Eighter -Noble Gathering-
35ther 〜過住かすみ攻太郎の受難 C〜



#5
過住かすみ攻太郎……かれの一族は陰轟留牡鴉アンゴルモアを封印、討滅する役目を負っていたが、しかし、攻太郎の時代、その役目
はかんなが果たしてしまった……
そして、今、そのことにケリをつけるべく、かんなと攻太郎は死合だしたのだが……
過住かすみ攻太郎「……見ろ!俺の闘志に反応したこのソードピーク……」
バキャアアアアッ
そして光が収まると同時に、得物は砕け散る
攻太郎「な……な……何いぃい!!?」
俺の怒りに応じてくれたんじゃないのか?と攻太郎……
だが、砕け散ったソードピークトマホークは最早何も語らない
*「愚か者めが……」
攻太郎「な、何だ?」
更にどこからともなく声が聞こえる
*「この……愚か者が!!」
攻太郎「い、今のは……祖父さん……の声!?」
それは、間違えようもない……攻太郎の祖父、剣八郎けんやろうの声だった……
*「キサマに全てを託したのが……儂の間違いだったようだな……」
攻太郎「祖父さん?」
ぐにゃり
攻太郎「え?」
更に、突然攻太郎の視界が歪む
攻太郎「な……今度は……何……」
攻太郎の周りが突如歪みだしたのではない……攻太郎自身が歪みだしたのだ……
攻太郎「お……おい……こいつぁ……こいつは一体……どうなってやがんだ……」
そして、攻太郎は黒い靄に包まれ、その場から忽然と姿を消す
白拍子かんな「……試練の扉は開かれました……」
一人残されたかんなはそんなことを呟く
茜瑙哭セドナ(……生きて帰ってこられるかは……奴の力次第だな……)
かんな(そうですね……)

そして……攻太郎はというと……

攻太郎「はっ!?ここは……」
気がつくと、攻太郎は一人、見知らぬ場所にいた……
見知らぬ場所と言っても、空も大地も漆黒に染まっており、ここがまだ歴史の墓場であることに変わりはない
*「愚か者よ……」
攻太郎「祖父さん!!」
剣八郎けんやろうの声に気が付き、バッと振り向くと、そこには過住剣八郎かすみ・けんやろうの姿が……
既に死して久しいためか、剣八郎けんやろうの体は透けていた
過住剣八郎かすみ・けんやろう「……嘆かわしい……実に嘆かわしいぞ……陰轟留牡鴉アンゴルモアの封印を任せたお前が……封印に間に合わず
 ……果てにはもう封印の必要も無くなった……」
攻太郎「……いいじゃねぇか……そんなこと……」
俺の一族の役目は解放されたんだぞ!と攻太郎
それに対し、大体、役目を解放することもまた、一族の宿願だと剣八郎けんやろう
剣八郎けんやろう「……儂はお前をそんな風に育てた覚えは無いぞ……」
攻太郎「ハッ!こちとらアンタに育てられた覚えが無いね」
売り言葉に買い言葉である

#6
剣八郎けんやろう「フン……ようもほざくわ!!」
ヒュオアッ
その次の瞬間、刀が1本飛んでくる
ドズウッ
攻太郎「うおああ!!?なな……何ぃ!?」
攻太郎の足元に突き刺さる刀……
それは刀というか、長巻というか……鉾というか……刀剣類とは言えるが、正確には刀、長巻、鉾のどれに分類
されるのかよく分からない代物であった。
剣八郎けんやろう「その刀、バニッシャーを取れ……攻太郎……」
今のお前には過ぎた力だがな……と剣八郎けんやろう
攻太郎「はぁ?!」
剣八郎けんやろう「……お前に最後の機会をやろう……」
攻太郎「最後のチャンスだぁ!?」
いきなり何を言い出すのか……と思っていると、更に剣八郎けんやろうは告げる
剣八郎けんやろう「そうだ……お前が儂を斃すことが出来れば……お前を無事に帰してやろう……だが……もしも儂に敗れた
 ならば……」
攻太郎「ここで死ねってか!?ヘッ……いいだろう……ジジィ!年寄りだからって手加減しないぜ!!」
ズンッ
地面に突き刺さっている刀を引き抜いて構える攻太郎
※『祖父さん』から『ジジィ』に変わってます……
剣八郎けんやろう「フッ……なめてかかると痛い目にあうぞ……」
そう言って剣八郎けんやろうは右手を天に掲げる
剣八郎けんやろう「……魔滅刃まほろば」
叫ぶと同時に何もない空間から刀を取り出す
攻太郎「おおりゃああ!!!」
剣八郎けんやろうが刀を取り出すと同時に、攻太郎は一足飛びかかりバニッシャーを打ち下ろす。
バシッ
攻太郎「な……んだと!?」
だが、その刃は剣八郎けんやろうの左手で受け止められる
剣八郎けんやろう「……よくもまぁこんな太刀筋で今までやってこられたものだな……」
攻太郎「うるせぇ!ジジィ!!俺の勝手だろうが!!」
剣八郎けんやろう「フン、確かに、太刀筋など貴様の自由であろうが……」
そのままぱっと左手を解放する剣八郎けんやろう
剣八郎けんやろう「だが、そんな程度では牡鴉モアを斃すことなど笑止……お前が牡鴉モアと対峙しないで正解だったわ」
攻太郎「ジジィ!」
ズドガンッ
怒る攻太郎に、カウンターの如き斬撃を繰り出す剣八郎けんやろう
攻太郎「ぐあっ?」
剣八郎けんやろう「やはり、貴様に全てを託したのは間違いだった……」
攻太郎「うるっせぇ!いつまでも終わっちまったことをひきずってんじゃねぇぞ!!」
立ち上がり、体勢を立て直した後に、そう叫ぶ攻太郎
剣八郎けんやろう「ほっ……お前が一番引きずっているんだろう……」
攻太郎「ああ?何を!?」
剣八郎けんやろう「既に終わったのならば……なぜ今更かんなと死合う?」
攻太郎「そ……そいつぁ……」
剣八郎けんやろう「過去を引きずっている点ではお前も儂も同類……」
攻太郎「……だから……だから何だってんだ!!」
剣八郎けんやろう「……儂はな……『最後の機会』と言ったのだ……」
攻太郎「だから……何!?」
剣八郎けんやろう「だからな……全力でかかってこんと死ぬぞ?」
攻太郎「うぐ……」
その気迫に気圧される攻太郎
攻太郎(……)
こうして、攻太郎と剣八郎けんやろうの最初にして最後の死合が始まった……


END

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