Eighter -Practical Era-
11ther 〜心に秘めたるは刃 D〜



#7
 剣術の砕天さいてん、天下布武杯……それは、剣客のフロンティア……
 夏と南はその威信をかけて(?)この大会に……剣道部の助っ人として馳せ参じたのだった……

 予選Dブロック決勝

 春夏秋冬きっての武闘派たる夏はその能力をいかんなく発揮し、遂に予選トーナメントDブロックの決勝戦まで
勝ち進むことに成功したのである
榎木えのき夏「いよいよ決勝戦……待ってなさい、南、今、駆けつけるわよ!」
 ビシっと湾竹刀を突きつけて宣言する夏
*「ふふん、あなたの快進撃もそこまでよ!」
夏「あなたが……」
 そこへ現れたるは浅葱あさぎ色にだんだら……そして誠一文字の書かれた羽織りを着た女性
夏「新撰組ファンってわけ?」
*「そんなわけないでしょッ!私は永倉新三……新撰組、二番隊組長の永倉新八の末裔にあたるものよ!」
 竹刀をビシっと突きつけて宣言する新三
夏「なっ、新撰組の子孫ってわけ?……いいわ、相手にとって不服なし!」
永倉新三「その言葉、後悔しなさい……おりゃああっ!」
 ドドドドドドッ
 ……流石はあの新撰組、二番隊組長の子孫……と言ったところか、彼女の剣腕は冴えていた……
 いや、冴え過ぎて先ほどから南は防戦手いっぱいだった……
 これが、新撰組で屈指の剣腕を誇る長倉家の末裔……いや、もはや、それは長倉新八の再来と言っても過言では
無かった
夏(くっ……強い……)
 ジリジリと追い詰められる夏
夏(だけど、私は負けられない……)
 南との約束……いや、確たる約束なんてしてないけど、品辛ぴんから先生が勝手に決めたことだけど、この大会で勝敗を
決する……そのためにはこんな場所では負けられない
夏「そこっ」
新三「むっ」
 夏の適応能力は凄まじかった……先ほどまでは苦戦していた新三の太刀筋を少しずつだが見切り始めていたのだ
新三(この子はぁ……)
 なんて恐ろしい才能……
新三(だけど、遅いッ)
新三「そこまでよ!神道無念流……龍飛絶咬りゅうひぜっこう」
 下段の構えから夏の湾竹刀を切り上げる新三
夏「くっ」
 すぐさま体勢を立て直そうとする夏……しかし、新三の斬撃はそれで終わりでは無かった
 そのまま上段からの斬り降ろしが夏を襲う
夏「えええいッ」
 バシッ
新三「何ですってぇ?」
 新三の斬撃よりも、夏が体勢を立て直す方が早く……そして、更に叩き込まれる斬撃
 竹刀と湾竹刀とが激突する
夏「これで終わりよっ鎧袖一裁がいしゅういっさい」
 ズダンンッ
 湾竹刀が煌めいたかと思うと次の瞬間、新三が来ていただんだら羽織りがX字に切り刻まれる
新三「うそっ……この私が……」
 夏 VS 新三……ここに決着

#8
 一方、予選Cブロック決勝では……
*「なるほど、あなたが楠木正成の末裔……楠木南ってわけね……」
 先ほどの新三と同じように浅葱あさぎ色にだんだらで背中に誠の一文字の羽織りをはおった女性が南の前に屹立してい
た
楠木南「あなたは?」
*「私は藤堂平乃……新撰組、八番隊組長こと藤堂平助の末裔よ!」
 楠木南、藤堂平乃……先祖が生きた時代は違うが同じ末裔同志……この試合は見逃せないと観客の視線も集中す
る……
南「新撰組……なるほど、その格好、コスプレやイメクラではないってことね!」
※普通そこは『伊達や酔狂』って言うところだと思うけど……
藤堂平乃「……見なさい私の竹刀……日本最高級の竹を惜しみなく使って作らせた世界に二つとない高級品よ」
 見せつけるかのごとく自分の竹刀を誇示する平乃。
 その竹刀は通常の竹刀のような黄土色をした竹刀ではなく、まるで青竹の如く瑞々しい緑色をしていた。
平乃「さらに、この竹刀は上総介兼重かずさのすけしげかねの総力を結集して作らせた至高の逸品……正しく天下布武杯のための竹刀と
言っても過言ではないわ!」
 ……刀鍛冶も何が哀しくて竹刀を造らなきゃならんかったのだろう……とそんな思いが会場を支配するのだが、
ガン無視する平乃……この女、なんて女傑だ。
平乃「さぁ、いざ尋常に……」
南「勝負ッ!」
 両雄咆えると同時に一足飛びにかかる……そして、南の竹鉾の打ち下ろしと平乃の青竹刀の横薙ぎとが激突する
南「やるじゃない……でもっ」
平乃「いや、甘いよ!」
 そのまま力任せに押し切ろうとする南だったが、平乃の青竹刀は予想以上によくしなり竹鉾を受け流す
平乃「喰らえ!」
 青竹刀をしならせた状態から一気に解き放って南に斬りかかる平乃
南「くっ……楠木流……結蜻蛉むすびとんぼ」
 竹鉾を横に薙ぎ払うと同時に持ち手を柄尻までスライドし、広範囲を撃ち払う南
平乃「うっく……」
 のけぞるような体勢でそれを回避する平乃
平乃(流石は楠木の末裔……一筋縄ではいかないわね……)
平乃「でも……」
 巨大な兵器は威力が絶大だが反面隙が大きい……この勝負、もらった!と平乃は一気に間合いを詰める
平乃「これで終わりよ……虎潜砕爪こせんさいそう」
 上段から一気に斜め下に斬り降ろし、そのままそこで暫し停止した後に斜め上に斬り上げる平乃。
 それは動作だけ見れば見ればナントカVの字斬りであった
平乃「決まった!」
南「残念……」
平乃「なっ、そんな……」
 しかし、南は遥か後方で無傷のまま立っていた
南「楠木流、結蜻蛉むすびとんぼ・上座」
 竹鉾から放つ斬撃の反動で距離を置くヒットアンドウェイの攻撃方法よと南
平乃「……でも……」
織田かずさ「はいはい、勝者楠木南」
平乃「なっ」
 と、そこへかずさがやってきてさらっと勝敗を……
平乃「まだ私は闘える!」
かずさ「そういうことを言う人は大抵もう戦えないのよね……」
 それに……とかずさが指差すと……その先には真っ二つに切り裂かれただんだら羽織りが
平乃「そ、そんな……」

#9
 こうして、夏と南は予選ブロックを制覇し、決勝ブロックへ……
 そういえば、剣道部部長のすすきはどうなったのか……まさか助っ人が頑張っている中敗退しているなんてことは…
…ありえそうで怖いけど……


END

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