Eighter -Practical Era-
14ther 〜科学者はときに笑う C〜



#5
 裏世界の秘密結社、紅キ翼ヴァーミリオンウィング……そこからの魔手は天蓋てんがいあだの前に砕け散る……
 そして……
一同「ってか、なんだそのアイマスクは!」
 当然、紅キ翼ヴァーミリオンウィングの一行も彼女の『はたらかない』と書かれたアイマスクに注目する
※そもそも、こんなアイマスクしていてよく周りを把握できるな……という疑問が出てくるんだが……
 と、いうか、このアイマスクってもしかして、変装のつもりなのだろうか……
 と、いうことは、彼女は天蓋てんがいあだでも有名な存在なのか……
天蓋てんがいあだ「こいつは返すぞ」
 そのまま柴を放り投げる天蓋てんがいあだ。
 どうにかこうにかそれを受け止める下っ端
所興信さきのぶ「フッ、柴を斃しただけでいい気になってんじゃねぇぞ!」
 者ども、やっちまえ!と興信さきのぶが叫ぶと、おお!と叫びと共に襲いかかる紅キ翼ヴァーミリオンウィングの一行
天蓋てんがいあだ「フッ」
 ドドドドドッ
一同「ガハアアッ!」
興信さきのぶ「馬鹿なッ!」
 しかし、勝負は一瞬で終わった……
 勿論、天蓋てんがいあだの一人勝ちである。
 彼女は微動だにせず迫る魔手を一掃した。いや、迫る紅キ翼ヴァーミリオンウィングの一員一人一人に対して真正面に向きあうような形
で全てを駆逐したので、微動だにしなかったというのは語弊があるかもしれない。
※なお、なぜいちいち向きあってから駆逐したのかというと、誇り高き性格故……正々堂々と真正面から闘いを挑
 むのが天蓋てんがいあだの特徴だからです。天蓋てんがいあだに背後から不意打ちを行うような卑怯な輩は存在しないのだ。
興信さきのぶ「まっ、まさか……貴様」
 まるで誇示するかの如くピコッと揺れる二本のアフォ毛を見て、流石に興信さきのぶも彼女の正体を見た
*「し、知っているんですか?」
興信さきのぶ「奴の二本の触角の様なアフォ毛……見間違えるはずもない、天蓋てんがいあだ」
一同「なっ……」
 唖然とする一行。
興信さきのぶ(クッ、天蓋てんがいあだが相手となると……)
壬屈縛紀みかがみ・しばき「フッ……ハハハハハ」
南「あ、先生」
 その時、突如笑い出す縛紀しばき
興信さきのぶ「黙れ、貴様、何が可笑しい?」
縛紀しばき「どうやら、お前たちの悪行もここまでのようだな……」
 天蓋てんがいあだ……その力を知っているからこそ、もはや、紅キ翼ヴァーミリオンウィングに勝ち目はない……
 だから、自然と笑みがこぼれてしまう
興信さきのぶ「……黙れッ!」
*「で、ですが……」
興信さきのぶ「静まれ……」
 動揺する幹部や下っ端を一喝
 彼の一言でしんと静まり返る一行
興信さきのぶ「……よかろう……天蓋てんがいあだ……貴様を斃して、人類の底力を見せてやろう!」
天蓋てんがいあだ「その意気やよしっ!」
 そして、激突する両雄……

