Eighter -Practical Era-
10ther 〜君の鐘を鳴らせて A〜



#0
 成小路金厭かねあき……成小路財閥の御曹司で通称『成金』
 自分の野望の為に運の女神を手に入れるべく、日々かんなにちょっかいを出しては南や春夏秋冬に阻まれている
残念な人物である。
 そして、今回はそんな残念な彼に訪れる悲劇の物語……

#1
 天四斗あまよと郊外、成金の屋敷
メイド「郵便だ!」
 凛ッとした格好で腕を組みつつ右手に封筒を持つ名もなきメイド
成小路金厭かねあき「あ、そう……」
 特に何も気にせずその封筒を手に取る成金
金厭かねあき「なっ、こ、これはぁ!」
 それは……所謂貴族社会でしかお目にかかることのできない(?)封蝋のされた手紙であった
 そして、差出人は……
メイド「どうしたんですか?」
金厭かねあき「……や、ヤバイ……ヤバイヤバイヤバイ、ヤバイ……」
 手紙を受け取った瞬間からガクブルしだす成金
 その姿はとても御曹司とは思えなかった。
金厭かねあき「い、急いで対策を講じなくては……俺が……破滅する!」
メイド「な……い、一体その手紙は?」
 しかし、名もなきメイドの声に耳を傾けず、成金はドタバタと貴族にあるまじき走法でその場を去って行くので
あった

 翌日……

 天四斗あまよと工業、3-J
品辛斬子ぴんから・きりこ「あ〜、じゃ、出席でも取るぞ……」
 テ〜レッ……テ〜レッ……テ〜レッテ〜レッテレレレレレレレレレレレ♪
 テ〜レッテ〜レッテ〜レッテ〜レッテッテッテッテテテテテテ、テ〜レッテテ〜レレ〜♪
 例によって例の如く、ドヴォルザークの新世界と共に登場したるは成金こと成小路金厭かねあきである
金厭かねあき「フッ」
 今日はいつにもましてキめているようだが……そこがまた残念御曹司の残念たる由縁でもあった
 と、いうか、はた目から見るとヤバい薬でもキめているんじゃないかと思うほどである
斬子きりこ「はい、遅刻」
金厭かねあき「ちょ!」
 そして、スッパリと切り捨てる斬子きりこ
金厭かねあき「ええい、まぁ、今はそんなことはどうでもいいや……かんなぁ!」
 そのまま叫ぶと同時にかんなの前にやってくる
楠木南「アンタは今日もまた懲りずに……」
金厭かねあき「庶民は引っ込んでろ!」
 クワっと叫ぶ金厭かねあき……その今までにない殺気だった声に流石の南もたじろいでしまう
金厭かねあき「かんな、頼む、一生のお願いだ……俺と……俺と……結婚を前提に子作りさせてくれ!」
一同「順番が無茶苦茶だぁッ!」
※ってかどんなプロポーズだよ!そんなんでOKする酔狂はいねぇよ!
榎木えのき夏「アンタ何トチ狂ってるわけ……」
 痛い目程度じゃすまさないわよと夏が拳をポキパキ鳴らしながらやってくる
金厭かねあき「俺にとっては生きるか死ぬかの一大事なんだ!」
生徒「いや、そんな大げさな……」
金厭かねあき「頼む、この通りだ!まずは子供が出来なくとも肉体関係だけでも……」
 と、土下座しだす成金
 何と言うか、残念というか最低というか見下げた根性であった

#2
椿木つばき春「かんな、こんなの相手しちゃ駄目よ」
 立ちはだかるかの如く春
白拍子かんな「う、うん、別に相手しないけど……」
 土下座された程度で体を許すほどかんなも馬鹿ではない。
 と、その時……
 てぇ〜〜〜れれれれれ、て〜〜れれれれれ〜〜〜♪れ〜〜て、て、て〜〜て、て、て〜♪
 て〜〜ててて〜ててて〜〜♪てれてててててて〜〜ん♪て、てて〜て〜〜♪
 てれてて、てれてて、てれてて、てれてて、ててててててて、てれてて〜〜ん♪
一同「何これ?」
 唐突に流れだすのはガーシュインのラプソディー・イン・ブルーである
金厭かねあき「クッ、奴が……奴が来てしまった!」
楸木秋「え?誰?」
 そして、教室内にやってくるのは……いかにも貴族令嬢といった感じの鳥かごみたいなスカートを履く扇子を片
手に持つ女性
*「はじめまして、私、餡銅鑼あんどらグループの餡銅鑼真曦逅あんどら・まぎあと申しますの。以後お見知りおきを」
一同「は、はぁ……」
 そう紹介されてもどうしたらいいのか分からず一同ぽかんとする
 なお、餡銅鑼あんどらグループとは造船にて財を成した一族であり、日本五大財閥には数えられないが、それに次ぐ財力
や権力を有している
柊木ひいらぎ冬「ええと、その……餡銅鑼真曦逅あんどら・まぎあお嬢様?」
餡銅鑼真曦逅あんどら・まぎあ真曦逅まぎあで構いませんわ」
冬「真曦逅まぎあ……さんは何の目的でここへ?」
真曦逅まぎあ「ええ、婚約者を追ってここまで来ましたのよ」
一同「フィ、婚約者ぇ?」
 そんな中、まるでゴキブリの様にコソコソと静かに這いつくばって教室から去って行こうとする一人の人物……
 無論、成金である
真曦逅まぎあ「御待ちなさいな!」
金厭かねあき「はひぃっ」
 素っ頓狂な声をあげてそのばでビクっとする成金。
真曦逅まぎあ「どこに行こうとしていますの?」
金厭かねあき「……お、俺はお前とは結婚しないからなッ!」
 観念してガバっと起き上がると同時に背中を向けたままそう叫ぶ成金
一同「……」
 成金が唐突にかんなに結婚を申し込んできたのは婚約者に結婚を諦めてもらうためだったようである
※まぁ、それにしても『結婚を前提に子作り』はないよね……
真曦逅まぎあ「何を馬鹿な事をおっしゃいますの?」
金厭かねあき「大体、親が決めた許婚ってのに唯唯諾諾と従うのもどうかと思うんだ!」
真曦逅まぎあ「ああ、あれは嘘ですわよ」
金厭かねあき「なぬぅ?」
 驚きのあまり背中を向けていた成金は思わず振り返り真曦逅まぎあを見つめてしまう
真曦逅まぎあ「さぁ、大人しく私と結婚しましょう……大丈夫、怖くないわよ?」
金厭かねあき「……」
 だが、しかし、成金は再び冒頭の様にガクブルと震えだす……
 一体、二人の間に何があったのか……
 そして、成金はこのまま真曦逅まぎあと結婚するのか……


続

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