Eighter -Midnight Howling-
44ther 〜とある横道(アストレイ)蒼厄(ブラウカラミティ) A〜



#0
 銀鯱(ぎんしゃち)という組織を覚えているだろうか?
 それは自衛隊海軍の過激派にして、自衛隊海軍の悩みの種だった愚連隊めいた奴らの事である。かつて龍脈エネ
ルギーを無制限に搾り取るシステムを使い、暴走の果てに討伐されたのだが……
 奴らはまだ、完全に壊滅してはいなかった……銀鯱(ぎんしゃち)の残党軍は、各地に身を潜め復活の時を虎視眈々と狙ってい
たのである。
 そして、今、残党軍の蜂起が始まる。

#1
 青ヶ島、某所
 青ヶ島とは八丈島から南へ約80km離れた場所にある火山島。そんな島の一角……その地下にて
*「これにてシステムは完成です」
 灰色の白衣?にモノクルをつけた男性がぽつりと呟く。
 彼は名を網谷ゼルシフォムと言い、日系ドイツ人で流れの狂科学者(マッドサイエンティスト)をやっているという。
※流れの狂科学者(マッドサイエンティスト)ってなんだよ!
 そして、そんな彼の目の前にはまるでジパ〇グに出てきた原子爆弾を彷彿とさせるような無数のパイプが付いた
球体を円柱に閉じ込めたかのような謎の機械があった。
*「フフ……ドラゴンクロニクルはデータを破棄されてしまったが、そこから派生して新たなるシステムを構築す
るとは、流石としか言いようがないな」
 その隣にいる大男は銀鯱(ぎんしゃち)残党軍のリーダー、鴨川狂蔵(くるうぞう)である。
網谷ゼルシフォム「いや、残骸とはいえ、データが残っていたことが役立った……これがなければシステムは完成
しなかった」
 ゼルシフォムが作り上げたシステム……それはドラゴンクロニクルをベースに独自に作り上げたシステム……そ
の名も、ボルツァーマトム!
 ドラゴンクロニクルが龍脈エネルギーを取り出し、利用するシステムだったことに対して、このボルツァーマト
ムは原子力のエネルギーを利用する代物である。が、しかし、最早コンセプトが同じだけの全くの別物と考えた方
がいい。
 ドラゴンクロニクルが龍脈のある場所でないと最大限に効果を発揮できないのに対し、このボルツァーマトムな
らば、核燃料さえあればどこででも利用可能というメリットがある。
※なお、欠点は放射能汚染なのでデメリットの方がデカすぎるんですけど、それは秘密である。
ゼルシフォム「では、私はこれにて失礼するよ……」
鴨川狂蔵(くるうぞう)「おうよ、世話になったな……」
 ゼルシフォムはそう言い残し、去っていく。どうやら彼にはまだやることがいっぱいあるという。
 あるいは、今回のシステム構築でインスピレーションが湧いたのかもしれない。
*「狂蔵(くるうぞう)隊長……博士を我々の専属にしなくていいのですか?」
狂蔵(くるうぞう)「無駄だろうな……奴は一つ所にいつまでもいることを嫌う故に流れの狂科学者(マッドサイエンティスト)となった漢だ」
 研究開発している間ならば、同じ場所にいつまでも留まってくれるのだろうが、それが終わった今、奴がここに
いる理由はないのだろうよ……
狂蔵(くるうぞう)「これより我々は八丈島を取り戻す!」
一同「オ〜!我らの門出に栄光あれ!」
 いや、八丈島はアンタラの物じゃないから!

#2
 その頃……
 神奈川県、横浜市、自衛隊海軍基地
 自衛隊海軍特務、コードネーム:シーゼロこと坂本ぜよ子は自衛隊海軍最高司令官たる北郷南留(みなと)に呼び出され彼
女の元へはせ参じていた。
 まずはドアをノック。
北郷南留(みなと)「入り給え」
シーゼロ「はっ、自衛隊海軍特務、シーゼロ、ただいま参上仕りました!」
 部屋に入り、ビシィっと敬礼するシーゼロ
南留(みなと)「……二人しかいないから、楽にしていいわよ」
シーゼロ「……」
 とはいえ、軍人的な楽にすると、一般的な楽にするとは違うのだが、シーゼロは前者を選んだ。軍人気質、ここ
に極まれりというヤツである。
南留(みなと)「今回あなたを呼んだ理由は分かりますか?」
シーゼロ「いえ……」
 どかりと机の上で腕組みし、その上に顎を載せて南留(みなと)は呟く
南留(みなと)銀鯱(ぎんしゃち)……覚えているかしら?」
シーゼロ「忘れるわけがありません……あの、我ら自衛隊海軍の癌細胞の事は!」
南留(みなと)「今回呼んだのはその件よ」
シーゼロ「そのことでしたら、褒賞はいらないと……」
南留(みなと)「あ〜、違うの……」
 と、言うと?とシーゼロが首をかしげると。奴らは確かに壊滅した……けれどもそれで全てが終わったわけじゃ
なかったのよ……と南留(みなと)が続ける
シーゼロ「まさか……」
*「残党軍だ!」
シーゼロ「なっ!?」
 突如、背後より声が聞こえる。慌てて振り向くと、そこには世界でただ一人、大統領だろうが即決で逮捕できる
究極の警察、SRAPの(かみ)総介が桜を傍に連れて立っていた。
シーゼロ「アンタは……あの時の?」
 八丈島で出会ったことは記憶に新しい。
 だが、そんなことよりもいつの間にやって来たんだ!?とシーゼロは驚きを隠せなかった。これでも一端の軍人
である、人の気配を読めなくては軍人は務まらない。
※個人差はあります。
南留(みなと)「あら、知り合いなの?……だったら話は早いわね」
シーゼロ「どういうことです!銀鯱(ぎんしゃち)の残党軍とは……」
(かみ)総介「それはこちらから話そう……山咲(やまざき)!」
山咲(やまざき)桜「はい、警部」
※こちらから話そうって言っておきながら桜に丸投げすんのかよ!って突っ込んではいけない。
桜「確かにあの時、銀鯱(ぎんしゃち)は壊滅しました……八丈島にいた構成員は貴方方自衛隊海軍の協力もあり、拘束する事は
出来ました……ですが、あそこにいたメンバーが銀鯱(ぎんしゃち)の全てではなかったのです」
シーゼロ「そういうことかッ!」
 ぬかった!とギリっと歯軋りするシーゼロ
桜「奴らは今、リキッドタイガーの名で活動をしており……」
シーゼロ「何だと!?リキッドタイガーと言えば青ヶ島付近を荒らす海賊ではないか」
南留(みなと)「ええ、そうなのよ……」
 まさか、リキッドタイガーが銀鯱(ぎんしゃち)の残党軍だったとは……
 だが、総介が来たということはそれだけではないのだろう。この件、背後には何があるのか!?


続

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