Eighter -Practical Era-
31ster 〜冥道は一日にして C〜



#5
 これは、櫟木樂(いちい・らく)がメイドになるまでの物語……
 野良メイドから正式なメイドにジョブチューン……もとい、ジョブチェンジするべく(らく)は日本メイド協会からの
試練に挑む。
 掃除をクリアした(らく)はやがて、料理勝負へと身を投じるのだが、果たして……(らく)が作ったのはシチューであった
か!?
※いや、その『果たして』から始まる文章は確かに使い方としては間違ってはいないけど、今回は間違っているか
 ら!……今回の場合疑問形は不要だから!
メイド「まずは私の作品……麻婆拉麺(マーボーラーメン)飯」
 ボワワワァ〜〜〜ンと突如銅鑼(どら)が鳴ると同時に羽付き扇子のメイドが麻婆拉麺(マーボーラーメン)飯をみなに配る
生徒「ってか、俺達も審査委員なんですか?」
 そして、何故か斬子(きりこ)ともに見学に来ていた一行も食卓にありついている
メイド「当然です……」
メイド「最も、貴方方は一般審査委員なので得点は一点しか入れられませんが」
生徒「いつの間にそんなシステムが!?」
白拍子かんな「ちなみに、本職メイドは十点まで入れられるそうです」
メイド「……私が言おうとしたのに〜」
 きぃ〜〜、悔しいってな感じのメイドであった。
 まぁ、相手が運の女神ならシャア無いよね……
品辛斬子(ぴんから・きりこ)「いいじゃないか、ロハ(無料)でメシが食えるんだから食費が浮くと思えば」
生徒「ちょ、先生……弁当持ってきた俺はどうすれば?」
 ある生徒の叫びで次々と俺も、俺もと弁当組が文句を言う
斬子(きりこ)「ああ?そんなもの、急な料理実習があったのを忘れていましたって親に嘘をつけばいいんだよ」
一同「なんでですか!」
斬子(きりこ)「あの生徒を見ろ!奴は前もって料理実習があるって分かっていても親には黙って弁当を作らせているツワモ
ノだぞ」
一同「……」
 そして、弁当は当然残して帰り、親にどうして?とか問われるのだという
 いい加減通知してあげて!
※ちなみに、これ、著者の実話……というのは内緒

 ……ともかく、麻婆拉麺(マーボーラーメン)飯を食べる一行
一同「こ、これはぁ!」
メイド「絹ごし豆腐、木綿ごし豆腐、朧豆腐……三つの豆腐を麻婆にした上に拉麺(ラーメン)とライスとドッキング……」
メイド「正に、豆腐三重奏!」
 ……いや、豆腐三重奏って……ってか、朧豆腐を麻婆豆腐にしたら原型なくなっちゃうんじゃ……?
メイド「流石ですね……」
斬子(きりこ)「お前らガツガツ食うんじゃないぞ……この後ウチのメイドの料理もあるんだからな……あ、おかわり」
 ビシっとどんぶりをメイドに突きつける斬子(きりこ)
一同「アンタにだけは言われたくはねぇよ!」
 さて、続いて櫟木樂(いちい・らく)のターン
櫟木樂(いちい・らく)「……どうぞ……」
一同「……」
 皆の前に配られるのは何の変哲もないオーソドックスなシチューであった

