Eighter -Practical Era-
24ther 〜マイルドに闘王を D〜



#7
 ある日、斬子きりこの思いつきから唐突に始まったサバイバルゲームと言う名の疑似殺し合い……
 まぁ、そんなことはおいといて(おいとくのかよ)南と夏……二人の因縁に終止符が打たれるときはくるのか?
楠木南「くっ……やるじゃないの……」
 一瞬力を抜くと同時に瞬時に後ろへと飛んで距離を置く南
榎木えのき夏「楠木家のように古くから武術を継承する歴史ある武術に対抗するにはこっちも同じ様なコトをすればいい
ってことよ」
南「……夏殷流刀鞘術かいんりゅうとうしょうじゅつ……」
夏「そう、この夏殷流刀鞘術かいんりゅうとうしょうじゅつは古くは夏王朝、殷王朝の時代から続く刀を用いた剣術!」
生徒一同「いやいや、楠木家に比べたら歴史ありすぎだろうが!」
 思わず突っ込みを入れる生徒一行であった。
ユリア・キドニー「夏王朝、殷王朝の時代の中国に刀があったことに驚きですね!」
生徒一同「……」
 ユリアの素朴な発言に一同絶句。
 確かによくよく考えてみるとそんな古代の中国に、なぜ湾刀が出てくるのか……
 『夏王朝、殷王朝の時代から続く刀を用いた剣術』なんてのは絶対嘘っぱちではないのか?そんな疑問がぐるぐ
ると一行の頭をよぎるのであった。
夏「ま、まぁ、勝負は勝てば官軍、負ければ続編ってね」
 ……それは負けたら勝つまで何度でも続けるってことなのか?
 そんなんでいいのか?
夏「じゃんじゃんいくわよ、南」
 木刀を突きつけて宣言する夏
南「楠木家の名に懸けて……討ち破って見せるわ!」
 ここでも、負けられない闘いが……始まった

夏「黎月れいげつ」
南「飛反双捌輪ひたんそうはつりん」
 ガガンッ
 弧を描いて迫る一閃に対して連撃にて応じる南
夏(一撃では敵わないと悟って連撃?)
 それはつまり、今ならば夏に分があるということか……しかし、それで戦局を覆せるほど楠木家は甘くはない
夏(……手の内が全て暴かれる前に決着をつけるしかない……か……)
 即効で南を畳みこむしか手はない……そして、南に一矢報いるのだ
夏「行くわよ、南!夏殷流刀鞘術かいんりゅうとうしょうじゅつ……幻晶銀冽げんしょうぎんれつ」
南「飛反井剪輪ひたんじょうせんりん」
 ズドオンンッ
 上段からの斬り下げ……その刃目掛けて瞬時に二度の十文字斬りを繰り出す南
南「なっ!?」
 しかし、幻の名は伊達ではない……夏の放った斬撃……その刃へ攻撃は手ごたえがなかった
夏「かかったわね!南」
 すぱぁ〜〜んっ
 木刀を逆手に持って一気に斬り上げ、南の木刀を弾き飛ばす夏
南「しまったっ!」
 そして、非情にも振り下ろされる木刀……を真剣白刃取りする南
夏「流石に……」
南「ま、まだ勝負はこれからよ!」
 ばしゃっ
品辛斬子ぴんから・きりこ榎木えのき夏リタイア」
一同「え?」
 しかし、唐突に告げられた敗北宣言に一同びっくり

#8
夏、南「ちょ、どういうことよ?」
 南もだが、それ以上に納得がいかないのは夏である。
斬子きりこ「うん、誠に残念だが、夏……お前はあそこで醜い争いを繰り広げているバカどもの流れ弾に当たったんだ」
 なお、その馬鹿どもというのは言うまでもなく、姉派筆頭の楯木てすりぎ盾、妹派筆頭の杭木こうの二人である
夏「……」
 先ほどの水音……あれはペイントボールがヒットした音だったのだ
夏「そ、そんなぁ……」
 がっくりと項垂れる夏の肩をポンと叩く心
テ金しんかね心「あとはお姉さんに任せなさい」
 いや、アンタは私の姉じゃないし……という気力もない夏であった
心「さて、では、次は私が相手だ……」
南「……ええと……」
 夏なら気心も知れてるし、自他共に認めるライバルだからこそ、あんな勝負ができた……しかし、生徒会長を相
手にさっきと同じことができるかと言われると……
心「はっはっはっは、心配は無用だよ……先ほど我が妹、夏の動きを見て大体夏殷流刀鞘術かいんりゅうとうしょうじゅつはマスターした」
 だから、夏はアンタの妹じゃねぇよ!と心の中で盛大に突っ込む一行
 そして、そんな程度でマスター出来る代物じゃないでしょ……
心「例えば……黎月れいげつ」
 弧を描く一閃を放って見せる心
夏「嘘っ……」
 それを見て驚くのは夏。
 さもありなん。夏殷流刀鞘術かいんりゅうとうしょうじゅつの太刀筋が完璧に再現されており、しかも、夏よりもレベルは上……そう感じる一
撃だったからである
 ……そう言えば、この人、前に巫山戯ふざけた卓球の技を一目見てコピーしていたし……本当に一体何ものなんですか
ねこの生徒会長……
南「……夏との決着はイマイチ不完全燃焼だったけど……いいわ……このまま受けて立つ!」
心「では行くぞ!黎月れいげつ」
南「飛反双捌輪ひたんそうはつりん」
 ガカアアッ
 まるで心は夏の師匠のように、その技のキレは冴えていた……先ほどは同じ技のぶつかり合いで南が競り勝った
が、今回は全くの互角……
南(これは……ヤバイ)
 一瞬でも気を抜くと殺られる……
 それほどまでに油断のならない相手……そして、そのまま両雄は激しいつばぜり合いへともつれ込み。一行はた
だその光景を固唾をのんで見守ることしかできなかった

 ……だが、しかし、勝敗は唐突に決まる……

南「強い……」
 木刀を杖代わりに肩で息をする南
夏「生徒会長があんなに強かったなんて……」
 唖然とする夏。世の中にはまだこんなバケモノがいただなんて……いや、バケモノって……
心「……おっと、しまった!生徒会の仕事の時間が来てしまった……はっはっはっは……すまないが、私はここで
棄権させてもらう」
一同「え?」
 そう言うと心はすたこらさっさとその場を後にするのであった
※『すたこらさっさ』って……

#9
斬子きりこ「と、言うわけで第一回殺し合いの勝者は南だ!」
一同「ええ?」
 そして、更に続けて宣言する斬子きりこの発言に驚きを隠せない一行
生徒「いや、どういうことなんですか?」
斬子きりこ「見ろ、あそこの馬鹿どもを!」
 と、斬子きりこが指差す向こうには……姉萌えVS妹萌えの譲れない想いを胸に醜い闘いを繰り広げていた馬鹿二人の姿
があったのだが……双方ペイントボールでべっしょりと塗装されていた
斬子きりこ「あの馬鹿どもは人知れず相打ちとなり、助っ人の生徒会長は棄権……」
 と、なればもう、生き残ってる(いや、みんな死んだわけじゃないけど……)のは南のみ
斬子きりこ「と、言うわけで、よって、これから姉派を正当な派閥とする」
杭木こう「な、何だってぇええ〜〜〜〜!?」
 こうの叫びが虚しくグラウンドに谺するのであった
斬子きりこ「ちなみに、第二回も開催予定だからな、みんな期待して待っているように」
一同「もうやりたくねぇ〜〜〜!!」
 魂の叫びであった……


END

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