Eighter -Noble Gathering-
50ther 〜奪われた家屋と族 B〜



#3
東京都、多摩市で起きた事件!?……少しばかり連絡の途絶えた前島家に電話をかけるとか細い声で助けを
求める少女が……果たして、彼女の家で一体何があったのか!?……
山咲やまざき桜「警部、前島寧子ねいねさんは無事に保護しました」
と、そこへ1人の少女を連れてやってくる桜……
かみ総介「うむ」
監禁されていたのか、手足のロープの縛り痕が痛々しい寧子ねいねさん……
警官(何か足りないと思っていたら、秘書が足りなかったのか……)
そういえば、桜もいたんだったなぁ……とか言い出す無能警官ズ
桜「警部、調べの結果、ここ最近ずっと出前ばかりを……しかも特上ばかりを頼んでいた形跡があります」
総介「フン、なるほどな……」
そんな話を小耳に聞き、思わず口を挟む無能警官
警官「豪勢なことだ……」
警官「なるほど、つまり、今のままでは生活習慣病などもろもろの病気になってしまうかもしれない……そう
 判断した娘さんが通報を……」
総介「で……前島一円ひとま、密子夫妻は……」
アフォな警官一同を完全に無視して話を進める総介
桜「……はい、警部……やはり……警部の言った通り……」
そして、桜は1枚の書類を総介に見せる
総介「……やはり……か……」
総介「そうか……お前らグズグズしてないでとっとと弾抹たまも葉子を殺人容疑で逮捕しろ!」
警官「……あの……かみ警部、一体、どういうことですか!?」
桜「……少し前、弾抹たまも氏の家が放火で、全焼するという事件があったことは覚えていますか?」
警官「ありましたっけ!?……そんなの?」
中川邦武ほうむ「え!?ここで俺にふるのか?」
警官「いや、中川警部なら何か知っているかと……」
とボケをかます警官に対して、総介はきつい一言……
総介「……お前は今すぐ警官をやめろ!」
警官「そんな殺生な!!」
邦武ほうむ「ま、待ってください、かみ警部……せめて、もう一度チャンスを……」
警官「そ、そうです、かみ警部……思い出します……思い出します……」
警官「たとえ知らなくてもさも知っているかのように振る舞いますので!」
そんなことを言っている時点で既にアウトなのだが……
とりあえず、業を煮やした総介が苛立ちながら説明を行う
総介「先日、弾抹たまも家にて不審火が発生……そのまま彼女の家は一家全焼してしまった……」
その時は葉子も、息子2人も外出しており、人的被害は皆無だった……しかし、住む家は亡くなった……
総介「家と夫を失った葉子……途方にくれていたそのとき、通りすがった一軒の家から一家団欒の声が聞こえた
 のだ……」
警官「はぁ……」
で、それが何か?と無能警官は首を傾げるばかりであった……

#4
総介「子供たちはおなかをすかし……母親はそんな子供たちに食べ物をあげることも叶わず……でも、家の中
 からは一家団欒の笑い声が絶えず聞こえてきた……」
桜「そして、彼女はやってしまったのです」
警官一同「ま、まさか……」
総介「そうだ、葉子はその家……前島家の家族を抹殺し、家を乗っ取った!」
邦武ほうむ「し、しかし、かみ警部……そんな乗っ取ったって……周りが気づくでしょうに……」
総介「普通ならばな……」
邦武ほうむ「普通なら?」
じゃ、この事件は異常なの?と考え込む無能警官……
総介(……まぁ、確かに、この事件は普通では無い……)
葉子はたまたまオーパーツを持っていた……如不啼代替啼器ハードボイルド・エントラスターを……
これは自分の容姿はそのままに、他人になり替わるというオーパーツ……
もっと簡単に言うならば、『託卵』を行うオーパーツ。
他人の家族をブチ殺し代わりに自分がなり替わる……厳密に言えば託卵ではないが、しかし、この例えは言い得て
妙である。
※ちなみに『エントラスト(entrust)』とは『託す』。『ハードボイルド』は卵……と、いうか『硬ゆで卵』
 ……つまり、調理済みではあるが『託卵』ということである。
総介「ん?何だ、貴様らまだいたのか?」
警官一同「えぇ?」
まるでイジメにあった生徒の様な状況の警官一行
総介「ここはいいからお前らはとっとと弾抹たまも葉子を確保して来い!」
警官一同「い、イエッサ〜〜!」
そして、蜘蛛の子を散らしたかの如く警官一行は走り去る

総介「全く……」
無能警官ズの無能ぶりにも呆れたものだ……と総介
桜「警部……」
総介「うむ……宮美きゅうび禽網きんもうの方は事情は知らんのだろう……だが、とりあえずは保護しなければな……」
彼らは今後、犯罪者の息子として生きていかなければならない……それはあまりに酷な話ではあるが……しかし
残酷な真実でもあるのだ……
総介「……やりきれんな……」
真理の断片が見せる未来が宮美きゅうび禽網きんもうの未来を総介に予見する……それは残酷だが、正しい真実……故に総介は
やるせない気分になるのであった。
……ちなみに、どうやら子供たちは親のついた嘘……つまり、『ここは親戚の家で今日から泊めさせてもらう
事になったんだよ』ということにすっかり騙されていたようだ……

#5
その後……
前島寧子ねいね「……子供に罪はないですから……私が面倒を見ます……じゅるり……」
そして、2人の子供は心優しい寧子ねいねが育てることとなった。
何か最後に涎を飲む音が聞こえたが、……まぁ、彼女の趣味については触れない方向で行こう。その方が
子供たちにとっても幸せで、復讐も……あ、いや、なんでもない……
※をい……チョット待て……
かくて、この『鳴かぬなら 代わりに鳴こう 不如帰ホトトギス』事件は終わり、オーパーツはEighterが管理すること
となった。


END

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