Eighter -Noble Gathering-
36ther 〜過住かすみ攻太郎の艱難 A〜



#0
過住かすみ攻太郎……陰轟留牡鴉アンゴルモアを封印、討滅する役目にありながら、その役目を果たすことが出来なかった悲運の
人物……そして、その腹いせ(違うから)のためにかんなと死合った攻太郎は、突如彼の祖父、剣八郎けんやろうの元へ
送り飛ばされる……
かくて、剣八郎けんやろうによる、攻太郎生還への最後のチャンスが発動した……

#1
歴史の墓場、某所
過住剣八郎かすみ・けんやろう「……」
剣八郎けんやろうの無言のプレッシャー……しかし、それは辺りを重く縛る……
過住かすみ攻太郎(くっ……何て気だよ……)
あまりの殺気に身が竦む攻太郎……と、そんな時……
剣八郎けんやろう「どうした?……かかってこんか!?」
攻太郎「あ〜〜、そうかい……じゃ行くぜ、ジジィ!死んでも恨むなよ!!!」
ゴゴゴゴゴッ
攻太郎も殺気を吊り上げる
剣八郎けんやろう「フン、もとより死んでいる儂にその言葉は無意味だ……」
攻太郎「だったら、殺しても殺人罪にはならないな……うお〜〜〜〜りゃあ!龍咬舞刃りゅうこうぶじん!」
キュイインッ
斬撃と同時に具現化した光の龍が剣八郎けんやろうに襲いかかる
剣八郎けんやろう「その程度で、儂を斃せると思うな!」
グシャアアッ
攻太郎「何……だと?」
剣八郎けんやろうは迫る光の龍を左手で掴むとそのまま握りつぶして見せる。
斬撃で相殺するならともかく、まさか素手で握りつぶされるなどと、思いもしなかった。
……かんなが鵺帛主ヤヌスと対峙した際もここまで酷くはなかった……
ならば、それは決定的に攻太郎の力が足りないという証拠である。
剣八郎けんやろう「……お前にその流派を使う資格なし……忘れてもらうぞ!……永遠に!!」
呆気にとられている隙に一気に間合いを浸食される攻太郎
攻太郎「う……うわあああ!」
そして、迫る兇刃……
その時、全てがスローモーションとなり……
と、ここで、攻太郎の意識は闇に沈む

*「ハハハハハ……」
攻太郎(なん……だ!?)
*「ハハハ……ハハハハハ……」
どこからともなく、笑い声が聞こえる……
*「我を八岐大蛇ヤマタノオロチと同じと甘く見たな……素盞嗚尊スサノオノミコトよ……」
攻太郎(素盞嗚尊スサノオノミコト……だと!!?)
見下ろすと……いや、『見下ろす』のが適切な表現なのかどうかはわからない……と、いうか、今、攻太郎は
自分がどこにいるのかすらわからなかった……
素盞嗚尊スサノオノミコト陰轟留牡鴉アンゴルモア……お前を封じるは我が宿命……」
古代日本チックな両刃の直剣を握って素盞嗚尊スサノオノミコトが叫ぶ……
陰轟留牡鴉アンゴルモア「ハッ……」
攻太郎(な……これは……)
……それは……はるか遠い過去……陰轟留牡鴉アンゴルモア素盞嗚尊スサノオノミコトとの死合……
陰轟留牡鴉アンゴルモア「我は神ぞ……どこぞの下等な神が創りし蛇もどきなどとはわけが違うわ!」
素盞嗚尊スサノオノミコト「ならば……我が剣……受けてみよ!!」
そう叫び、剣を構えると同時に、素盞嗚尊スサノオノミコトの殺気が尋常じゃなく膨れ上がる
攻太郎(く……これが素盞嗚尊スサノオノミコトの……)

#2
陰轟留牡鴉アンゴルモア「ほぅ?まだそのような力を隠していたか……面白い……」
牡鴉モア牡鴉モアで更に邪気を釣り上げる
攻太郎(くっ……これが……陰轟留牡鴉アンゴルモア……か)
確かに、こんな奴を相手に、俺では歯が立たなかったかもしれない……と攻太郎
攻太郎(んん?)
と、その時、攻太郎は素盞嗚尊スサノオノミコト牡鴉モアとの死合の場に……素盞嗚尊スサノオノミコトの傍らに1人の女性がいることに気がつく
攻太郎(何だ?あの女……)
……その女こそ、素盞嗚尊スサノオノミコト八岐大蛇ヤマタノオロチの生贄という宿命から解き放ち、妻にしたという女、奇稲田姫クシナダヒメである。
奇稲田姫クシナダヒメは、これまた古代日本チックな手鏡を携え牡鴉モアを睨みつけていた。
あの手鏡は、盾の様なものなのだろうか……
素盞嗚尊スサノオノミコト陰轟留牡鴉アンゴルモア「……」
攻太郎がそんなことを考えている内に、両雄はジリジリと微妙に間合いを詰めていく
攻太郎(くっ……この死合……空気が重い……)
まさか、かんなはこんな差し迫った空気の中で牡鴉モアと死合い続けていたのか……と攻太郎。
攻太郎(……)
陰轟留牡鴉アンゴルモア負轟肆獸躙ふごうしじゅうりん!」
ドズグオオオオッ
そして、先に動いたのは陰轟留牡鴉アンゴルモア……邪悪なで作り上げた鳳凰、龍、獅子、ヤマタノオロチを一気に解放する
攻太郎(ンなっ!!?……なんだよ……アレ……)
素盞嗚尊スサノオノミコト蠎殪舞刃ぼうえいぶじん」
ズババババババババッ
陰轟留牡鴉アンゴルモア「な……にぃ!!?」
しかし、素盞嗚尊スサノオノミコトは瞬時に別方向からの8回の斬撃にて、迫る4つの闇の獣を斬り刻む
素盞嗚尊スサノオノミコト「終わりだ……陰轟留牡鴉アンゴルモア!!」
陰轟留牡鴉アンゴルモア「ほざけぇ!!」
だが、素盞嗚尊スサノオノミコト牡鴉モアの技を相殺したに過ぎない……
そのまま一足飛びにかかる牡鴉モア……しかし、対する素盞嗚尊スサノオノミコトは微動だにせずその場に直立していた
攻太郎(なっ……アイツ死ぬ気か?)
どうにかして助けられないか……と攻太郎……しかし、これは何かしらの回想の様なものであり、攻太郎がいかに
藻掻こうとも結果は変えられない……
……そして、もうひとつ……これが変えられない過去というのならば……素盞嗚尊スサノオノミコト牡鴉モアを封印、討滅に成功
している……
ビシュウウッ
陰轟留牡鴉アンゴルモア「グアッ……何だと?」
刀を上段に掲げ、一気に振り下ろさんとした次の瞬間、牡鴉モアの肉体が切り裂け、あちこちから血が吹き出る
素盞嗚尊スサノオノミコト「言ったはずだ……終わりだと」
陰轟留牡鴉アンゴルモア「貴様ァア!」
そして、陰轟留牡鴉アンゴルモアは封印、討滅される?


続

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