Eighter -Midnight Howling-
56ther 〜色欲が堕つるとき(ラスト・オブ・ザ・ラスト) B〜



#3
 さて、総介、交喙(いすか)とサヤ、クォヴァの死合は……
元人交喙(いすか)「うおおおお!」
歯付サヤ「いつまでそんなことが続けられるかしら?」
 サヤの繰り出す鋩隕鋩蝕(ぼういんぼうしょく)は全てを喰らい、自らの糧とする奥義。
 故に交喙(いすか)はあえて技を繰り出さず金匙玉楊(きんしぎょくよう)で打突を繰り返す。
交喙(いすか)(クソッ……このままでは分が悪い……)
山咲(やまざき)桜(やはり、最悪の展開を考えておかないといけないか……)
 そんな交喙(いすか)とサヤの死合を見て、桜は静かに思う。
桜(いや、この状況をひっくり返す手が……ないわけでもないか……)
 桜の言う、状況をひっくり返す手は二つ……一つはできる限り使いたくはない。いや、まだここで使うわけには
いかない。
 故に詳細を語ることは出来ない。
 そして、もうひとつは……交喙(いすか)を怒らせること。
※かつて交喙(いすか)の逆鱗に触れて砕け散った愚か者が一人いる。そのときのことを桜は言っているのだ
交喙(いすか)「うおおおお!!」
サヤ「その程度なのかしら?」
 ドドドドドドドッ
 金匙玉楊(きんしぎょくよう)の打突をことごとく素手で振り払うサヤ。
サヤ「はぁ……」
 クォヴァと死合う総介をチラ見してサヤはため息を一つ。
サヤ「私もあっちと死合った方がよかったかしら?」
交喙(いすか)「貴様ッ」
 その態度は交喙(いすか)のプライドを甚く傷つけた。
交喙(いすか)「てめぇの相手は俺だろうが!」
サヤ「吠えないでくれるかしら?……こんなつまらない死合なんて早く終わらせて助っ人に……」
交喙(いすか)巫山戯(ふざけ)るなぁ!」
 ゴッ
 そして、今再び、交喙(いすか)はキれる。
 あたり一面を揺さぶるほどの雄叫び。
サヤ「な、これは!?」
 交喙(いすか)の豹変ぶりに思わず身をこわばらせるサヤ
交喙(いすか)「アアアアァアアアアッ、砕け散れぇエエエエ!」
 ドガンッ
サヤ「あがぁ!?」
 怒りに任せただけの打突、それを受けただけで左肩ごと吹き飛ばされるサヤ。
交喙(いすか)「ハアアアアァッ!衝錐紅嘴(しょうすいくし)!」
 ズドオオンッ
サヤ「鋩隕鋩蝕(ぼういんぼうしょく)!……げふぁ!?」
 紅いオーラを纏って激突する交喙(いすか)。先ほどと同じようにそれを喰らってわが物にしようとしたサヤだったが、願
い叶わず吹き飛ばされる。刳り取られる。叩き砕かれる
サヤ「ばっ、馬鹿な!?」
 こんなこと、ありえない、ありえていいわけがない。
サヤ「ざけんなぁ!鋩隕鋩蝕(ぼういんぼうしょく)!」
 ガオンッ
 交喙(いすか)を狙わず回りの地面を喰らうサヤ。そうすることで糧として回復も行うのだ。
サヤ「いいだろう、ならば、貴様の全てをくらってやる!鋩隕鋩蝕(ぼういんぼうしょく)交喙(いすか)「オオオアアアアッ九留紅霄(くどこうしょう)!」
 ドドドドドドドドドッ
 刹那の瞬間に九回の打突…… VS 全てを喰らう暴食の斬、勝つのは!?

#4
泥諏(でぃす)クォヴァ「こんのっ……」
(かみ)総介「フンッ」
 ギリギリギリッ
 蒼王の刃(ブルーロード)藍后の刄(ブルーエンプレス)、二つの刀でクォヴァを圧す総介。
 しかし、クォヴァは冥王の心臓、その防御能力たるシェオルフィールドで受け止める。
クォヴァ「あまり調子にのるなよ!人間(パーツ)風情が!」
 だがその時、クォヴァに悲劇が訪れる。
 かなりの手によって追い詰められた場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の上位存在、アスモデウスは上位命令によってクォヴァか
ら冥王の心臓の使用権限を奪った。
 ぶつんっ
クォヴァ「あっ……アスモデウス様ぁッ!」
 クォヴァは盾を失った。こうなれば総介の二刀を防ぐ手立てはないッ!
 ザグンッ
クォヴァ「あっ、あがああっ……」
 二刀によって両腕を切り落とされるクォヴァ
総介「フッ……やはり……か……」
 アスモデウスという名を聞いて総介は確信する。
クォヴァ「何を分かった気に……」
総介「貴様らの上位存在についてよ」
 アスモデウス……それはソロモン72柱の悪魔の一人。
 與鷹もそれは気づいた。そして、中位存在よりも強い奴らがまだ70以上も存在するのか……と戦慄した。
 だが、総介は違った。アスモデウスとは、ソロモン72柱の悪魔の一人であるが、同時に七つの大罪の《色欲》と
しても有名である。
 よく考えてみるとこれまでに登場してきた中位存在の7人は、いずれも七つの大罪に該当しそうな技を使ってき
たような……気が……しないでもない。
※確定情報じゃないんかいッ!
総介「さて、そろそろ終わりにするか……」
 総介はそう呟くと蒼王の刃(ブルーロード)藍后の刄(ブルーエンプレス)を改めて強く握りしめる。
クォヴァ「ほんはほとははへはい(そんなことはさせない)!」
 両腕を切り落とされているため、クォヴァは口でまずは右手を咥えて繋ぎ直しにかかる。
 ぐっぐっと右腕が繋がったことを確認すると今度は左腕を繋ぎにかかる。
総介「腕は無事につながったか?」
クォヴァ「貴様ッ」
 総介の物言いにビキリとなるクォヴァ。
クォヴァ「その物言い、後悔するらしいよ」
総介「フッ、できるならやってみるがいい……」
 静かにそういうと、総介は蒼王の刃(ブルーロード)藍后の刄(ブルーエンプレス)をくっつけて一本の双身刀に組み立てる。
 これこそが総介の切り札。神の特刀(デウス・エクス・ブルー)だ!
クォヴァ「凛葬鋩怨(りんそうぼうおん)!」
総介「駆流蒼転(くりゅうそうてん)!」
 激突する二つの奥義!果たして……


続

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