Eighter -Practical Era-
10ther 〜君の鐘を鳴らせて C〜



#5
 ある日、天四斗あまよと工業にやってきた謎の女性……彼女は成金の婚約者こと餡銅鑼真曦逅あんどら・まぎあ
 そして、どういったわけかかんなが成金の恋愛のイザコザに巻き込まれてしまうのであった。
白拍子かんな「……」
 とりあえず、茄子ナスと人参とピーマンをトントンと斬って行くかんな
 一方の真曦逅まぎあはというと、パン生地を練りだしていた。
 パンを焼くお嬢様っていうと……どこぞの貴族主義の世界の貴族主義を否定する女性を思い浮かべるなぁ……

 ……まぁ、ともかく、料理シーンはちょちょいと割愛しまして……

かんな「麻婆茄子マーボーナスです」
餡銅鑼真曦逅あんどら・まぎあ「ふふん」
 かんなの作りしは麻婆茄子マーボーナス……対する真曦逅まぎあはというと……餡パンと銅鑼焼き……
 正に餡銅鑼あんどらグループに相応しき逸品であった
メイド「餡銅鑼あんどらグループに全てをアンパンマン、ドラえもんパロディにする魔性の女がいる……その名も『アンド
ラの魔女』……」
一同「……」
楠木南「美味っ……ナニこれ、めっちゃうまい!」
 早速審査……の前にこっそりと南がかんなの麻婆茄子マーボーナスをつまみ食い
※おいおい……
椿木つばき春「え?そんなに?」
 南があまりに美味しそうに食べるものだから思わずつられて春夏秋冬も麻婆茄子マーボーナスの元へ……
成小路金厭かねあき「フッ」
 この勝負かんなが勝った!……成金はその時勝利を確信した。
 いかに真曦逅まぎあがそこいらの料理の鉄人よりも腕前があるとは言え、所詮菓子パン。かんなの作ったメインディッ
シュにかなうはずがないと……
 だが、しかし、成金は甘かった……かんながなぜ運の女神と呼ばれるのか、その由縁を……これから嫌と言うほ
ど思い知ることとなる……
 そして、試食審査……なのだが、なぜか真曦逅まぎあの餡パンには手をつけるが、かんなの麻婆茄子マーボーナスには一切手をつけ
ない名もなきメイド
 でもって、餡パンを完食した後こう宣言する
メイド「この勝負、真曦逅まぎあの勝利です!」
金厭かねあき「何ぃい?」
 かんなが敗北するなどと微塵も思っていなかった成金が思わず声を張り上げる
品辛斬子ぴんから・きりこ「……その心は?」
メイド「実は茄子ナスが嫌いで……」
 そう言いながら名もなきメイドは銅鑼焼きをもぐもぐと食べるのであった
真曦逅まぎあ「まさか、審査員が嫌いな食材を使ってしまうだなんて、どこまで運に見放されていますの?」
 そしてまるで鬼の首級くびでもったかのように真曦逅まぎあが威圧的な態度で声高らかに宣言する
一同(ち、違う……逆だ!)
 だが、この場の他の人物はみな分かっていた、これが……これこそがかんなの超運の賜物だと……
 かんなの超運をもってすれば名もなきメイドが何が嫌いかなどとすぐさま分かる……それを分かった上でかんな
は麻婆茄子マーボーナスを作り上げたのだ。
※どうでもいいけど真曦逅まぎあは運の女神こと、白拍子かんなのことを知らないのだろうか……

 ……なお、ここから先の勝負は割愛しますが、結果だけ言うとかんなの超運によってあたかも死力を尽くしたが
力及ばず真曦逅まぎあが勝利……みたいは判定がバンバン飛び交い、最終的にかんなは無冠の王として有終の美を飾るの
であった

#6
金厭かねあき「馬鹿な……」
 愕然とする成金
真曦逅まぎあ「これで分かったでしょう……貴方如きが私の婚約者を誑かそうなどと十日は早いんですのよ!」
かんな「参りました」
 ……ってか十日って近いな……
金厭かねあき「こ、これは、何かの間違いだ……」
真曦逅まぎあ「さぁ!成小路金厭かねあき様……」
 にじりと成金に歩み寄る真曦逅まぎあ
真曦逅まぎあ「私と……結婚を前提に子作りいたしますのよ!」
 ハァハァいいながら成金に迫る恥女……もとい真曦逅まぎあ
金厭かねあき「く、来るな、ヘンタイ……」
 恐怖に顔をひきつらせて後退る成金
一同「……」
 ……あれ?つい先ほど同じことをかんなに迫ったヘンタイがいた気がする……
 ああ、なるほど、同族嫌悪ってヤツなんですね……
斬子きりこ「よかったじゃないか、成金……こんなに親身に迫ってくれる婚約者なんてそうはいないぞ」
金厭かねあき「当然だ……こんなの二人も三人もいてたまるか!」
真曦逅まぎあ「ほら、窓の外をご覧になって……」
 バラバラバラバラバラバラ……
 その時、ヘリのローター音が近づいてくる
榎木えのき夏「な、何あれ?」
 窓の外を見ると、そこには……ヘリに吊るされた天蓋付きのベッドが……
真曦逅まぎあ「はじめてに相応しき場所も用意してありますの」
 この女ヤるといったらヤる女だ!……目がヤバイ!
金厭かねあき「や、やめてぇええええ〜〜〜せ、せめて屋内でぇえええ〜〜」
 成金、魂の叫びであった
 いや、成金じゃなくともそう叫ぶと思うけど……

 ちなみに、成金の魂の説得により、ヘリに吊るされた天蓋付きのベッドの中で愛の営み……は回避され……
 更にまだ俺たちは学生、結婚するには早すぎる……あとせめて十年位はなどと泣き付いたことにより真曦逅まぎあもこ
の場は折れ颯爽と去って行くのであった……

#7
 ……でもって、後日……

 テ〜レッ……テ〜レッ……テ〜レッテ〜レッテレレレレレレレレレレレ♪
 テ〜レッテ〜レッテ〜レッテ〜レッテッテッテッテテテテテテ、テ〜レッテテ〜レレ〜♪
 今日もドヴォルザークの新世界が冴えわたる……そして……
金厭かねあき「やぁ、かんな……先日はお見苦しいとこを見せてしまったね……だが、心配ご無用、俺が愛するのは世界で
たった一人、君だけさ」
 懲りない男……成金……今日も今日とて薔薇を咥えてかんなを口説きにかかる
南「アンタも懲りないわね……」
金厭かねあき「フッ」
 南の茶々もサラっとスルー……ところが……
夏「ところで、成金、私達最近餡銅鑼あんどらグループのお嬢様とツイッター仲間になったんだけど……」
金厭かねあき「……はい?」
 餡銅鑼あんどらグループのお嬢様と言えば一人しかいない……
南「あんまりしつこいとアンタが『今すぐ籍を入れたいって叫んでる』って呟いちゃうよ」
金厭かねあき「ノォオオ〜〜〜!やめて、それだけはやめて!」
夏「じゃ、分かってるわよね?」
金厭かねあき「……」
 ……かくて、成金は泣く泣くかんなに手を出すことが出来なくなってしまったのであった
 めでたしめでたし
金厭かねあき「マテコラ!ちっともめでたくねぇぞ!」


END

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