#6
メイド「あなた、メイドをナめているの?」
(らく)「まさか、メイドはナめるものではなく、愛でるものです」
メイド「ぐくっ……」
 いや、その切り返しもどうなのか……
生徒「いや、しかし……さっきの豆腐三重奏に比べると……」
メイド「ま、待ちなさい……」
 と、その時、羽付き扇子のメイドが戦慄する。
 そして、そのままシチューを一口
メイド「……ま、負けた……」
 涙を流しながらガクリと頽れるメイド
一同「ええ!?」
 突然の敗北宣言に一同唖然
メイド「い、一体何が?」
メイド「……貴方もメイドならば分かるはずよ……」
メイド一同「……はっ……」
 そして、メイド集団もはっとなる……
 星にも負けぬ数多のレシピ、その数百億……
 そのレシピの頂点に君臨する一つのメニューがある……
 その料理は今まで数多のメイドが挑戦しつつも失敗し、あるメイドは料理恐怖症となり、またあるメイドは野良
メイドに身を落としご主人様を肉欲におぼれさせ果てに誅殺されたという……
メイド一同「月より強かな手さばきで作るは千年の醍醐味……その名は……千年シチュー!」
メイド「そんな……じゃ、じゃあ……あの娘が今まで数多のメイドが挑戦し、志半ばで砕け散ったというあの伝説
を成し遂げたとでもいうの?」
メイド「くっ……何なの!?あの娘……」
メイド「正に、彼女はメイ道の申し子……」
一同「……」
 ちなみに、シチューは本当にただのシチューにしか思えなかった(味もごく普通)のだから世の中何があるか分
からないものである。
メイド「だが、まだよ!まだ、最後の試練が残っているわ……」
メイド「……ええ、次の試練こそが最大にして最後の難関!」
メイド一同「ご主人様への奉仕!」
榛木(はしばみ)秦「うぉおお〜〜〜!待ってました〜〜!」
 と、ここで盛大に叫ぶのはメイド萌えのヘンタイ、榛木(はしばみ)秦。
 皆が白い目で見つめても気にしない。蛙の面に水とはこのことだぜ!
メイド「よいでしょう……ならば、貴方をご主人様として最後の難関に挑戦してもらいます」
 と、言うわけで、(らく)と秦対峙す……
秦「……ええと……ところで何をすれば?」
メイド「それは勿論……」
 ヒソヒソと耳打ちするメイド。そして、うっひょ〜〜〜と叫びつつガッツポーズをとる秦
 一体何を告げられたのか?
秦「よ、よし、じゃ早速……」
 ン、ゴホンと咳払いを一つ……そして、皆が固唾をのんで見守る中、秦はニヤニヤしながら告げる
秦「では、パンツを脱いでスカートをたくし上げてもらおうか、これはご主人様からの命令だ!」
一同「最低だぁ〜〜〜!」
(らく)「……」
 すると(らく)はすすっと秦の前まで歩みより……
 ゴチン
秦「痛いッ」
 チョップを一つ
秦「てめぇ、何しやがる……」
(らく)「えっちなのはいけないと思います」
 まぁ、そうだよね……と思う一行
秦「ンなぁ……こいつ、ご主人様の命令に逆らうつもりだぞ……」
 いや、そんな命令を下す方もどうかと……

#7
メイド一同「クッ……最後の関門も……クリアよ!」
 しかし、メイド一行はがっくりと項垂れる……
秦「はぁ?」
 どういうことだよ!とか思っているとすかさずメイドの一人が告げる
メイド「メイドたるもの、ご主人様の命令が絶対とはいえ、ご主人様を真っ当な道に導くべく、諫言するのも勤め
のうち……」
メイド「ご主人様と肉欲に溺れるようなメイドは野良メイドとしてメイドライセンスを剥奪されます……それを彼
女は見事に諌めて見せた……」
一同(最後の試練が今まで一番簡単だった気がする……)
 まぁ、結果論ですけど……
秦「いや、俺は納得いかないんだけど……」
メイド「そして、貴方にはご主人様たる資格なし……」
秦「ええ!?」
 メイドをそんな目で見るような人物はメイドを持つ資格がありません、お引き取り願いますとまで言われる始末
である。
 まぁ、当然と言えば当然なのか……
 こうして、(らく)は晴れて日本メイド協会に認められ、名乗ることを許され、ホワイトブリムを着用することも許さ
れたのであった。


END

前の話へ 戻る 次の話へ