Eighter -Midnight Howling-
39ther 〜引き返せぬ到達点 D〜
#7
白拍子三姉妹、深層心理にてそれぞれの試練に立ち向かう……果たして、彼女らは試練に打ち勝てることができ
るのだろうか!?
ここで、話を深層心理から現実世界に戻してみます
過初叨素(「……ん?」
過初叨素(が何かを察知し、かんなの方を見やる。
すると、ゆらりとまるで幽鬼の様に両手をだらりと下げたままかんなが立ち上がる
梓與鷹(「か、かんな……?」
白拍子かんな「……」
だが、明らかに様子がおかしい……死んだような……焦点のあってない眼が虚空を見つめる。
過初叨素(「つまらん、下らん、つまらん、つまらん!」
そんなかんなを見て、苛立つ過初叨素(。
過初叨素(「ガッカリだ……」
與鷹(「な、何……が……」
最早、そこにはかんなにご執心でかんなを妾にしようとあの手この手で躍起になっていた過初叨素(の姿はなかっ
た。
ただ、目の前にいる存在を歯牙にもかけず蹂躙しつくすだけの逕庭神(の姿があった。
過初叨素(「消えろ」
レンの硝子……その刃を再構成させ、上段から一気にかんなめがけて振り下ろす
與鷹(「や、やめろ!」
しかし、悲しきかな、與鷹(は叫ぶことしかできない。過初叨素(の圧倒的な神氣の前に、身が竦んで動けないのだ
……
かんな「……」
ガドッ
過初叨素(「何!?」
しかし、過初叨素(の必殺の一撃を左手で受け止めるかんな。
そのままぐぐぐっと力を籠めると、レンの硝子の刃が粉々に砕け散る。
過初叨素(「馬鹿なっ……この力は……」
かんな「……」
驚愕に眼を瞠る過初叨素(。そんな過初叨素(に死んだ目のかんなはニヤリと笑みを浮かべる。
と、同時に、良人(に助太刀するべく、蒐葡貮繰(もバルザイの偃月刀を召喚し、一足飛びにかんなに迫
る。
過初叨素(「やめい!」
蒐葡貮繰(「……」
かんなの首筋で止まるバルザイの偃月刀。
死合には手を出すな……という意味ではない。危険だから触れるなという意味だ。
過初叨素(「この力……神殺し……?」
蒐葡貮繰(「まさか、そんな……」
砕かれたレンの硝子を見ながら茫然と呟く過初叨素(。
かんなの内に眠るナニカに興味があり、それを無理やりこじ開けようとして失敗した過初叨素(だったが、しかし
実際には失敗していなかったのだろう。
今の状態こそ、かんなの内に眠るナニカが表に出てきた状態。
好奇心はネコミミ少女をベッドの上で壊(す。とはよく言ったものだ
※違ッ
元人交喙(「一体何だってんだ?」
與鷹(「俺にわかるかよ……」
神の身でもわからないようなことが人の身でわかるものかよ!
#8
蒐葡貮繰(「神殺しの力……」
自身を脅かす力があるなどとは思いもしない。神とは人よりも上の存在だから。
過初叨素(「気に入らんッ」
かんなをギロリと睨みる蹴る過初叨素(。砕かれたレンの硝子の刃を再び組み直し、襲い掛かる。
かんな「……」
先ほどと同じように左手でレンの硝子を受け止め、右手手刀で薙ぎ払うかんな。
ズダンッ
過初叨素(「ぐはあっ!?」
またしても砕かれるレンの硝子、更に手刀で横一文字に切り裂かれる。
蒐葡貮繰(「そんなっ!」
更にかんなは回転すると同時に背後の蒐葡貮繰(にも手刀を叩き込む
蒐葡貮繰(「きゃう!?」
かくて、蒐葡貮繰(もまた、同じように斬り飛ばされるのであった。
かんな「……」
蒐葡貮繰(を一瞥した後、かんなは再び過初叨素(の方を向く。滅せよ!過初叨素(とでも言わんばかりの眼力だ。
蒐葡貮繰(「あくまで狙いはあの人ですか……させませんっ!」
過初叨素(を狙うかんなを背後から襲い掛かる蒐葡貮繰(。
かんなめがけてバルザイの偃月刀を振り下ろす蒐葡貮繰(。兇刃がかんなを捉えたかと思った次の瞬間、かんなの
姿がぶれる
一同「え?!」
過初叨素(「後ろだ!」
蒐葡貮繰(「はっ?」
かんな「……」
ドガンッ
蒐葡貮繰(「がふっ!?」
脇腹に掌底を叩き込まれ吹き飛ばされる蒐葡貮繰(。
過初叨素(「そんな……馬鹿なっ!」
信じられない、とでも言いたげな過初叨素(がそこにいた。
それはかんなの動きが予想を超えて早かったからでは……ではない。かんなの掌底で蒐葡貮繰(が吹き飛ばされた
からでもない……
過初叨素(が瞠目し、目が離せなかったのは蒐葡貮繰(……彼女が受けたダメージだ。
與鷹((何だ?奴は何を驚いているんだ?)
特に過初叨素(が驚くような光景があるとは思えない。
砕かれた鎧、裂かれた衣、晒された肌……そこにあったのはそんな三拍子揃った蒐葡貮繰(の姿だけだ。
だが、それこそが十分異常な出来事だったのだ。神という存在(もの)は人間に傷つけられることがないからこ
そ神なのだ。
まして過初叨素(や蒐葡貮繰(は域外神(アウターゴッド)の中でも特に常軌を逸した力を持つ逕庭神(の一柱だ。
そんな常軌を逸した神氣を持つ存在の、装備を破壊するなどとありえないことだった。
※え?レンの硝子はいいのかって……?そ、それは……そう!レンの硝子だけ砕いて使うことができる特殊なモノ
だったんだよ!(苦し紛れか!)
過初叨素(「……あの力、神殺しではない……」
#9
*「そう、これは神滅の力……」
與鷹(「なっ、なあ!?」
交喙(「うおおおっ!びっくりしたぁ!」
いつの間にか、そこには《シルエット》がいた。
どこからやってきたのか、いつ出現したのか、まったくもってわからない。そもそも、気配がない……
過初叨素(「ありえん!神滅の力などと……」
蒐葡貮繰(「そうですよ、たかが人間が、神滅の力など手に出来るはずがない……」
*「君はやりすぎたんだよ……彼女の深層心理の奥深く、自分自身でも知りえなかった神滅の力を呼び覚ましてし
まった……」
過初叨素(「馬鹿なことを……」
*「でも、神殺しの力ではなく、神滅の力だということは分かるのだろう?」
蒐葡貮繰(「それは……」
こんな芸当、神滅の力でしかありえない……蒐葡貮繰(は自分の腹部をみてそう思う。
*「まぁ、いいんだけどね……」
そのまま《シルエット》は静かにかんなの元へ歩み寄る
與鷹(「お、おい、一体何を?」
*「存在してはならない力を……消し去る……そのために、ここに来た」
與鷹(「なっ、まさか、かんなを殺すのか?」
過初叨素(「貴様ぁッ」
過初叨素(の殺気が異常に膨れ上がる。
この死合、一体どうなってしまうのか!?
END
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