Eighter -Practical Era-
12ther 〜刃に秘めたるはおもい D〜



#7
 剣術の砕天さいてん、天下布武杯もいよいよ最終決戦……
 決戦の場には南、夏、すすきの三人が残り……そして……
榎木えのき夏「行くわよ、すすき、そこから右へ五歩ほど前!」
鋩金芒ほこかね・すすき「え?え……」
楠木南「あ、駄目駄目、そこから一時の方角へ……」
すすき「一時の方角って……」
夏、南「ドンピシャ!」
 ズドンッ
すすき「あうっ」
一同「……」
 どっちの命令に従えばいいのか分からず困惑するすすき。
 それは彼女に致命的な隙を与え、そして、そんな隙を逃す程夏と南は馬鹿ではない。
 二人の一撃が今度はすすきに襲いかかったのだ
白拍子かんな「……やっぱり、こうなっちゃうんですね……」
 そして、それはかんなが超運で察知した通りの結果であった。
織田かずさ「おおっと、セクハラ攻撃に屈しない鉄の女、リタイアです!」
 ……そう、南も夏も最初からすすきを助っ人として扱うつもりなどなかったのだ……えいぷを偶然倒してしまった時
に、すすきからの妨害を鑑みて先にすすきを倒してしまおうと考え、両者共にそれを実行に移したのだ。
 なんて非道なサブヒロインであろうか……
※どこぞのサバイバールゲーム部に所属するヒロイン位にド外道ですね……
夏「南!これで邪魔者はいなくなったわ!」
南「ええ、そうね……じゃ、ここからが本番よぉ!」
夏、南「いざ、尋常にぃ……」
 ドッ
 そして、両者一足飛びに襲いかかる
南「はああっ!結蜻蛉むすびとんぼ」
夏「なんのっ!鎧袖一裁がいしゅういっさい」
 南の横薙ぎを夏が斬撃で受け流す
夏「はあっ!」
 そのまま懐に飛び込んで斬撃を見舞う夏
南「結蜻蛉むすびとんぼ・上座」
 ザザザザザザッ
 しかし、それを見据えていた南は再び薙ぎ払うと共に後方にひとっ飛び
夏「くっ……さすが南……私が認めた永遠のライバルなだけはあるわね!」
南「そういう貴方もね……」
 だからこそ、今日こそ決着をつける!
 と、両雄は再び激突
夏、南「はあああああっ!」
 ドドドドドドドドッ
 何度もぶつかり合う湾竹刀と竹鉾しなむ……
織田かずさ「こ、これは凄い……」
徳川りりか「両者、実力伯仲……」
 どっちが勝って、どっちが負けても怪訝おかしくはない状況……
羽柴えいぷ「すご……」
 真っ先に敗退して運営本部に戻ってきたえいぷも思わずそんな感想を口にする
南「結蜻蛉むすびとんぼ矯角きょうかく」
夏「鎧貫一穿がいかんいっせん」
 互いに刺突を繰り出す両雄、そして、きっさき同志が激突する

#8
一同「ああっ!」
 そして、激突の結果、互いの得物が吹っ飛ばされる
杭木亢くいぎ・こう「盾、あぶねぇ!」
楯木てすりぎ盾「え?」
 ドンッ
盾「ゲハアアッ」
 観客席にまで吹っ飛んできた南の竹鉾しなむ
 こうはあたかも盾に注意を促す振りをしてそのまま盾を文字通り盾がわりに竹鉾しなむを防いでみせる
 ……この男もなんだかんだで外道だ
りりか「何と言うことでしょう……激しい激突の結果、双方の竹刀が……」
 と言ってから、片方竹刀じゃなかった……と思うリリか
南、夏「まだよっ!」
 すぐさま夏と南は互いに余所見を……いや、正確には余所見などではない、真っ先に敗退させたすすき、えいぷが残
している竹刀に視線をやっただけなのだ。
 そして、両雄は転がっている竹刀目掛けて猛スピードで突進。
 竹刀を手にするや否や反転して斬撃を叩き込む
夏「はああ!」
南「ええい!」
 バキャアアッ
 二人の斬撃が激突し、その威力に耐えられなかった竹刀が真っ二つに折れる
南、夏「……」
 そのまま無言で折れた竹刀を見つめる両雄。
 やがて両雄は竹刀を投げ捨てて拳を構える
夏「やっぱり、最後はこれで決着をつけるわけね」
南「ええ、そのようね……やっぱり、最後は拳で……」
夏「行くわよ、南……今日こそはあなたに勝つ!」
南「私は楠木家の末裔として勝たねばならない……」
 そして、始まるのは激しい殴り合い……
 まぁ、激しい殴り合いといっても男性同志のリアルファイトみたいな感じじゃなく、女性同士のキャットファイ
トなのですが……
 そして、キャットファイトに相応しく夏、南の背後には猫のビジョンが……
 いや、それだけではない、なぜかその猫の背後にはシュレディンガの文字まで見える……
※ってシュレーディンガーの猫って……それ、違う!
南「はあっ!噴流灼弾ふんりゅうしゃくだん!」
 南の右の掌打が夏に迫る
夏「ふふん」
 だんっ
 襲い来る南に対し、踏鞴たたらを踏み、畳返しを繰り出しそのまま盾がわりに
夏「これで、終わりよ!」
 そして、南の背後に回ってからの殴りこみ
南「ま、まだよ!」
 ガッ
 しかし、片足上げて蹴りにてそれを防ぐ南
夏「くっ……」
 流石南、一筋縄ではいかないわね……と夏
 そのまま距離を置いて体勢を立て直そうとするのだが
南「これで決まりよ!亡霊蹴屠ぼうれいしゅうと」
 一瞬の隙をついて南がジャンプからの蹴り降ろし
夏「そんなもの、当たるわけないでしょ!」
 しかし、それを回避して見せる夏
夏「南、今度こそ終わりよ!」
 攻撃を終えた瞬間こそ最大の隙が出来る……夏はここで全てを決めるべく殴りにかかる
 ドカッ
夏「へぐっ?」
 しかし、畳が飛んできて夏を直撃……そのままノックアウトされてしまう夏
一同「……え?」
 一体、何が起こったのか分からず、困惑する一行……そんな中、南が勝利宣言を行う
南「たった今から楠木流の蹴りは隙を見せない二段構えよぉ!」
 蹴りの一撃で畳返しを行い、その畳をミサイルの如く夏に叩き付けたのだった

#9
かずさ「ゆ、優勝者、楠木南」
一同「お〜〜〜〜!」
 ……こうして、大盛況のまま天下布武杯はその幕を閉じることとなった
品辛斬子ぴんから・きりこ「よし、見るモノも見たし、帰るぞ……撤収!」
一同「え?」
 でもって、勝利の余韻に浸っている暇もなく、先生の鶴の一声で天四斗あまよと工業一行はすぐさま帰路につく羽目にな
る。
夏「……つ、次は負けないんだから!」
南「その挑戦、受けて立つわ!」
 ……夏と南……二人の決着はこれで終わりなんかではなさそうだ……


END

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