Eighter -Midnight Howling-
37ther 〜南米に潜む域外神(アウターゴッド) B〜



#3
 南米マナウス……この魔力の乏しい区域には、何か得体の知れない力が満ちている!?
 アリエラらのキャラバンファミリーの一人、ヴァレイ・ショーランはまるで狂ったかの如く雄たけびを上げなが
らマナウスを疾走している……
ヴァレイ・ショーラン「ヒィア〜〜〜ッハッハッハッハァアア〜〜!」
 マナウス調査のちょっとしたBGM……なわけはないな。
梓與鷹(よたか)「ところで、その、キャラバンファミリーには他にどんな奴がいるんだ?」
カルロス・エスピンガルダ「確か、女装子爵のサークルク・エスレバンと六天侯爵のネクス・ドライツェ」
元人交喙(いすか)「ナントカ爵ってのばっかいる中、殲滅卿だけ仲間はずれなのな……」
 そう思いたいのは分かるが……
ローザ・エスピンガルダ「そして、爵位の旅団という名前で呼ばれて……」
與鷹(よたか)「爵位の旅団ねぇ……」
ローザ「あ、いや、そう呼ばれていたらいいなぁって……」
一同「アンタの個人的な感想かいっ!」
 思わず突っ込む一行であった。

 それはさておき、一行がしばらく進むと、目の前にテントが現れる
與鷹(よたか)「これは……?」
リーザ・エスピンガルダ「パパとママのテントだ!」
 駆け寄っていくリーザだったが、しかし、テントの中には誰もいなかった。
與鷹(よたか)「まだ近くにいる……というわけでもなさそうだな……」
 テントの開かれた入り口から中に雨が入って乾いた形跡が見られる。
 ここで野営をして、ちょっと外に出ていく……となってその後帰ることが出来なくなったのではないかという推
測だ。
エルザ・エスピンガルダ「みて、これはパパの手記だわ!」
 テントの近くに落ちていた手帳を見てエルザが呟く
與鷹(よたか)「どれどれ……」
 早速手記を確認してみる。
交喙(いすか)「〇月×日……あ、ありのまま、今起こったことを話すぜ!『女装子爵が突如巨乳の美女になった』……な、
何を言っているのかわからないと思うが、俺も何をされたのかわからなかった。頭がどうにかなりそうだった……
超能力だとか突然変異だとか、そんなチャチなモンじゃ断じてねぇ!もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ」
一同「……」
 他のページにも疾走男爵が突如狂ったかのように辺りを疾走し始めたことや、六天侯爵がおれは火消しの風と言
いだし、たき火やらなにやらあらゆる火元を消す奇行をするようになった……など書かれていた。
與鷹(よたか)「これは……」
白拍子かんな「ええ、得体の知れない力に触れ過ぎた結果でしょうね……」
エルザ「こっちを見てください」
 手記の最初の方を見せるエルザ。
與鷹(よたか)「ん?どうした?」
 そこには今回の調査の目的みたいなことが書かれていた。

#4
エルザ「これから我々が向かう先は『アビスの大穴』と呼ばれる……未だ人類が足を踏み入れたことがない人跡未
踏の魔窟……」
 なぜ、今まで誰の目にも触れることがなかったのか……それは第一に数々の調査団がマナウスを調べても見つか
らなかったこと……そして、幾人かは調査の最中で忽然と消え失せたこと……
 これらのことから呪われた場所として忌避されていた。
 だが、しかし、数日前に日本人の探検家、サザイ・ガンニンがアビスの大穴へ至る道を発見し、そこから一つの
アーティファクトを持ち帰った……と書かれている。
リーザ「それが星の羅針盤と呼ばれる代物であり、アビスの大穴を指し示す方位磁針であり、アビスの大穴に入る
ための鍵でもあるという……」
交喙(いすか)「このサザイ・ガンニンなる人物はきっと世界に名を馳せたトレジャーハンターに違いない」
與鷹(よたか)「おいおい、あのなぁ……」
 交喙(いすか)の発言に呆れ顔の與鷹(よたか)
かんな「いえ、交喙(いすか)さんの言葉は正しいです」
交喙(いすか)「ほら見ろ!」
 運の女神のお墨付きだぜ!と誇らしげな交喙(いすか)
かんな「ですが、この人は十年も前に死んでいる人物です……」
一同「はぁ、何だって?」
 かんなの発言に一同唖然
※かなりは剛運で察知しているのでその限りではありません
かんな「交喙(いすか)さん、あなたもよく知っている人ですよ?」
交喙(いすか)「どういうことだよ?」
かんな「『さざい』というのは、『みそさざい』のことです。……そして、それを漢字で書くと……」
 手記の空白のページに鷦鷯(みそさざい)と書いて見せるかんな
交喙(いすか)「なっ!?」
 驚くのも無理はない、その漢字は間違いなく、交喙(いすか)の父、鷦鷯(しょうりょう)だった
與鷹(よたか)「じゃ、まさか、このガンニンってのは……」
かんな「はい、元人ですね……」
カルロス「どういう事なんですか?」
與鷹(よたか)「十年以上も前に死んだはずの漢の名をかたってアビスの大穴についての情報を告げる……これは明らかに罠
だということだ」
エルザ「そんな……」
交喙(いすか)「おのれ、俺の父の名を騙るとはいい度胸じゃねぇか!ぶっ殺す!」
 ドカンと近くの木に拳を叩き付けて叫ぶ交喙(いすか)。ってか殺すとか穏やかじゃねぇな……
與鷹(よたか)「呪われた土地、マナウスにおびき寄せる罠……だとすれば、一体誰が何のために?」
白拍子かなり「オ〜〜ッホッホッホッホッホ!それくらい、ちょっと考えればわかることよ」
 それがおびき寄せたかったのは私たち……つまり、これは……


続

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