Eighter -Noble Gathering-
51ster ~大地の魔狼今一度 B~
#3
ある日、突如としてまたもや出現した過初叨素……しかし、今回の目的はかんなを妾にすることではなく……
そして、余興として、ウェイトリー兄弟と與鷹とが死合うこととなった……
ウェイバー・ウェイトリー「なるほど……こうか……」
ガガッ
梓與鷹「うおっと……」
ウェイバーが殴ると同時に闘気の刃が與鷹に走る……それは、間違いなく、與鷹の使う拳法……双狼拳の点駈狼
であった
與鷹「お前……」
俺の技を一目でコピーしたのか?……と驚きを隠せない與鷹
與鷹「お前、何者だよ?」
ウェイバー「……我は、人にして人にあらざるもの……過初叨素の落とし子……」
與鷹「結局、人なのか、人じゃないのか……」
ガッ
問いかけつつ殴りかかる與鷹……の拳を受けるウェイバー
ウェイバー「さてね……そんなものは父君にでも問いかけてくれ」
與鷹「……」
與鷹(くっそ、本当にあいつといい、過初叨素といい、一体何がしたいんだ?)
しかし、今はそんなことを考えている場合ではない……
與鷹「……まぁ、いい、とっとと終わらせて帰ってもらおう……」
ウェイバー「……フフ……」
與鷹「魔狼幻惑」
ゴババババッ
分身による一斉攻撃……
ウェイバー「なるほど……」
與鷹「何?」
だが、しかし、ウェイバーもまた、分身を繰り出し回避する
ウェイバー「なかなか面白い芸当だ……返す!」
ゴガガガガッ
與鷹「なっ?」
双狼拳、魔狼幻惑が返される
白拍子かんな「リーダー」
與鷹「くっ……」
ザザザザッ
しかし、所詮は見よう見まね……辛うじてウェイバーの攻撃を見切り、距離を置くことに成功する與鷹であった
そんな中、観戦中の過初叨素とディディマスは……
過初叨素(……見えるか、ディディマス)
ディディマス・ウェイトリー(はい、我が父君……)
過初叨素(アレが、何の加護も持たない人間の姿だ……)
最も、運の女神の加護を受けている……と言えなくはないが……と過初叨素
ディディマス(我が、父君……)
過初叨素(実に興味深い……神の加護も、異能も持たず……しかして、神の徒に立ち向かえる……そのような人間
は希だ……そうは思わんか……)
ディディマス(……は、それは……しかし、我が父君……)
過初叨素(ふふ……分かっている……これはそれを見極めるための余興よ……)
ディディマス(……は、御意……)
そして、ディディマスは畏まり、再び與鷹と兄との死合に注目する
過初叨素……彼は一体與鷹に何を見ているのか……そして、與鷹には何かあるのか……それともないのか……
……ともかく、死合は続く……
#4
與鷹「……ちっ……これじゃあ埒があかない……」
ウェイバー「そうですね……私もそう思っていました……」
殴る、受ける、距離を置く……先ほどから與鷹の技を盗み、そして反撃を繰り出してきたウェイバー……
しかし付け焼刃のため、與鷹には通用せず……両者の攻撃は回避され、そして、距離を置くこと幾星霜……
死合は膠着状態に陥っていた……
與鷹は與鷹で新たな技をしかけることは可能だが、しかし、すぐさま見切られ、返される……それが付け焼刃
だと分かっていても、一瞬の油断が命取りになるのは明白であった……
故に、與鷹は迂闊に手出しが出来ない……
一方のウェイバーも與鷹の技を盗んで返すだけではなく、きちんと自分の技を繰り出していた……しかし、彼は
過初叨素の落とし子とはいえ、限りなく人間に近い人外……そして、肉弾戦には不向きの魔術師タイプ……
故に、ウェイバーの攻撃は何一つ與鷹には通じない……
ウェイバー「……まぁ、これ以上長引かせても……芸がないですね……」
與鷹「……ああ、そうだな……仕方ない……次で終わらせる」
ウェイバー「ふふ……終わるのはそちらです……」
與鷹「……やってみろ!」
ズズズズ
雑念を捨て、無心の境地に至る與鷹
ウェイバー「……」
そのまま両者、構えたまま一歩も動かず……ただ、時間だけが過ぎる……
そして……先に動いたのは與鷹……
與鷹「ハッ!冥狼舞吼ッ!」
ゴアッ
ウェイバーの視界を一時的に奪う
ウェイバー「な……に!?」
與鷹「終わりだ!」
ズドガガガガガガガガガッ
そして、容赦なく拳の嵐がウェイバーを襲う
ウェイバー「ごはっ!?」
しこたま與鷹の拳打を受け、派手に吹き飛ぶウェイバー
與鷹「勝負ありだ!」
過初叨素「……ふふ……良い余興だった……」
與鷹が勝利の凱旋を上げると同時に過初叨素がそう呟く
與鷹「は?」
過初叨素「帰るぞ……」
ウェイバー、ディディマス「は、我が父君……」
ズズズズズッ
與鷹「へ?」
與鷹が間抜けな声をあげている内に、過初叨素はウェイトリー兄弟と共にそこから消え去った……
かんな「……お疲れ様です、リーダー……」
與鷹「え?……あ、ああ……」
本当に、奴らは何がしたかったんだ?と疑問に思いつつ、これ以上歴史の墓場に用はないので、與鷹も、かんなと
共に現実世界へと帰還することとなる
與鷹「……なぁ、かんな……奴ら、何がしたかったんだ?」
かんな「……う~~ん、ちょっと分かりませんねぇ……」
與鷹「……そうか……」
かんなの運でも分からない……やはり、相手は怒愛座世界の神……それもかんなの運を上回る存在……
本当に、何がしたかったのか……気になるところではあるが……しかし、分からないものは仕方がない……
#5
怒愛座世界、某所
蒐葡貮繰「……ご機嫌ですね……」
過初叨素「そう見えるか?」
蒐葡貮繰「ええ……」
帰ってきた過初叨素に蒐葡貮繰はそう答える
過初叨素「……良いものを見た……そうか、アレが……―――か……」
與鷹……彼には一体何があるのか!?
END
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