Eighter -Practical Era-
9ther 〜誘拐融解うかい C〜



#5
 かんなの力を借りて女学生連続誘拐事件の主犯の元へ単身乗り込んだ南
 しかし、そこには南を圧倒する脅威が待ちかまえていた……果たして……
御手洗華摘みたらい・かつみ「口で言っても分からないようであれば、その身に刻みこむ必要があるな」
中谷なかや健三「先生、やっちゃってください」
 言われなくともだ……と華摘かつみはすっと右腕を天高く掲げる
華摘かつみ劉燬りゅうき」
楠木南「はっ」
 ズドオオンッ
 全てを両断するかのような最上段からの手刀が南に叩き込まれ、彼女のブレザーのボタンがはじけ飛ぶ
 はだけるブラウス……ってか、ブラウスとかブラジャー、スカートまで両断されない辺り、青少年にも優しい安
心仕様の必殺技であった
※いや、安心仕様って……仮に安心仕様じゃなかったらブラジャーどころか本人も両断されるのでは?
健三「なっ、アレをすんでの所で避けただと?」
華摘かつみ「ほう……これは驚いた……」
 愕然とする建造と、顔色こそ変えないものの驚きに満ちている華摘かつみ
南「負けられない闘いがある……そのために私は進む」
 先ほどとはうって変わってただならぬ気配の南
華摘かつみ「な、これは……」
 その気迫に押される華摘かつみ
華摘かつみ(楠木家……その祖は鎌倉時代末期に遡る……)
 そう、楠木正成こそが南の先祖……そして、その武勇は今もなお受けつがれている。
 いや、ここにきて彼女の中に眠る楠木正成の力を覚醒させてしまったのかもしれない……
健三「せ、先生……」
 動かない……いや、動けない華摘かつみを案じて健三が思わず呟く
華摘かつみ「いや、問題ない……むしろ、それでこそ楠木の末裔……」
 その末裔と全力で死合えるとなると気持ちが昂る、昂る……と笑みを隠せない華摘かつみ。
 そして、そんな華摘かつみの姿を見てほっとする健三であった
華摘かつみ「行くぞ、楠木の……我が全身全霊、受けて見よ!」
 そう言って華摘かつみみは左手を前方に突き出し右手を握り弓を引くかのような体勢を取る
南「行くわよ〜」
 南も南で右手を握り、左手に叩きつける構えを取る。
 それは、見る人が見ればこう呼んだであろう……『天帰掌てんきしょう』と……
南「回転衝角翔かいてんしょうかくしょう華摘かつみ手勁弩ディケイド」
 ジャンプと同時に回転を加え、ドリルの様に華摘かつみに貫きにかかる南
 矢を射るかの如く拳を突き出し相手を貫きにかかる華摘かつみ
南「はああああ!」
華摘かつみ「おおおおお!」
 激突する両雄……
南「うぐっ」
華摘かつみ「ガハアッ」
 そして、その激突の反動により双方吹き飛び壁に激突する
健三「せ、先生……」

 暫くの後、先に立ちあがったのは南であった

華摘かつみ「ぐ……こ、これが……楠木か……」
 その言葉を最後に気を失う華摘かつみ

#6
健三「そ、そんな……ま、まさか、先生がヤられるだなんて……」
南「さぁ!次はあなたの番よ……」
楸木ひさぎ秋「待って!」
 と、その時、南を止める声……
 それは紛れもなく、誘拐された秋であった
南「秋……」
 振り返るとそこには……
南「……秋……だよね?」
 変わり果てた秋の姿があった……
椿木つばき春「……やっぱ、そう思うよね……」
秋「ちょ、何よ……」
榎木えのき夏「あのゲーマー秋はどこに行ってしまったの?」
 ……変わり果てたというのは別に見るも無残に穢され、ハイライトが無い濁った瞳のコワれた……ってな意味で
はなく、むしろ良い意味で変わっていたのだ
 ゲーマーとしてなんだかどうにも猫背だった彼女はなんということでしょう!背筋がピンと立ち品行方正な大和
撫子として生まれ変わっていたのです
柊木ひいらぎ冬「……あのね、南……最近巷を騒がせた女子学生連続誘拐事件……あれは誘拐じゃなかったの」
南「え?どういうこと?」
健三「せ、先生、大丈夫ですか?先生……」
 その間にも健三はゆさゆさと華摘かつみをゆすり気付けを行う
華摘かつみ「う、う〜〜む」
夏「……でね、あそこに居る……なんだっけ?トイレでお花を摘むみたいな感じの人」
※うぉい!それ言っちゃダメだよ……御手洗華摘みたらい・かつみはそれが元ネタなんだから……
春「あの人は天四斗あまよと地区の風紀委員長なの」
南「はい?」
 そして、明らかになる真実
 彼は天四斗あまよとに蔓延るだらしない女子学生を品行方正二すべく日々奮闘している御仁だった
 誘拐された女子学生が帰ってこないとかいうのは尾ひれがついた話であり、そもそもの発端はヤマンバメイクな
女子学生が彼の手で美白な大和撫子に生まれ変わらされたことによるものらしい……
 つまり、ガングロで他の迷惑を顧みない感じの女子高生がある日突然行方を晦まし、品行方正な大和撫子として
帰ってきたことが誘拐されたナニかやらかされた……という噂となって天四斗あまよとを駆け廻ったのだ……
南「え〜〜〜」
 秋が車に連れ込まれそうになったのもまぁ、何と言うか、見間違い?
※なぜ疑問形?
冬「まぁ、あれは秋も悪いよね……」
秋「ちょ、どうしてそうなるのよ……この姿勢とかすごくむず痒くて恥かしいんだからね……」
華摘かつみ「キリっとした姿勢にはキリっとした衣装が好ましい」
 天四斗あまよとフルクロスの社長とつるんでいたのもつまりはそういうことである。
南「……ああ、そう……」
 なんだか急に毒気が抜かれた南であった……
春「……まぁ、何だ……ともかく、帰ろうか……」
南「……う、うん……そうね……そうだね……」
華摘かつみ「フッ、楠木の……また、お手合わせ願おう」
 良い笑顔な感じの華摘かつみに対して嫌そうな感じの南
南「……か、考えとく……」
 と、言うわけで春夏秋冬は南と共に無事、帰宅するのであった……

#7
 こうして、一つの事件(と呼べるかどうかは不明)は幕を閉じた……
 なお、余談であるが、華摘かつみの手によって品行方正にされた秋ではあったが、その三日後には再びゲーマーとして
復帰、いつもの猫背な感じに戻ってしまったという
 まぁ、本人もアレがリラックスできる体勢だって言っているし……
 いいんじゃないかな……
※いいのかなぁ?


END

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