#6
縛紀しばき「いや、助かった……ありがとう……」
 全てが終わり、解放される縛紀しばき。
 ……そう、先ほどの興信さきのぶ天蓋てんがいあだとの一騎打ちは所謂良い勝負などではなく、一蹴された有象無象らと同じく
瞬殺だったのだ。
 そうして、天蓋てんがいあだの前に壊滅となった紅キ翼ヴァーミリオンウィングのアジトを後にする一行……
南「ってか、なんで裏世界の人間に目をつけられていたんですか?」
縛紀しばき「それは……だな……」
天蓋てんがいあだ「……」
白拍子かんな「彼がタイムマシンの開発者だからです」
南「って、かんな?」
 唐突に何の前触れもなく参上し、サラっと今回の事件の全ての発端をその超運にて知らしめるかんな
南「タイムマシンって……」
天蓋てんがいあだ「その腕時計の様なモノのことだ」
南「え、これ?」
 そして、縛紀しばきの左腕の無駄に分厚い腕時計を注視する南
縛紀しばき「……流石は運の女神と言うべきか……私のあの言葉の真意を悟っていたか……」
南「あの言葉の真意?」
かんな「『これは時計』って件です」
 ああ、何言ってんだ?コイツって空気になったあの件?と南
南「でも、なんで?」
天蓋てんがいあだ「はっ!そういう……」
南「うわっ、びっくりした……」
 その時、突如天蓋てんがいあだが何か気付き大声を上げる
かんな「ええ、そういうことです」
南「いや、どういうことなの?」
 置いてけぼりの南はどうにか答えを知りたくて問いかける
かんな「あの言葉は愚かな翻訳だったってことですよ」
南「愚かな……?」
天蓋てんがいあだ「つまりだ、タイムマシンを愚直に翻訳すると時計ってことだな……」
南「……」
 た、確かに『タイムマシン』を愚かしく、馬鹿馬鹿しく翻訳すると『時計』になるけど……
 おそらく『タイムマシン』という名称がいけてないのだろう……『タイムリープマシン』とかもっと誰が聞いて
も間違いの無い意味合いの名称にするべきだった……
天蓋てんがいあだ「さて、私の目的は、そっちが本題だ」
 しょうもない空気で凍りついたのも束の間、天蓋てんがいあだが真面目な面差しで縛紀しばきに迫る
※いや、アイマスクしていたら真面目な面差しかどうかなんてわからないじゃないか
縛紀しばき「ど、どういう……ま、まさか、アンタらも紅キ翼ヴァーミリオンウィングと同様に……」
 軽く後退る縛紀しばき天蓋てんがいあだかぶりを振りこう告げる
天蓋てんがいあだ「いや、それはまだこの時代にあってはならない代物……」
 だから、我々が預かる……と天蓋てんがいあだ
 確かに、縛紀しばきがタイムマシンを所持している限り、今後も紅キ翼ヴァーミリオンウィングのような輩が出現するだろう……そして、非力
な彼にはその魔手からタイムマシンを護り抜けるとは思えない
 だが、人知を超えた力を有する天蓋てんがいあだならば……
縛紀しばき「……分かった……このタイムマシン……天蓋てんがいあだに託そう……」

#7
 こうして、今回の事件は人知れず終了することとなるのだった……

 後日……
 天四斗あまよと工業、3-J

縛紀しばき「あ〜〜、先日は一身上の都合で教育実習をボイコットしてすまなかったが……」
品辛斬子ぴんから・きりこ「何だお前……勝手に学校に入ってくる奴があるか」
 まるで不審者でも見るかのごとくジロジロと縛紀しばきをみる斬子きりこ
縛紀しばき「え?あの……」
生徒「先生、こいつ、誰ですか?」
 更に生徒までも……
斬子きりこ「知らん」
縛紀しばき「いや、知らんって……教育実習生の壬屈縛紀みかがみ・しばきですよ」
斬子きりこ「はぁ、そんな奴いたか?」
生徒「知らないです」
縛紀しばき「なっ、どういう……はっ、まさか……」
 ……この漢、何を隠そう、タイムマシンで過去を変えて教育実習生というていで天四斗あまよと工業にやってきたのだ
 ……だからこそ、教師陣はあまり、彼の素生を知らなかったのだ……
 そして、タイムマシンが天蓋てんがいあだに管理されたことによって……いや、天蓋てんがいあだが律儀に過去の改竄を戻してし
まったがために、今の様な状況に陥っているのだ
斬子きりこ「不審者はとっとと帰れ……」
縛紀しばき「……」
 やっぱ、タイムマシンで過去を改竄しちゃダメですね……


END

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