Eighter -Practical Era-
30ther 〜品辛斬子(ぴんから・きりこ)の見合い C〜



#5
 見合いに出たくないとゴネる子供な先生、品辛斬子(ぴんから・きりこ)……そして、彼女の身がわりとして白羽の矢が立ったのはク
ラスのメイドでお馴染み(なのかどうかは不明だが……)の櫟木樂(いちい・らく)
 最初は渋っていた彼女も和装メイド服を見た途端コロっと態度を変えるのであった
 そんなにその(コス)着たかったの?

 天四斗(あまよと)、某所

 見合いの会場は天四斗(あまよと)で有名な和室カラオケで行われることとなった。
 ここの凄いところはカラオケマシンが全和訳。タイトル、歌手以外の全ての単語を漢字を駆使して表示する特別
製のマシンが見物である。
*「ほほぉう、アンタが品辛斬子(ぴんから・きりこ)か……まぁ、俺はこいつの悪友(ダチ)双次元賢典(ふたじげん・さかでん)って言うモンだ」
 バシバシと肩を叩きつつ豪放磊落に笑う賢典(さかでん)
一同(なっ、双次元賢典(ふたじげん・さかでん)!?)
 陰ながらデバガメしている一行は目の前に居るのが日本で十本の指に入る財閥の一つ、双次元(ふたじげん)財閥の次期当主で
あることに驚きを隠せない
*「い、痛いってば……」
 そして、こいつが本日の主賓。賢典(さかでん)の友人、四十物一瓦(あいもの・いちが)である
双次元賢典(ふたじげん・さかでん)「しかし、写真で見たのとはまるで別人だな、おい」
一同(いや、正しく別人ですから……)
賢典(さかでん)「まぁ、いいや……あとはごゆるりと……」
 そう言うと、賢典(さかでん)はその場を後にする

櫟木樂(いちい・らく)「……」
四十物一瓦(あいもの・いちが)「……」

 そして、迎えしは気まずい沈黙……やはり、学生で見合いの身がわりなど無理だったのか……
 と、思ったら暫くして一瓦(いちが)が口を開く
一瓦(いちが)「……しゅ、趣味は?」
(らく)「メイド」
一同(趣味がメイドって……いや、だからいつもメイドの格好をしているんだろうけど……)
 だからってそんなこと言われてどうすればいいのか……
一瓦(いちが)「……と、特技は?」
(らく)「メイ道を少々……」
一同「……」
 謎の特技、メイ道が登場しちゃったよ……本当にこれ、どうしようって感じだよ……
 ってか、会話のキャッチボールが成り立たない……
(らく)「そちらの特技や趣味は?」
一瓦(いちが)「あ、はい……珠算、暗算、漢検、数検をそれぞれ準一級ずつ……」
 なんかこっちは真面目な特技が出てきたし……
 なお、全て準一級なのは、自分は何事においても一級にはなれないと自負してのことらしいです。
 そんなこと自負しなくてもいいのにね……
一瓦(いちが)「……ええと、趣味は……」
 そこで詰まる一瓦(いちが)。
 しばらく思案した後、彼はこう答える
一瓦(いちが)「……そ、そう……ビデオ観賞……ですね……休日はよくレンタルショップに顔を出します」
品辛斬子(ぴんから・きりこ)「うむ、アレは間違いなくAVを濁して言っているな」
一同(……)
 やめたげて!そんなことを暴露させないで……
 哀しくなる一行であった

#6
*「やぁ、首尾はどうだい?」
一同「ッ!?」
 その時、突如デバガメしている一行の背後からかけられる声……それは間違いなく双次元(ふたじげん)財閥の次期当主、
双次元賢典(ふたじげん・さかでん)のものだった
一同「なっ、ななっ……」
 大声を出すとヤバイ……だからなんとか努力して声を出さないようにするが、動揺は隠せない……
賢典(さかでん)「まぁ、安心しろ、俺も、仕掛け人の一人だ」
一同「へ?」
 いや、一体どういうこと!?ちっとも安心できないんですけど……
斬子(きりこ)「つまり、お見合いドッキリって奴だ」
 アンタら何やってんだよ!暇か!
賢典(さかでん)「あいつは昔から俺が女遊びに誘っても一行に乗ってこなくてホモなのではないかと疑ってしまう位なもんで
悪友(ダチ)としては心配なんだよ」
 そして、ゆっくりしていった結果がこれだよ……と言わんばかり
賢典(さかでん)「このままではイカン……と思ったからこそ、今回の企画にノったわけだ」
生徒「マジで何やってんですか、アンタ」
賢典(さかでん)「……いや、斬子(きりこ)のアネゴには逆らえない……」
一同「……」
 力の上下関係……
樫木堅(かしぎ・けん)「じゃ、あれですか……見合いしろとか言われてたのも嘘だってことですか?」
斬子(きりこ)「見合いなんて嘘に決まっているだろ、ウチは放任主義なんだよ」
 ンなこと知るか!と一行
斬子(きりこ)「まぁ、虫の居所が悪かったのは確かだが……」
 イライラだけは本物かよ……タチが悪い……
斬子(きりこ)「まぁ、そろそろドッキリもクライマックスだぞ……」
一同「え?」

 斬子(きりこ)がそんなことを言うので一行は再びデバガメに戻ると……

風見原莉暗(りおん)「そこの漢……私は教育委員会の者だ!」
一同「ええ!?」
 なぜか教育委員会にその人ありと謳われているGTRがそこにいた
一瓦(いちが)「なっ……なんですか、貴方は……」
莉暗(りおん)「アンタが未成年の婦女子を見合いとかこつけて手籠にしようとしているのは明白な事実……」
一瓦(いちが)「はぁ?何を言って……」
莉暗(りおん)「トボけても無駄だぞ……」
 ……と、いうか、最早あれは教育委員会の者じゃなくて、警察の者じゃないのかね?
斬子(きりこ)「よし!今だ!」
賢典(さかでん)「おうともよ!」
 そして、今がころ合い!と斬子(きりこ)賢典(さかでん)はドッキリと書かれたプラカードを掲げてダバっと出現する
斬子(きりこ)賢典(さかでん)「ドッキリ大成功!」
一瓦(いちが)「はい!?……へ?……ええ!?」
 唖然騒然呆然……最早何が何だか……
賢典(さかでん)「おいおい、そこは後ろからハメられた!とか叫ぶところだろうが」
※下品すぎる!
斬子(きりこ)「でもって、私が本当の品辛斬子(ぴんから・きりこ)だ!」
一瓦(いちが)「じゃ、彼女は一体誰なんだぁ〜〜〜!」
 そりゃそうだよね……そうなるよね……

#7
 こうして、斬子(きりこ)プレゼンツの見合いドッキリは成功を納めることとなった
 いや、ドッキリ仕掛けられた方はたまったもんじゃないけど……
 と、いうか、こんなことをやったら余計に女性と会話しなくなるんじゃないか?こいつ……
斬子(きりこ)「よし、折角だからこれからお前の趣味というビデオ観賞をみんなでやろうか」
一瓦(いちが)「やめてっ!それだけはやめてぇ〜〜〜」
 和室に一瓦(いちが)の悲痛な叫びが谺する……
 と言うか、仮にも未成年な一行を巻きこんで青年向けの映像を見せようとするなよ、そこの教師

 ……そして、この件がきっかけで一瓦(いちが)はますます女性と疎遠になってしまうのだが、それはまた別の話である
※駄目にも程がある!


END

前の話へ 戻る 次の話へ