Eighter -Practical Era-
19ther 〜厨二病でもシたい A〜



#0
 厨二病……それは現代医学では治せない不治の病(笑)
 治療方法は時間、時がたてばいずれ、恥かしさのあまり死にたくなるという二次被害があるのが特徴(爆)
 そして……

#1
 東京都、日本武道館
 どどん!とステージの上に立つのは右手を包帯でぐるぐる巻きに、左目に眼帯をつけたゴシック衣装の少女
*「くっ……」
 突如歯を食いしばって左手で右手を抑えてその場に頽れる彼女
 しかし、別に彼女は腕が物理的に痛いわけではない
*「今宵も私の右腕に封印した《闇の力》が暴れ回っている……」
 彼女は厨二病……そして、職業:アイドル
*「歌って吼えろと轟き叫ぶ!」
 彼女の名前は……幕辺まくべぼとる
幕辺まくべぼとる「行っくよ〜、みんな、今日もついてきて」
一同「ウォオオオ〜〜〜!……バニッシュメント・ディス・ワールド!」
 そんな彼女のコンサートは今日も大盛況であった……

 控室にて……

*「今日のコンサートも大盛況でしたね」
ぼとる「……」
 彼女のもとにやってくるのは彼女のマネージャーにして彼女をアイドルへと導いた張本人、乃壷蔵院のつぼ・くらいんである
ぼとる「違う……」
乃壷蔵院のつぼ・くらいん「え?」
ぼとる「足りない……何かが足りない……くっ、封印したはずの私の《闇の力》が蠢きまわっている……」
 またしても左手で右手を抑えてオーバーリアクションでブルブルガタガタ震えだすぼとる
 周りのスタッフからは、また始まったよ……いつもの発作が……ともはや飽きられている……いや、色々と物事
を諦めているこの風景であるが、マネージャーの蔵院くらいんだけが真摯になって受け止めている
蔵院くらいん「ま、まさか、左目に封印されているはずの《魔の力》が蠢く《闇の力》に影響されて?」
ぼとる「……くっ、三日前に封印を掛け直した際、不十分だったのか……」
 そのまま左目を押さえるぼとる
蔵院くらいん「ならば、今、この場で再び聖なる枷にて再封印を……」
 そういって蔵院くらいんはジャケットのポケットから新しい眼帯を一つぼとるに差し出す
 そう、何を隠そう、このマネージャーもかつては厨二病罹患者……いや、今もなお厨二病罹患者である。
 だからこそ、彼女の厨二病に付き合っていられるのだ。
ぼとる「いえ、それだけではまだ足りないわ……」
蔵院くらいん「な……で、ではどうすれば……」
ぼとる「慌てないで……貴方は私と志を同じくするエージェント……ならば、分かるはずよ、私に足りないモノが
何であるか……」
 ……常識じゃね?とかみんなが思っている中、蔵院くらいんは叫ぶ
蔵院くらいん「学園生活ですね!」
ぼとる「そうよ……って、え?」
 マネージャーの言葉に厨二病も忘れて、眼をぱちくりとするぼとる
蔵院くらいん「任せてください、かのもう一つの人格をカードから呼び起こすアイドルも一時期アイドル活動をやめ、学園
生活に従事しておりました」
ぼとる「……ええと、誰?」
蔵院くらいん「そして、あなたの実家は豆腐屋……これはまさに神の啓示……雲の彼方に!」
 その後、ぼとるを放置して蔵院くらいんの話はズカズカと進むのであった

#2
 天四斗あまよと天四斗あまよと工業、3-J
品辛斬子ぴんから・きりこ「あ〜、というわけだ……今日からウチの女子生徒に手を出して懲戒免職処分になった壬屈縛紀みかがみ・しばきに代わり
乃壷蔵院のつぼ・くらいんが教育実習生としてみんなを指導する、みんなよろしくやってあげてくれ」
壬屈縛紀みかがみ・しばき「だ〜〜、まだ手を出してねぇ!」
 無茶苦茶な紹介をされて黙っていられないのは当然、当事者たる縛紀しばき
縛紀しばき「大体、ちゃんと見つからないように細心の注意を払うっての!」
一同「え?」
 こいつ、ヤる気か!?
斬子きりこ「冗談だ……まぁ、お前も高校教師に憧れて教師を目指しているのなら、生徒に手を出して志半ばで逮捕され
るというのもまた一興だろ」
縛紀しばき「一興じゃねぇ!」
蔵院くらいん「……あ、あの……」
榎木えのき夏「……ま、まぁ、この人はいつも大体そんな感じなので……」
蔵院くらいん「なるほど……理解しました……」
一同「え?納得しちゃうの?」
斬子きりこ「それからもう一人、転校生を紹介する」
ユリア・キドニー「はい、私、サザン・オルステラ皇国から来ました」
一同「アンタの紹介はこの前やったでしょ!」
 転校生と聞けば黙っていられないキドニー(なぜ?)が突如席を立って周知のことなのに自己紹介をしだす
ぼとる「なるほど、あなたが、あの南を崇拝する国家より来りしサーヴァント」
 そして、紹介もされてもいないのに教室に入ってきて語りだすぼとる
ユリア「あなたは……」
ぼとる「北より、死を告げに……」
ユリア「ッ!」
メイド「お嬢様、お気を付け下さい……あの右腕の包帯、そして左目の眼帯……かなりの修羅場をくぐり抜けて学
園生活に辿りついたツワモノとお見受けします」
ユリア「それは、油断ならないわね……」
 ……ってかアンタらも厨二病のケがあるんじゃないかね?
生徒「先生……ええと、彼女は?」
斬子きりこ「うむ、彼女は……」
 紹介しようとした矢先、ぼとるが天四斗あまよとのDr.キリコこと斬子きりこを見てふるふると首を振る
斬子きりこ「……天四斗あまよとが誇る豆腐問屋、煮降蔽霧ニブルヘイムの跡取り娘、椛木もみじ花だ」
 ここではアイドルであると明かしてはならぬ……それを知っている斬子きりこは咄嗟にでっち上げた嘘をつく
※ってか豆腐屋の名前が『煮降蔽霧ニブルヘイム』って……
斬子きりこ「彼女はこれまで実家の豆腐屋経営で忙しくて学校に来れなかったそうだ」
 そして、彼女の腕の包帯や眼帯は彼女の豆腐道を極める激しい修行の際に付いた名誉の傷だ!とか言い出す
一同「な、なるほど」
ユリア「豆腐作り……それは極めて険しい道なのですね」
椛木もみじ花「ええ、そうよ、豆腐は一日にして成らず」
 いや、まぁ、確かに一日で豆腐は作れないかもしれないけど……
 まぁ、ともかく、こうして、厨二病でも学生がしたい……彼女の学園生活が始まった


続

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