Eighter -Midnight Howling-
49ther 〜死を呼ぶハンカチ B〜



#3
 場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の中位存在が放つはイタリア屈指の暗殺チーム、暗殺の七人(サイレントキル)。果たしてEighterはそれを退
けることはできるのか!?
 天四斗(あまよと)某所
 その日、與鷹(よたか)はEighter本部へ急いでいた。
※何故急いでいたのかは不明です。與鷹(よたか)「はっ!?」
 ズドンッ
 與鷹(よたか)が直感的に危機を察知して屈んだ瞬間、先ほどまで頭のあった場所に裏拳が通り抜ける。
ロッソ・ルネディ「チッ」
與鷹(よたか)「貴様……」
 舌打ちしたロッソを睨み付ける與鷹(よたか)
ロッソ「今のを気取られるとは俺も暗殺者としてはまだまだということだな……」
與鷹(よたか)「暗殺者だと!?」
ロッソ「ああ、貴様には恨みはないが、とあるガキが貴様を滅法恨んでいるようでな……死んでもらうぜ!」
與鷹(よたか)「子供!?」
 與鷹(よたか)が子供から恨みを買うことなど当然のことだが、覚えがない。
ロッソ「ガキに恨まれるなんざ、貴様もなかなかの悪じゃねぇか!えぇ!?」
與鷹(よたか)「……」
與鷹(よたか)(はっ!?まさか……)
 だが、子供のような姿を持つ存在から恨みを買うとすれば、それは場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の中位存在しかない。
 であれば、こいつらは場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の中位存在に唆されて襲ってきたということであろうと與鷹(よたか)は考える。
 考えると同時に與鷹(よたか)はジャケットを脱ぎ捨て、臨戦態勢を取る。
※スーツを着込んだままでは死合に影響がでるからね……
與鷹(よたか)「しかし、こんな町中で暗殺とは恐れ入る」
ロッソ「ハッ、人気のない場所に来ないかな、来ないかな……などと期待して、巡ってきたチャンスにかけて暗殺
するなどと二流のやることよ!……一流の暗殺者とは場所を問わずして相手を抹殺するものだ!」
 まぁ、貴様には気取られてしまったわけだが……と自嘲気味のロッソ
ロッソ「見せてみな、貴様の双狼拳(そうろうけん)を!」
 クイクイと手招きで挑発するロッソ
與鷹(よたか)(俺の拳を知っている……か……)
ロッソ「遥か昔、イタリアがまだ若気のイタリーと呼ばれていたころから続く古武術、天心流殺法で貴様を殺して
やるぜ!」
與鷹(よたか)(若気の至りの『いたり』ってイタリア人の意味じゃねぇだろ……)
 更に天心流とかどう考えても日本語である。
※なお、天心流殺法ではなく、天心流兵法(ひょうほう)というモノが実在する。これは江戸初期の古武術で、現代では定期的に
 イタリアでセミナーが開催されているらしい。
 與鷹(よたか)がそんなことを考えているとロッソは胸ポケットから赤いハンカチを取り出す。
與鷹(よたか)(なんだ、あれは……)
 こんな時に出すものがただのハンカチではない。與鷹(よたか)の直感がそう告げる。
ロッソ「これが、あのお方より賜りし俺の秘密兵器、虹女神の逆衣(アイリス・アンチクロス)!」
與鷹(よたか)虹女神の逆衣(アイリス・アンチクロス)!?」
 ロッソが赤いハンカチを両手に巻き付けると次の瞬間、ガントレットへと変化する。
與鷹(よたか)「なっ!?」
 あれはオーパーツだ。見たところ場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)ではなく、場違いな白き遺物(ポジティヴ・オーパーツ)のようである。

#4
ロッソ「死ね!天鬼掌破(てんきしょうは)!」
 ヒュゴッ
與鷹(よたか)(なっ、速ッ!?)
 思った以上のスピードに驚きを隠せない與鷹(よたか)。
 だが、反応できない速さではない。迫る拳に対し、與鷹(よたか)は建物ごと吹き飛ばす闘気を放出し相殺する。
與鷹(よたか)幻狼襲(げんろうしゅう)!」
 ズドオンッ
ロッソ「な、何ぃ!?」
 これにはロッソが面食らい、咄嗟に距離を取る。
ロッソ「す、少しはできるようだな……」
與鷹(よたか)「……」
 なんかもういっぱいいっぱいって感じだ。こんな奴が場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の中位存在が放った刺客だと思うとなん
だかどうにも拍子抜けである。
ロッソ「だ、だが、天心流殺法は、こ、こここ、こんなものではないッ!」
 心なしか怯えているようなロッソ。震える右手をガシっと左手で掴んで落ち着かせようとしている様は見ていて
滑稽でもある。
與鷹(よたか)(こりゃ、早々にケリがつきそうだな……)
 グっと拳を握りしめ、一気にカタをつけようと與鷹(よたか)は一足飛びにかかる
與鷹(よたか)神狼九断(しんろうくだん)!」
ロッソ「八丁砕刃(はっちょうさいじん)!」
 與鷹(よたか)の拳がロッソを捉えんとした次の瞬間、ゾクリと寒気が襲う。
與鷹(よたか)「う、うぉおおおおっ!聖狼躱虚(しょうろうたうろ)!」
 ガキインンッ
 咄嗟の判断で右手を引っ込めると同時に奥義を切り替える。
ロッソ「馬鹿なっ!?」
 與鷹(よたか)が拳を引っ込めた次の瞬間、ロッソの両手が挟み撃ち。腕を引っ込めるのが一瞬でも遅ければ、あの挟み撃
ちにより、右腕がもっていかれたであろう。
與鷹(よたか)「はあああ!」
 そして、與鷹(よたか)の奥義はまだ終わってはいない。回避してから拳打を叩き込むのが聖狼躱虚(しょうろうたうろ)の真骨頂だ。
 ズドムッ
ロッソ「がはあああ!?」
 左の拳が腹に直撃し、ロッソは派手に吹き飛び、意識を刈り取られるのであった。
與鷹(よたか)「ッ……はぁ、はぁ……」
 與鷹(よたか)は知る由もなかったが、先ほどのロッソが繰り出した技は天心流兵法(ひょうほう)念仏貫(ねんぶつぬき)に類する奥義である。
 この念仏貫(ねんぶつぬき)というのは怯み、怯えて見せてから迫る小手を突き斬るという技法なのだ。
 油断を誘い、カウンターを放つ……それを瞬時に見抜けたのは與鷹(よたか)の才能ともいえるかもしれない……
與鷹(よたか)「こりゃ、俺だけを狙ったとは考えにくいな……」
 仲間が危ない……かもしれない!
 與鷹(よたか)は投げ捨てたジャケットを手に取ると羽織る暇も惜しみ、Eighter本部へと駆け抜けるのであった。
 果たして、他のEighterメンバーは無事なのか……


続

前の話へ 戻る 次の話へ