Eighter -Midnight Howling-
51ster 〜淵に佇む特級剣者(セイバーエクストラ) A〜



#0
 ある日Eighterの面々に襲い掛かったのは場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の中位存在の息がかかったイタリアからの暗殺チー
ム……しかし、奴らは弱かった。
 話にならないレベルだったので本当に彼らはイタリア随一の暗殺チームだったのかという疑問すらも生まれた
 だが、それは単なる余興に過ぎなかったのだ。
 真の刺客は今、解き放たれる!

#1
 大阪
 大阪……そこは犯罪(つみ)警察(サツ)のない街。
 犯罪(つみ)がない街というのは分かるが、警察(サツ)もない街なんてどういうことなのか?と疑問を抱く人もいるだろう。
 それにはちゃんとした理由(ワケ)があるのだ。ただ、長くなるので割愛すると、ヤクザに尻尾を振って生きていた大阪
府警はそのヤクザの手により壊滅の憂き目にあったということだ。
 そして、大阪は日本で唯一警察のない街と成り果てたのだ。
 しかし、そんな大阪にはMythology of Through Radical Irregular……略してMyThRIr(ミスリル)という民間の警備機構が
あり、治安は維持されてきた。
 ところが、今、そんな大阪で前代未聞の大事件が発生したのだ!
 婦女暴行、窃盗等のいくつもの犯行を繰り返し、(ようや)く御用となった凶悪犯、吉田淳也(30歳)が富田林市にある
留置場から逃走したのだ。
 これはMyThRIr(ミスリル)始まって以来の最大のとんだ失態と言っても過言ではなかった。
※『富田林市』だけに『とんだ失態』……ダジャレかよ!
*「クッ、MyThRIr(ミスリル)、一生の不覚や!」
*「どないしましょう?」
*「あぁん?アホなこと言わせんなや」
 ものすごい剣幕で首根っこを掴み漢は叫ぶ
*「通天閣米軍基地に連絡するにきまっとるやろが!」
※お前らでなんとかせんかい!!
 ちなみに、大阪には普天間から移転された通天閣米軍基地がある。
 これも話すと長くなることながら、簡単に言うと『同じ〇天〇のよしみ』ということで米軍基地が普天間から通
天閣へ移転したのだ。

 富山県、天四斗(あまよと)、Eighter本部
梓與鷹(よたか)「大阪のMyThRIr(ミスリル)で史上まれにみる失態……か……」
(かみ)総介「フン」
與鷹(よたか)「うおおっ!?」
 いつの間にか総介が現れて驚きのあまり飛び上がる與鷹(よたか)。心臓に悪いとはこのことである。
山咲(やまざき)桜「その日、弁護士、新畑勇四郎は接見のために吉田淳也氏の元を訪ねていたのですが……」
 そして、総介の傍らにいた桜は何事もなかったかのように説明を続ける。
與鷹(よたか)「いつまでたっても接見が終わらないことを不審に思ったMyThRIr(ミスリル)職員が部屋の中に入ってみるとそこはもぬ
けの空だったと聞いたが……」
総介「ああ、弁護士と犯人はアクリルの板で仕切られた一つの部屋の中で相対していた」
桜「出入口は犯人側、弁護士側の二つ……そして、犯人側のドアは施錠されておりそこから逃げ出すことは出来な
いようになっていました」
 だが、弁護士側のドアは施錠などされておらず、自由に出入りは可能であったという。
 しかし、部屋の中央に仕切られていたアクリル板を破壊することは通常は不可能である。

#2
某敢(それがし・いさむ)「事実、仕切りは破壊されていなかったのでござろう?」
総介「ああ、だが、アクリルの板はズレ曲がっており、その隙間から奴は逃走したと思われる……」
桜「MyThRIr(ミスリル)の失態はそれだけじゃあないんです」
 通常、弁護士側のドアは入退室の際、ブザーが鳴る仕組みが設置されていた。だが、事件当日、なぜかブザーは
鳴らなかったという。
 また、弁護士は接見が終わった後、MyThRIr(ミスリル)職員に終了を報告することもある。これは必須事項ではないが、や
はりというべきか、当日弁護士は終了報告をせず、人知れず帰っていったのだ。
 更に、MyThRIr(ミスリル)職員は報告がくるものだと思っていたというすれ違いぶりである。
総介「更にMyThRIr(ミスリル)は治安維持の一巻としてメールによる情報配信サービスを行っているのだが……」
 そのサービスの名は『安心に絶対を求めるのは間違っているだろうかメール』、通称『安まちメール』というの
だが、今回は犯人逃走の情報配信が遅れたこともMyThRIr(ミスリル)が盛大に叩かれている要因の一つになっている。
與鷹(よたか)「そりゃまた……」
桜「現在通天閣米軍基地と協力して大規模な捜索活動を行っているようですが、未だ犯人は捕まってません」
 さて、それはそれとしておいといて……
與鷹(よたか)「総、お前も逃走した吉田淳也の捜索に駆り出された口なのか?」
総介「フッ、半分だけ正解だ」
(いさむ)「半分だけ……でござるか?」
 (いさむ)(いぶか)しんでいると、桜が神妙な面持ちで告げる。
桜「通常弁護士側のドアは入退室の際、ブザーが鳴る仕組みがあったにも関わらず、事件当日は何故かブザーが鳴
らなかった……部屋を仕切っていた通常手段では破壊不可能なアクリルの板がなぜかズレ曲がっていた……これは
果たして偶然なのでしょうか?」
一同「まさか……」
 桜の言葉にはっとする一行
(いさむ)「接見に向かったというその弁護士とやらが、吉田淳也殿の仲間だったということでござるか?」
総介「ああ……」
 一体、彼は何の為に凶悪犯を解き放ったのか……
 そして、吉田淳也……彼は今どこにいるのか!?
 また、この事件の背後には場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の中位存在が関与しているのか!?


続

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