Eighter -Midnight Howling-
52nder 〜淵に佇む百合剣者(セイバーリリィ) A〜



#0
 大阪が生んだ凶悪殺人鬼、吉田淳也……彼は御用となったのだが、留置所から脱走!大阪が恐怖で震える。
 そんな彼を再び逮捕しようと大阪の民間警備機関、MyThRIr(ミスリル)は賞金首をかけて捜索を開始、また、通天閣米軍基
地にも協力を仰ぎ3000人態勢で追跡を開始したのだった。
 だが、淳也には婦女暴行の果てに会得した究極たる破壊のゴールドフィンガーテクニックを持つため返り討ちに
あう人が続出……そして……

#1
 歴史の墓場のとある場所から一部始終を観察している場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の中位存在。
 奴らに見られているなどと知る由もなく、総介は淳也と死合い続けていた。
吉田淳也「いつまで、そんなことが続けられるかなぁ?」
 ウィ〜〜〜ンと嫌な音を立てる人差し指、中指を天に突き出すかのように構えつつ淳也が吠える。
(かみ)総介「もはや貴様の秘密は見抜いた」
淳也「ほざけぇ!」
 フっと姿を消す淳也。そして、総介の死角を突いて拳を繰り出す。これが、まるでテレポートでもしているかの
ような淳也の秘拳、幻影膠転移陣(げんえいこうてんいじん)!
総介「言ったはずだ、貴様の秘密は既に見抜いたと!」
 そう言い放つと総介は左手に持つ藍后の刄(ブルーエンプレス)で人がもつ破壊の極致たる二本拳を受ける。
 と、同時に前方に駆け出す。
 ズドムッ
*「ぐげああっ!?」
一同「え!?」
 続いて右手の蒼王の刃(ブルーロード)を何もない虚空に突き出す……とどうだろう、突如謎の声が聞こえる。
 いや、その声色はどう見ても淳也なのだが……
*「き、貴様ぁ!」
 右肩を貫かれた淳也らしき人物が、すうっと出現する。それはまるでカメレオン……と言うか、光学迷彩が解け
たかの如くだ。
元人交喙(いすか)「なっ、まさか、双子トリック!?」
山咲(やまざき)桜「いいえ、違います……」
 驚きに声を上げる交喙(いすか)にふるふると首をふりつつ桜は呟く。
淳也「貴様ッ!」
 肩を貫かれている方の淳也がギロリと総介を睨み付ける。
総介「言っただろう、貴様の秘密はとうに見抜いたと!」
淳也「クソがッ!」
総介「無駄だッ!」
 ズッドンッ
 もう一人の淳也の方を貫いていた蒼王の刃(ブルーロード)を引き抜くとすぐさま横に薙ぎ払う
*「なっ?!馬鹿なッ!」
 すると再び光学迷彩でもしていたかのような第三の淳也が、総介の斬撃を受けて出現する
交喙(いすか)「双子じゃなくて三つ子だったのかよ!」
桜「いえ、それも違いますよ……」
梓與鷹(よたか)「違うって……どういう……はっ!?まさか……」
 その時、與鷹(よたか)は一つの事に思い至る。そのままかんなの方をみるとこくりと頷くことからも與鷹(よたか)は自分の考えが
間違っていなかったことを知る。

#2
 さて、ここでもう一度歴史の墓場の某所、場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の中位存在が屯する空間へ、視点は変わる。
泥諏(でぃす)クォヴァ「ネタがバれちゃったらしいね……」
歯付サヤ「それにしても、これは一体どういうことなのかしら?」
 サヤが首をかしげるのも無理はない。今回使用された場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)は下級も下級がいいところの代物。
 その名を、悪意ある鏡写しの傀儡(マリシャス・ミラーリング・マリオネット)と言う。
未来邇(みらりに)ルアド「……悪意ある鏡写しの傀儡(マリシャス・ミラーリング・マリオネット)……それは人の悪意を増殖させる代物なんだな」
 だが、それだけではこのような状況にはなるまい……
サヤ「他にも併用しているということかしら?」
 なるほど、複数の場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)を併用できる……それは適合者としても優秀ということだ。
手寸(てぃすぬ)クディミ「そうじゃないんすよ……奴は、悪意が服を着て、生きているようなもんなんすよ」
一同「ッ!」
 クディミの言葉にクォヴァ、サヤは驚きを隠せない。
 奴が悪意が服を着て動いているようなモノ……
 悪意ある鏡写しの傀儡(マリシャス・ミラーリング・マリオネット)……それは人の悪意を増殖させるだけの場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)……本来ならばどんな聖人も極
悪の華を咲かせる程度にしか役に立たない。
※その言い回しもよくわからんけど……
 だが、悪意が服を着て動いているようなものである淳也の場合はそうはならない。
 彼にとって悪意が増殖するということは、彼自身が増殖するということなのだから。総介が死合っている淳也達
は双子でも三つ子でもお〇松さんでもない、増殖された悪意……淳也自身なのだ!
 このために、奴は類を見ない適合者とみなされた。このために、奴は脱走させてもらえた。
 全ては《キツネザルの使徒》を抹殺するために!

 ……そして、話は大阪へと戻る。

淳也達「貴様……何故だ!何故!」
 あれから更に数人の淳也が襲い掛かるも、全て総介が一刀のもと切り捨てる。
交喙(いすか)「ヘッ、なぜ姿も見えないのにバれたのかって!?……そりゃあ、お前の攻撃の際独特の音が響いてるからだ
よ!」
 ウィ〜〜ンッ
淳也「はっ!?」
 言われて淳也は嫌な音を立てる二本拳を見つめる。
與鷹(よたか)(ってか今まで気づかなかったのかよ……)
淳也「だがなぁ!」
総介「なぜ複数いるのがバれたのか……か?」
 自分らの姿をよく見てみろ……と総介が呟く
淳也達「姿だぁ!?」
 巫山戯(ふざけ)た事も大概にしろ!同じ格好をしているからこそ、同じ人物が複数いるなんて思われなかったはずだ!と
淳也達は憤る。
 果たして、総介は何故淳也が複数いる事見抜いたのか!?


続

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