Eighter -Midnight Howling-
39ther 〜引き返せぬ到達点(ポイント・オブ・ノーリターン) C〜



#5
 過初叨素(ヨグ=ソトース)との修行……その最中砕け散ったレンの硝子がかんなら三人に降り注ぐ。
 これは自分の深層心理に立ち向かう試練。その果てに、三人は今より力を手にすることができる……のか!?

 ここで、まずはかなりの深層心理に視点を向けてみましょう……
白拍子かなり「こんのぉ、巫山戯(ふざけ)んじゃないわよっ!」
 心に深く突き刺さるレンの硝子破片……それは比喩的表現であるが……ともかく、全身に突き刺さっている硝子
破片を、真殺影刃を毛抜きみたいなモノにシェイプシフトさせて引き抜く。
かなり「ぐっ、ぬぬぬぬっ!」
 ズキズキ、ジクジクと痛む心を無理やり黙らせ、硝子破片を取り除く作業を続けるかなり。
かなり「見てなさい、過初叨素(ヨグ=ソトース)……タダじゃおかないわよ!」
女王禍(ジョーカー)(随分と荒れている様子)
かなり(当然でしょ)
 やられたら、やり返す、(べき)乗返しだ!(一以下は勘弁な!)がモットーのかなりだからこその憤慨である。
※倍返しじゃなくて(べき)乗返しって過剰防衛にもほどがあるわ……
かなり(乙女の柔肌をキズモノにするなんて極刑モノよ!)
 まぁ、実際には肌に傷一つついてないんですけど……
女王禍(ジョーカー)(ところで、アレは何かわかるか?)
かなり(え?なんですって?)
 女王禍(ジョーカー)の視線の先、そこにそれはあった。
かなり「なっ!?」
 かなりの深層心理に眠る自分でもわからぬソレが、音もなく忍び寄る
かなり「くっ……」
 それは、一体……

 と、その正体については一旦おいといて、次はかれんの深層心理に視点を向けてみることにしましょう。
白拍子かれん「い、痛いッ、痛いッ痛いッ!」
 硝子破片が突き刺さっているのは心……それでもかれんは痛さにもんどりうっていた。
かれん「あ、ああ、痛い、痛い痛ぁい(はぁと)」
 しかし、徐々に頬を紅潮させ、目にハートマークを浮かべ、艶っぽい声で叫ぶようになっていく……
 ダメだコイツ、早く何とかしないと……
※いや、もはや手遅れな気がしますが……
 やっぱり、かれんは自分が否定しようとも、どMなんですね……
奠夷瑪(ディーヴァ)(やれやれ、これでは取り付く島もないな……)
 被虐の愉悦に狂気するかれんに奠夷瑪(ディーヴァ)も呆れ顔である。
 かれんはアレだ、やられたら、やられっぱなし。(むし)ろもっとやって〜♪
奠夷瑪(ディーヴァ)(仕方あるまい……)
 ならば、力尽くで正気に戻すまで……両手に剣を持つ奠夷瑪(ディーヴァ)。
 痛みも愉悦……とは言えども、限度がある。ならば、奠夷瑪(ディーヴァ)の暴力をもってしてかんなのどMを凌駕する激痛を
喰らわすのみ。
奠夷瑪(ディーヴァ)(死ぬなよ……)
 かくて、兇刃がかれんに迫る!

#6
 どSのかなり、どMのかれんの深層心理はこれくらいにして、かんなの深層心理はというと……
白拍子かんな「くっ……」
 普通に苦痛に顔を歪めるかんな。
 どSでもどMでもなければ、まぁ、普通の対応であろう。
茜瑙哭(セドナ)(だが、それでも折れることはない……)
かんな(当然です!)
 たとえ傷つき力尽きても、心の牙は折れない。
 気高き心故に、茜瑙哭(セドナ)はかんなに力を貸し与えている。位の破壊神たる自分の器に足るとして……
茜瑙哭(セドナ)(しかし、悪趣味な真似をする……)
かんな(え、ええ……)
 ぷちぷち……ぷちぷち……
 この音は心に突き刺さるレンの硝子破片……そして、自分という個体(セカイ)を引き裂く音……
茜瑙哭(セドナ)(……あれは……なんだ?)
かんな(……え?)
 茜瑙哭(セドナ)の視線の先……そこには光り輝くナニカがいた。
 人の輪郭を持つが眩い光を放つナニカ
かんな「あ、あれは……何!?」
 かんなの超運をもってしても全く予測できない謎の存在。
 ゆっくりと一歩一歩かんなの元へ歩み寄るそれは、死神の様に不吉だった。
※ちなみに、かなりの深層心理の中でも同じようなモノが……が、しかし、かれんの深層心理にはソレはなかった
 ……これは何を意味するのか!?
茜瑙哭(セドナ)(気を付けろ、あれは……危険だ)
 言われなくともわかる。アレが何なのか、さっぱりわからないが、それでも、たった一つだけわかることがある
……あれは、自分という人間(セカイ)を終焉に導くモノ
かんな「……あなたは……何?」
 神滅超越者(ラグナロクエクセル)を突きつけるかんな。
 だが、意に介することなく、ソレはゆっくりと間合いを詰め、神滅超越者(ラグナロクエクセル)の刃を左手で握り掴む。
 ぐわっ
かんな「あ、あああああっ!」
 かんなの眼前に迫ったソレは右手でかんなの首を掴み、持ち上げる。
かんな「うっ……」
 全身から光を放ち、輪郭しか見えないはずのソレが……口を開き、何か喋ったのを察知したかんな。
 何の音も聞こえないはずなのに、かんなはソレの声を聴いた……気がした。
かんな「あ、あああ、ああああああっ!!」
 そして、かんなの、あらんかぎりの絶叫が響き渡る。
かんな(そうか、これは……)
 ぶつんっ
茜瑙哭(セドナ)(何!?)
 次の瞬間、突如何かがぶっちぎれる音と共に、かんなの深層心理はまるでブレーカーが落ちたかのように真っ暗
闇に包まれる。
 果たして、かんなの身に、一体何が!?


続

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