Eighter -Midnight Howling-
40ther 〜無得点の折り返し(リターン・オブ・ノーポイント) A〜



#0
 来る人の姿を持つ上位な場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)との決戦に向けて、過初叨素(ヨグ=ソトース)を相手に修行をすることになった白拍子
三姉妹。
 しかし、その最中、過初叨素(ヨグ=ソトース)の手により三姉妹は深き闇へと昏倒してしまう……
 それだけで終わればまだよかったのだが(いや、全然よくないけど……)突如起き上がったかんなは未知なる力
で過初叨素(ヨグ=ソトース)を追い詰める。
 そして、そこへ唐突に出現する《シルエット》!
 果たして、この修行、一体どうなってしまうのか?!

#1
過初叨素(ヨグ=ソトース)「その女は我が妾となる女、殺すことは許さん!」
梓與鷹(よたか)「いや、お前の妾でもないから!」
 思わず突っ込んでみるも過初叨素(ヨグ=ソトース)に睨まれて身が竦む與鷹(よたか)であった。
*「殺す?……まさか、ただ、存在をなかったことにするだけだよ」
元人交喙(いすか)「そっちの方がヒドイじゃねぇか!」
 いやいや、存在がなかったことになるんだから、悲しむこともないんだよと諭す《シルエット》
過初叨素(ヨグ=ソトース)「人ならばな……だが、我らは違う」
*「そこは諦めてもらうしかないかなぁ……」
過初叨素(ヨグ=ソトース)「舐めるなよ」
 ズズズッと過初叨素(ヨグ=ソトース)の神氣が辺りを浸食、気温がぐっと下がるような感触を覚える……
 いや、現にまるで冷凍庫の中に放り出されたかのような寒さを覚える。
*「そちらが逕庭神(アザーゴッド)だとしても、こちらを止めることは出来ないよ」
蒐葡貮繰(シュブ=ニグラス)「……」
 《シルエット》に対して無言で睨み付けるだけの二柱。それはつまり、《シルエット》の言葉が正しいというこ
となのだろうか……?
*「そうだ、ときに、彼女の名前を憶えているのかな?」
過初叨素(ヨグ=ソトース)「……」
 神がいちいち人の名前を覚えることなどない……その傲岸不遜な態度が神だ。
元人交喙(いすか)(つ〜か、與鷹(よたか)が何度か叫んでいただろう……)
與鷹(よたか)(いや、聞こうとしなければそれはただのノイズにすぎないってことか……)
 呆れて物も言えない交喙(いすか)と、相手が神だからこそか……と諦観にも似た感情で思う與鷹(よたか)
*「だったら、覚えておくといいよ……彼女の名前は『かんな』だ……」
蒐葡貮繰(シュブ=ニグラス)「かんな……」
過初叨素(ヨグ=ソトース)「……まさか、かんなが、神滅の力を持つのは……」
*「それ以上は言わない方が身のためだ」
與鷹(よたか)(どういうことだ?)
 かんなには何か特殊な意味を持つとでも?
 與鷹(よたか)が首をかしげている中、過初叨素(ヨグ=ソトース)蒐葡貮繰(シュブ=ニグラス)は《シルエット》を殺そうと張りつめていた神氣を和らげる。
 それは、かんなを諦めたという意味なのか?
*「大丈夫、彼女は存在が消えるけれども、『かんな』は消えないよ」
與鷹(よたか)「いや、意味が分からん」

#2
白拍子かなり「ちょっと待ってくれないかしら?」
與鷹(よたか)「かなり!?」
 いつの間にか、かんなと一緒に昏倒していたかなりが目を覚ましていた。
 しかも、かんなと違って暴走していない。さらに言うと今まで以上に女王禍(ジョーカー)の神氣を感じる。これが、修行の結
果であり、過初叨素(ヨグ=ソトース)がかんなに求めたものなのか……
*「ほう?そちらが止めると?」
かなり「私が止めるんじゃないわ、かんなが勝手に止まるだけよ」
 なんか物語シリーズに出てきそうな言い回しである。
 その後、過初叨素(ヨグ=ソトース)をギラリと睨み付け、指差すかなりはこう叫ぶ
かなり「それと、さっきはよくも乙女の柔肌に硝子をぶっ刺してくれたわね!あとで階乗返しよ!」
一同「階乗返しって……」
 もとが5以上ならば(べき)乗返しよりもオーバーキルじゃねぇか!

蒐葡貮繰(シュブ=ニグラス)「それはさておき、どうするつもりなのかしら?まさか、文字通り、待て……とでも?」
 とりあえず蒐葡貮繰(シュブ=ニグラス)が疑問を口にする
かなり「時間が解決してくれるなら、それでもいいんだけれど……」
 そうも言ってられないわよねぇ……とかんなを見ながらかなりが呟く。
かなり「それに、妹の暴走を止めるのは姉の役目だからね」
 珍しくマトモなことを言うかなりであった。
かんな「……」
 そして、かんなは過初叨素(ヨグ=ソトース)でも、蒐葡貮繰(シュブ=ニグラス)でも、《シルエット》でもなく、かなりが敵だと判断。
 焦点のあってない目でかなりを見つめるとともに一気に襲い掛かる。
かなり「かんな、いい加減に目を覚ましなさい!」
 ドガンッ
一同「ええええ〜〜〜!?」
 一行が驚愕するのも無理はない。一気に間合いを詰めてかなりに殴り掛かったかんな……そんなかんなの魔手を
かなりは近くで昏倒していたかれんをむんずと掴み、盾の代わりに使用したからだ。
與鷹(よたか)「お、おい、かなり」
かなり「オ〜〜〜ッホッホッホッホッホ、さっきも言ったでしょ?妹の暴走を止めるのは姉の役目だと」
一同「い、妹の暴走を物理的に姉で止めるなよ!」
 かれんはかんなの姉なので、正しく……と言ったところだ。
かんな「……」
 どっどっどっどっ
 更に、殴る、殴る、殴る!
 かなりはそれをかれんを盾に防御、防御、防御。
かなり「かんな、早く目を覚ましなさい、さもないと取り返しのつかないことになるわよ?」
 主にかれんが、とぼそりと呟くかなり。
 いや、いくらなんでも無茶苦茶だ!
 なお、かんなのついでにかれんの目を覚ますためにかなりはかれんを盾にこき使ってるのだとう。
 本当かなぁ……?
 ともかく、かんなは正気に戻るのか!?


続

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