅ)鎬諏(こうしゅ)「この症状は間違いない、コロナウィルスだ!」
一同「ちょっと待てぇい!」
 思わず突っ込みを入れる一行。
 そもそも、コロナウィルスとは人に感染するウィルスなのであって、アンドロイドたるアリアが感染するわけが
ないのだ。
鎬諏(こうしゅ)「皆さんの疑問も最もでしょう……ですが、これは人に感染する類のコロナウィルスなのではないのです」
 見てください、彼女の姿を……まるで太陽から噴き出すコロナのようでしょう?と鎬諏(こうしゅ)は続ける
一同「……」
 そこまで言われれば大体オチは分かった。
 これはコロナウィルスという名の全くの別物だと……
(あくた)アリア「あたひは、らいりょうふ。なのれす!」
一同「いや、絶対大丈夫じゃねぇだろこれ!」
 すでに呂律が回っていないアリアを見て思わず突っ込まざるを得なかった。

#2
鎬諏(こうしゅ)「今境界線上のベライゾンジャパンでは緊急で対策チームを作成し、コロナウィルスに対抗するワクチンを開
発している最中となります」
一同「……」
 傍から見れば医者が頑張っているように見えるのだが、しかし、実際にはプログラマーがワクチンソフトを作ってるだけの話だ。
 なんだろうな、この巫山戯(ふざけ)た状況……
鎬諏(こうしゅ)「皆さんにはなるべくアリアに近づかないようにしてください」
一同「いや、当然だからッ」
 そばにいるだけでこの暑さ、近寄りがたいにも程がある。
アリア「さいこうに、はいってやつなのれす!」
樫木堅「やべぇ、なんかおかしなこと言いだした……」
鎬諏(こうしゅ)「くっ、まさかコロナウィルスの影響がここまで……」
 愕然とする鎬諏(こうしゅ)とは対照にクラス全員は冷めていた。
※なんだろうね、この温度差……
斬子(きりこ)莉暗(りおん)「我々にも何かできないだろうか!?」
 と、その時、天四斗(あまよと)のDr.キリコとGTRのタッグは目をキラキラさせながら歩み寄ってくる。
 絶対に面白半分、いや、面白全部で事態をややこしくしようとしているに間違いないが、鎬諏(こうしゅ)にはそれが頼もし
く映った。
鎬諏(こうしゅ)「ならば、冷却を……アンドロイドにとって熱は天敵と言っても過言ではない」
斬子(きりこ)「任せろ、冷却だな!」
莉暗(りおん)「何を隠そう私は生徒の頭を冷やさせることにかけてはプロだ!」
一同「それ比喩表現ですからねッ!」
 ドヤ顔で宣言するGTRに思わず突っ込みを入れる一行であった。
 生徒の頭を冷やさせるというのは物理的なことでは断じてない!
榛木(はしばみ)秦「ってかさ、シャットダウンしちゃえばいいんじゃね?」
一同「……」
鎬諏(こうしゅ)「なっ、何を馬鹿なことをッ!アンドロイドは繊細なのですよ、いきなり電源断したら最悪ぶっ壊れてしまう
かもしれないのです」
アリア「いいや、げんかいだ、もうおしゅね!」
 ぽちっ
鎬諏(こうしゅ)「アァ〜〜〜〜ッ!」
 そんなことをしている間にアリアは耳の後ろにある電源マークを長押し。自分で自分を強制終了してしまうので
あった。
斬子(きりこ)「なんだ、自分で自分のスイッチを切ってしまったのか……つまらんな……」
莉暗(りおん)「折角冷却してやろうと思ったのにな……」
 と、氷水の入ったバケツを持ってきてそんなことを言いだす天四斗(あまよと)のDr.キリコとGTR
一同「待てやコラ!」
 アリアがどこまで防水機能を有しているのかはこの前のテストでもはっきりはしていないが、しかし、電子機器
に水をぶっかけるのはアカン!
 結果として止められたのは僥倖だった。

#3
 それから数日後……
一同「……」
 間違ったコロナウィルスから無事生還(?)をしたアリアだが、今度はなんかこう、炎を噴き出していて明らか
にヤバイ……
 さらに言うと突如顔に(ほくろ)ができて、しかも、なんか移動してる……
アリア「私に近づくと火傷するぜぃ?」
 いや、比喩表現じゃなく物理的に……
 そんなアリアはさておき、天四斗(あまよと)のDr.キリコとGTRは再び叫ぶ。
斬子(きりこ)莉暗(りおん)「おし、今日もまた重大な発表がある!」
 そして、再び現れるのは角去田鎬諏(こうしゅ)である。
鎬諏(こうしゅ)「この症状……間違いない、プロミネンスウィルス、そして黒点ウィルスの合併症を引き起こしているッ」
一同「もうええわ!」
 付き合ってられん……と一同が匙を投げた瞬間であった。
※と、言うかこうも連続で不具合が出るなんてギャラクシアン・エクスペリヤには重大な欠陥があるんじゃなかろ
 うか?と疑いたくもなってくる。


END

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