Eighter -Practical Era-
56ther 〜内完全な宿業(インパーフェクトフォルトゥナ)(ざれり) B〜



#3
 天四斗(あまよと)工業きっての武闘派の二人、楠木南と榎木(えのき)夏……IFOの中ではどちらが強いのか……
楠木南「はっ」
榎木(えのき)夏「やぁっ!」
 ガガキンッ
 大鉾を上から振り下ろす南に対して夏は豪刀を横薙ぎして応戦する。
南「やるわね!」
夏「そっちこそ!」
 南が持つ大鉾はヴァン・ホーテン戟という巫山戯(ふざけ)た名前の兵器でチョコの惑星というこれまた巫山戯(ふざけ)た名前のダ
ンジョンを攻略した際にゲットした兵器である。
 対して夏が持つ豪刀は鴉彫死(あぼりじに)というこっちも巫山戯(ふざけ)た名前の兵器で、あるクエストの報酬だ。
 クエスト報酬だとかダンジョンに潜れば誰でも手に入る装備なのかなんて考えるプレイヤーもいるだろう。
 だが、決して簡単に取得できる装備ではないのだ。少なくともゲームを始めて一週間やそこいらのプレイヤーが
手に入れられる武器ではない。
 それは努力なのか、才能なのか……ともかく、ベル君が目をつけるだけのことはあるってことだ。
南「なかなかやるじゃない!」
夏「そっちこそ、流石私が認めたライバルなだけはあるわ!」
 ガガキンッガキンッ
 ゲームの中だから……といえば簡単にカタはつくのだが、重量兵器である大鉾をまるで小枝のように振り回す南
も凄いが、それを捌き切る夏の技量もまた凄い。
 そして、これはまだ小手調べ……ほんの序章に過ぎない。
夏「そろそろ必殺技ゲージも溜まってきたわね」
※いや、これは格ゲーじゃねぇからそんなゲージないから!
南「タイムアップで引き分けってのもつまらないし、そろそろ行くわよ!」
※だから、これは格ゲーじゃねぇからタイムアップもないから!
 さて、戯言はここまでにして、ヴァン・ホーテン戟を上段に構えたまま微動だにしない南と鴉彫死(あぼりじに)を居合腰に構
える夏。更に、左手も武器とか持ってないのに同じく居合腰の構えだ。
南「竜巻旋風戟ッ!」
夏「ツインバードデストラクトッ!」
 ガカッ
 空気が張り詰めてしんと静まったのも束の間。両雄互いに技を繰り出す。
 先に動いたのは南。どこからともなく馬が駆けつけてきて、それに飛び乗ると一気に駆け抜けながら斬撃をお見
舞い。ものすごい勢いで夏のHPゲージが減っていく!
 これはもはや勝負は決まったか!と思った次の瞬間、何も持っていなかったはずの夏の左手に突如として鴉彫死(あぼりじに)
が出現。そのまま双剣抜刀!カウンターで南をクロス状に切り伏せる。

#4
ロウ・ジェノム「決まったぁ!」
南「うそん!?」
 その声が、誰が勝者なのかを物語っていた。
 地に倒れ伏す南。この死合を制したのは夏だ!
夏「いい勝負だったわ!」
南「私が、負けたなんて……」
 愕然とする南。武芸百般何でもこなす楠木家の一員として、敗北は受け入れがたいのだ。
※あ、受け入れられない……じゃないんだ……
夏「現実世界ではあなたが強い、でもゲームの中では私の方が強い……それでいいじゃない?」
南「うん……うん!?」
 一瞬納得しかけたけど、やっぱり納得できない南であった。
※ってか、そんなアクセ〇ワールド的な関係だったか?この二人……
ロウ「いや〜、今のはいい勝負でしたね。ベル・ゲルミルさん」
ベル・ゲルミル「ああ。どっちが勝ってもおかしくはないナイスバトルだった……」
 夏のカウンターが炸裂するよりも前に、南の斬撃が夏のHPを削りきっていれば、勝敗は逆だっただろう。
 勝負の分かれ目はそこだったのだ!

ロウ「さぁ、これにて前哨戦は全て終わりました!」
一同「うおおお〜〜!」
 天下統一武闘会はここからがメインステージ。今までは余興のようなものに過ぎないのだ。
南「って、これ、前哨戦だったの!?」」
 まぁ、何も知らされていない天四斗(あまよと)工業3-Jは驚きの声しか上がらないわけだ。
ロウ「それでは本選出場の選手をご覧ください」
一同「お〜〜〜!」
 会場も大いに盛り上がる中、前哨戦を勝ち残った選手が入場する。
 †ボトル†、イチイバル、メビス……って少なすぎない!?
 そして、なぜかティセンがいる。
*「おいおい、ゾフェルはどうしたんだよ!」
 なんでいないんだ!とブーイングが巻き起こるのだが、すかさずロウが説明を行う
ロウ「はい。ゾフェルさんですが、リアルでの仕事が忙しいとかなんとかで出場をキャンセルされました」
ベル「まぁ、課金の力で無双する奴が大会の優勝者って言われても納得できないだろう?」
一同「……」
 た、確かに……と、言うわけで観客は納得する。
ロウ「では、これより本選を開始……」
*、*「ちょっと待ったぁ〜〜!」
 突如、乱入する二人組……この二人はもしや!?


続

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