Eighter -Practical Era-
11ther 〜心に秘めたるは刃 C〜



#5
 剣術の砕天さいてん、天下布武杯……それは織田上総介かずさのすけ信長にゆかりのある古の剣術大会
 そして、その一大イベントに春夏秋冬きっての武闘派、夏と武芸百般なんでもこなす南が出場することとなった
のだが……
 予選Cブロック
*「……はぁ、まさか、この俺様の最初の相手がこのような小娘とは……」
 ため息もつきたくなるわ……と南を相手に毒づく男性
楠木南「その言葉、後悔しないことね……私は楠木……楠木南よ!……」
*「な、何いぃ……まさか、貴様、あの楠木の……」
 しかし、南が楠木にゆかりのあるモノと判明した途端驚きの表情を見せる
*「馬鹿な……てっきり、ごうさんが出場するかと思っていたが……」
南「それはウチの父……」
 今回は父に代わって私が参加することになったの……と竹鉾しなむを手に南が叫ぶ
*「フ……フフフ……フハハハ……なるほど、貴様はあのごうの娘か……いいだろう、相手にとって不服無し!俺様
は宮本金足かねたり……かの有名な宮本武蔵玄信……の傍流、宮本武蔵小金井の子孫である!」
一同「だから、誰だよ!」
 てっか、こいつもこいつで現金な野郎だよ……ちょっと前までは相手がこんな小娘なんて……て小馬鹿にしてい
たのに、相手が武芸百般何でもこなす楠木の末裔と分かった途端コロっと……
宮本金足かねたり「……貴様にも味わわせてやるぜ!半地全流の恐ろしさをなぁ!」
 先ほどのパチモンが使ってきたのがこれまたパチモン臭い二空一流かと思えば、こちらのパチモンは二天一流を
逆転したかのような字面の半地全流……宮本武蔵の傍流って一体何なんですかね……
金足かねたり「いくぞ!まずは軽く籠手調べ……半地全流、究極奥義ッ!逆燕さかつばめッ」
 ガオンッ
 叫ぶと同時に竹刀で貫きにかかる金足かねたり※ところで、籠手調べとか称して究極奥義を出すのはどうかと思います……
南「甘いッ」
 だが、それを難なく回避する南……
金足かねたり「ハッ、半地全流の剣は隙を見せぬ二段構え……砕け散れぇッ」
 回避できたかに思えた南だったが、しかし、すぐさま切り返しが飛んでくる
南「くっ……なかなかやる……」
 思わずのけぞる南……しかし、手にした竹鉾しなむでキッチリと兇刃を防いでみせる
金足かねたり「ぬぅ……」
※ってか、隙を見せぬ二段構えってどこぞの戦国時代に端を発した一対多に特化した剣術じゃないんだから……
金足かねたり「クッ……流石は楠木の末裔……並の相手ならば、今ので死んでいたはずだ……」
 ってか、殺すなよ……
南「今度はこっちからいくわよ」
 そういって南は竹鉾しなむをまるで小枝のようにぐるぐる振りまわして襲いかかる。
 まぁ、これが実際の鉾ならばなんて膂力りょりょくだ!この女……バケモノか!とかそんな感想が出てくるが彼女が手にし
ているのは竹鉾しなむ……それほどまで重量兵器ではないが……しかし、それでも軽々と扱えるとは流石楠木一族の者と
言ったところか……
南「はっ」
金足かねたり「何のぉ……」
 南渾身の打ち下ろしは、しかし、素早く後方に飛び退り回避される。
金足かねたり「そして……受けて見よ!半地全流、最終奥義ッ!巌衝いわおづくッ」
南「見切ったッ」
金足かねたり「フッ馬鹿め!我が剣は隙を見せぬ二段構えと言ったであろうが!」
 この勝負、勝った!と既に勝利を確信し慢心した金足かねたり……そんな彼の隙をつかないほど南は馬鹿ではなかった
 ドドドンッ 

#6
金足かねたり「馬鹿なぁっ?」
南「そっちが二段構えならこっちは三段構えよぉ!」
 先に二段構えなどと豪語したのはいけなかったのだろう……南にその最大の弱点(?)を付かれ三段攻撃が直撃
 ……こうして、宮本武蔵の傍流の金足かねたりもまた南の前に瞬殺されるのであった……

 一方、予選Aブロック

 ここには皆から忘れ去られた彼女……そう、天四斗あまよと工業剣道部部長の鋩金芒ほこかね・すすきが出場していたのだ……
*「お前は……天四斗あまよと工業剣道部の部長……」
鋩金芒ほこかね・すすき「あなたは……天四斗あまよと商業の……」
*「おうともよ、俺こそは天四斗あまよと商業拳道けんどう部部長、蹴足けそく就!」
 竹甲しなかを両手に装備した男子生徒が声高々に叫ぶ
 ってか、もはやコイツ、剣術使いじゃねぇよ!
※剣道部ならぬ拳道けんどう部って……ダジャレ?
蹴足けそく就「今日こそ貴様と決着をつける時……」
すすき「望むところよ!」
就「フン、良い気になっていられるのもここまでだ……貴様を斃すべく寝る間も惜しんで疾走し風を掴んで編み出
した我が奥義の前に砕け散るがいい!」
 わきわきとイヤらしい手つきの就。
 超速で走っている状態で風を掴むと女性の胸を揉むのと同じ感触が得られるという都市伝説があるそうです……
まぁ、信じるか信じないかはあなた次第ですが……
就「うおおおおっ!」
 俺は、今風を掴む!と豪語しそのまま手をわきわきしながらすすきの胸目掛けて襲いかかる就
 最早レイプ魔にしか見えない
すすき「その腐れ根性、叩き直してやる!」
 しかし、すすきも黙ってはいない。怒りの斬撃が就を襲う。
就「フッ、風を掴むべく日夜修行した俺の握力なめるなよッ」
 グシャアアッ
すすき「なっ?」
 就の黄金の右手(笑)がすすきの竹刀を握りつぶす
すすき「ッ!」
 さしものすすきも恐怖を覚えた……それは好きでもない野郎に胸を揉まれるかもしれない恐怖などではない……
 あの握力では揉まれるどころかもぎ取られる……そのことに恐怖したのだ……
織田かずさ「はい、そこまで!」
 しかし、すすきに救いの手が差し伸べられる
就「何だぁ、貴様、邪魔をするなぁ!」
かずさ「蹴足けそく就……失格」
就「はぁああ?」
すすき「……あ、そうか、相手の竹刀を掴んだら失格ってルールあったんだった……」
就「……嘘だッ!」
 まるでひぐらしが泣くかの如く魂の叫びが会場に谺するのであった……

 ……と、言うわけでセクハラから身を守ることに成功したすすきは次の対戦相手へと進む……
 果たして、本大会、優勝するのは誰だ?


続

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