Eighter -Noble Gathering-
36ther 〜過住かすみ攻太郎の艱難 B〜



#3
未熟な攻太郎に裁きのとき……
と、その時、攻太郎の意識は闇に沈み……そして、陰轟留牡鴉アンゴルモア素盞嗚尊スサノオノミコトとの死合の回想へと飛ばされる……
素盞嗚尊スサノオノミコト奇稲田姫クシナダヒメ!」
奇稲田姫クシナダヒメ「はい!」
がすっ
すぐさま、奇稲田姫クシナダヒメも動く、頭につけていた金色に輝く和櫛を陰轟留牡鴉アンゴルモアに向け、上段から一気に引っ掻く
陰轟留牡鴉アンゴルモア「……くっ……おのれ……おのれぇ……人間……」
引っかかれた牡鴉モアの肉体はみるみる崩壊していく
過住かすみ攻太郎(す、すげぇ……)
陰轟留牡鴉アンゴルモア「……だが、覚えておくがいい!!我は、今、ここで封印された……だが、しかし……貴様ら
 人間がいる限り……我は……何度でも……復活する……貴様ら人間に……悪の……」
ボシュウオオオアッ
その言葉を最後に、牡鴉モアは完全に崩壊する
攻太郎(斃しちまったよ……)
攻太郎がそう思うのも無理はないが、しかし、これは斃したのではなく、退けたのだ……
第一、斃したのならば、代々陰轟留牡鴉アンゴルモアを封印、討滅する役目を引き継ぐ必要はない。
先祖が邪悪な存在を斃して有名になったとの伝説が語り告げられるだけである。
素盞嗚尊スサノオノミコト「……行くか」
奇稲田姫クシナダヒメ「そうですね……」
そして、2人は後々の世に再び牡鴉モアが出現することを感じ取り、自分の一族がそれを封印、討滅する役目にある
として、累々とその役目を伝承していくことになるのであった……
攻太郎(……)
これが、素盞嗚尊スサノオノミコトの闘いぶり……と感心していると、突如攻太郎の視界が歪む
攻太郎(何だ?今度は……)
それは、回想の終わり……かくて、攻太郎の意識は再び歴史の墓場へ戻る

ブンッ
迫る兇刃
攻太郎「うはああ!」
咄嗟に無様に転がるようにそれを回避する攻太郎
過住剣八郎かすみ・けんやろう「避けたか……だが、次はこうはいかんぞ……」
攻太郎「はぁ……はぁ……五月蠅い!ジジィ」
剣八郎けんやろう「フン、口だけは達者だな……」
攻太郎(……)
啖呵を切りつつも、内心攻太郎は焦っていた……今の自分では剣八郎けんやろうを斃すことは出来ない……
剣八郎けんやろう「だが、もう終わりだ……」
バニッシャーを構え直そうとすると、その瞬間に、再び間合いを侵食され、眼前に魔滅刃まほろばを構えた剣八郎けんやろうの姿が
攻太郎「しまっ」
剣八郎けんやろう「この歴史の墓場で永年に眠れ!」
ズダンッ
剣八郎けんやろうの斬撃と共に遥か遠方へ吹き飛ばされる攻太郎
攻太郎「がはぁ……」
そのまま地面に叩きつけられ……さらに、何度かバウンドし……遂に動かなくなる攻太郎
剣八郎けんやろう「……」
その様子を見届け、剣八郎けんやろうきびすを返す
剣八郎けんやろう「……やはり、お前に我が力を託したのは儂の間違いじゃったな……いや、そもそも、儂は……誰にも
 託さず……白拍子家のものへ託せばよかったのか……」

#4
攻太郎「……」
ピクピク……
致命の斬撃を受けたかに思われた攻太郎だったが……しかし、剣八郎けんやろうの斬撃は攻太郎を傷つけなかった。
そもそも剣八郎けんやろうは死した身……そして魔滅刃まほろばもまた、既に存在しない幽霊の様な刀……
故に、生きた人間を傷つけることは出来ないのだ……
攻太郎「ジジィ……」
叫びと共に起き上がる攻太郎
剣八郎けんやろう「まさか……この身は霊体……生きた人間に傷付けることは叶わぬが……しかし、精神となれば別……
 お前は儂の斬撃を受け、精神的には死を受け入れた……」
立ち上がれるはずがない……と驚愕に目を剥く剣八郎けんやろう
攻太郎「……こ……こんなところで……こんなわけのわからないところでェッ……終われるかぁッ!」
バニッシャーを力強く握り締める攻太郎
キィイインッ
と、同時に、バニッシャーの刃が光り輝く
剣八郎けんやろう「……まさか……こんなことが……」
攻太郎「おおおおお!!蠎殪舞刃ぼうえいぶじんッ!!」
ババババババババッ
瞬時に別方向からの8つの刃が剣八郎けんやろうに襲いかかる
剣八郎けんやろう「クッ鳳鸞舞刃ほうらんぶじん!」
ゴギャウッ
咄嗟に斬撃で具現化した焔の鳥で応戦する剣八郎けんやろう……しかし、そんな程度では攻太郎の太刀筋に敵うはずもなく
焔の鳥は無残に切り裂かれ、消滅する
剣八郎けんやろう「何と!」
つい、先ほどまで攻太郎にここまでの力はなかった……
攻太郎の恐るべき成長速度に驚きを隠せない剣八郎けんやろう
剣八郎けんやろう「……面白い……ならば……龍鳳麟龜りゅうほうりんきッ」
ズガガガガッ
自分の持てる全ての力を駆使し、斬撃と同時に具現化した応龍おうりゅう、鳳凰、麒麟、霊龜れいきを解き放つ
攻太郎「はあああ!櫛奇舞刃しっきぶじん」
ズギャギャギャギャギャギャッ
だが、まるで櫛でひっかくような大量の斬撃がそれを掻き消す
剣八郎けんやろう「この技……知らん……」
攻太郎「ジジィ、いい加減に往生しやがれッ」
驚愕する剣八郎けんやろうを前に今度は攻太郎が一気に間合いを侵食し、バニッシャーにて横に薙ぎ払う
剣八郎けんやろう「がああああ!」
剣八郎けんやろう(こ……この太刀筋……はああ!!?)
攻太郎「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
それが、最後の力だったのか……その場にバニッシャーを突き刺して跪く攻太郎
それが、最後の力だったのか……その場に刀を突き刺して跪く攻太郎
剣八郎けんやろう「フ……フフフ……見事だな……攻太郎……それでこそ……我が孫……素盞嗚尊スサノオノミコトの血を継ぎし侍よ!」
無残に斬り刻まれた剣八郎けんやろう……だが、笑顔で語る……
攻太郎「ジジ……祖父さん?」
かくて、剣八郎けんやろうと攻太郎との死合は決着す?


続

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