Eighter -Practical Era-
56ther 〜内完全な宿業(インパーフェクトフォルトゥナ)(ざれり) A〜



#0
 インパーフェクトフォルトゥナオンライン。
 その中の一大イベント、天下統一武闘会!果たして今大会の覇者は誰になるのか!?
※どうでもいいけど、サブタイの内完全って意味おかしくね?

#1
櫟木樂(いちい・らく)「はっ!」
 ザムッ
(あくた)アリア「……」
一同「おお!?」
 イチイバルが一気に距離を詰めて仕込み放棄からの一閃。確実に決まったかに思えたが、サラっと回避して見せ
るP01Re天。
 これには会場も沸き立つ。
ロウ・ジェノム「今のはすごかったですね。ベル・ゲルミルさん」
ベル・ゲルミル「……」
 隣のベル君に意見を求めようとしたが、冷や汗をかいているベル君を見て思わず動揺するロウ。
ロウ「ど、どうしたんですか?ベル・ゲルミルさん……」
ベル「あれを避けるとは……尋常じゃない回避能力……いや反射神経だ……」
 現トップランカーである俺でもあんな回避は不可能だろう……そう考えたからこそ、ベル君は冷や汗が止まらな
かった。
 ことに回避能力……反射神経においては、P01Re天の方が高い!
※まぁ、プレイヤーがそもそもアンドロイドなんで……人間を超えた動体視力で動くのもわけはない。
(らく)「くっ、流石……ですが、これならどうです?」
 ザザッザムッ
アリア「端的に申し上げれば、無駄かと……」
 猛攻を繰り出すイチイバルだが、それら全てを涼しい顔して回避してみせるP01Re天。
 終始回避に専念するのかと思いきや、そんなことはない。ここから先はP01Re天のターン。
アリア「そこです」
 ダダダダダダダッ
 一瞬の隙をついて、二挺拳銃が火を噴く。
 マシンガンではない、通常の拳銃での連射だ。こんなこともアンドロイドだからこそできる芸当だ
(らく)「くっ」
 咄嗟にシルバートレイを取り出して盾替わりにしてガード。
アリア「なるほど、そういうこともできるのですね……」
 しかし、それを冷静に見つめるP01Re天
アリア「で、あれば……」
 P01Re天は拳銃をその場に落として錫杖を手に取る。
 仕込み箒には仕込み杖……と、言ったところか
(らく)「次で決める!」
アリア「それはこちらのセリフになります」
 対峙したまま微動だにしない両雄……

#2
 緊迫した空気が場を支配して数分……いや、実際には数秒なのかもしれない……ともかく、静まった会場……そ
して、勝負は一瞬だった。
 カカッ
 今ッ!と絶好の機会を得た両雄は一気にとびかかり、そして、仕込んだ刃を一閃する。
 交錯は一瞬……そして、地に倒れ伏せるのはP01Re天の方だった。
アリア「何故……」
ベル「あいつ、無茶苦茶しやがるぜ……」
 またもや冷や汗をかきながら、ベル君が呟く。
ロウ「ど、どういうことでしょうか、ベル・ゲルミルさん?」
ベル「回避不能のスキルを回避しようとしやがったぞ、あのアンドロイド……」
一同「え〜〜?!」
 ベル君の一言に会場が騒然とする。
 もし、これが現実世界での殺し合いならば、アリアは紙一重で回避してカウンターを叩き込めていただろう。
 しかし、ここはゲームの世界だ……スキルに回避不能のアビリティが付いていれば、現実世界では回避可能だと
しても、ゲームの中では絶対に回避は不可能なのだ。
 アリアの敗因は、現実世界と混同してしまったことにある……のだろう。

ロウ「さ、では次の死合へ参りましょう!」
 騒然とするのも束の間、死合は次へと進む。と、言うか進めないと終わらないので当然なのですが……
楠木南「ようやく私の出番のようね!」
榎木(えのき)夏「遂に私の出番なのね!」
 次の出場選手、両者、気合十分だ。
ロウ「次はレベル32のバーサーカー、ナナミと、レベル32のフーファイター、メビス!」
ベル「ほう、あの二人か……」
 顎に手を当ててニヤリと笑みを浮かべるベル君
ロウ「おっ、知り合いなんですか?ベル・ゲルミルさん」
ベル「いや……だが、あの二人は最近ここに入ってきた奴らの中で群を抜く力を発揮しているプレイヤーだからな
……」
ロウ「なるほど、ベル・ゲルミルさんのお眼鏡にかなう戦士というわけですか……これは否が応でも期待が高まり
ますね!」
一同「おおお〜〜!いいぞ!やったれ〜〜!」
 観客たちも大いに盛り上がる。
 これはヘタな死合はできない流れだ。
南、夏「行くわよ!」
 かくて、死合のゴングは鳴った!
 IFOの世界で、勝つのは南か、それとも夏か……


続

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