Eighter -Midnight Howling-
35ther 〜百万(メガ)電流眠中夢索(ドリーミング) B〜



#3
 彷徨える変魂(チェンジリング・ソウル)、その本質は魂の交換。
 徒勝大和(とかち・やまと)はバタフライナイフの魂をチェーンソーと、弓矢の魂をマシンガンと交換して鍼暴(はりぼう)組正統派を一蹴しよ
うと考えたが、しかし、そんなものが総介らに通用するわけがなかった。
徒勝大和(とかち・やまと)「チッ、ならば、仕方あるまい弓を捨ててナイフで叩っ斬れぇ〜」
一同「おおお!」
 大和(やまと)の号令に弓の皮を被ったマシンガンをその場に放り投げ、バタフライナイフの皮を被ったチェーンソーを手
に襲い掛かるソンニャーレのメンバー
(かみ)総介「愚かな事だな……」
 ギャギギギギギギギッ
 迫るバタフライナイフをの皮を被ったチェーンソーを右の蒼王の刃(ブルーロード)と、左の藍后の刄(ブルーエンプレス)で受け止める総介。
白拍子かんな「はっ」
 かんなの方は神滅超越者(ラグナロクエクセル)で迫る凶刃をスパスパと切り裂いていく。
 まぁ、かんなの超運があってこそ絶対防衛圏である。
山咲(やまざき)桜「警部!」
 いつもなら、俺に二刀使わせるとは……とか言う流れだが、まぁ、今回は流石にね……
 そんな感じで総介を案じてみる桜だが、まぁ、この程度のチンピラ相手に総介が劣勢になることもないだろうと
すぐさま平常運転に戻るのであった。
 ギャギギギギギ……ぃぃいいん
 激しい火花と振動が続くのだが、暫くの後、バタフライナイフの皮を被ったチェーンソーはおとなしくなる。
大和(やまと)「な、何だと?」
 チェーンソーで神を真っ二つにすることは出来ても、神器は破壊できないと、そういうことだ。
※いや、神を真っ二つにするって、それゲームの話でしょ……
*「なっ、そ、そんな……」
 バタフライナイフの皮を被ったチェーンソーを思わずその場に落として少しずつ後退りしだすソンニャーレのメ
ンバー
大和(やまと)「チッ、くそっ……使えない奴だ……」
権狐兵十(ごんこ・へいと)大和(やまと)、貴様の悪行もここまでだな!」
大和(やまと)「ハッ、貴様も悪の権化だろうが!」
 いや、それはそうだけど……どっちも悪の権化だけれど……大和(やまと)の方が外道すぎるから!
大和(やまと)「仕方ない……お前ら、ちょっと下がってろ……」
一同「はっ……」
 そういわれて、ソンニャーレのメンバーが大和(やまと)の後ろへ下がっていく
大和(やまと)「こうなったら仕方ねェ……俺がうって出る!」
総介「どうやら覚悟を決めたか……」
兵十(へいと)「待ってくれ、これは鍼暴(はりぼう)組の問題……その責任は、俺が()る!」
 総介の言葉を遮り、刀を手に前に出る兵十(へいと)
総介「まぁ、いいだろう、好きにしろ」
 いや、あまりに上から目線すぎる……

#4
大和(やまと)「死んでもらうぞ、兵十(へいと)!」
 叫ぶとともに持っていた刀を抜刀し、鞘を放り投げる
兵十(へいと)「遅いッ」
 抜刀はもっと先にしておくべきだったな!と兵十(へいと)が一気に間合いを詰めて大和(やまと)に斬撃を浴びせる
大和(やまと)「フッ」
 ズッ
一同「何ぃ!?」
 必殺の斬撃が大和(やまと)を両断する……かに思えた次の瞬間、まるで大和(やまと)が刀に引っ張られるかのように横に移動して
事なきを得る。
 更に同じことがもう一回。また刀に引っ張られるかのように大和(やまと)が動いて斬撃が兵十(へいと)に迫る
兵十(へいと)「クッ」
 しかし、兵十(へいと)とて数々の修羅場をくぐってきた身。この程度で殺されてしまうようならば鞘火の護衛は務まらな
いのだ。
梓與鷹(よたか)「お、おい総……」
 あんな無茶苦茶な動きをするのはおかしいというか、それには必ずわけがあるはずだ……と與鷹(よたか)は総介の方を見
る。
総介「ああ……」
桐辻鞘火「どういうこと……まさかっ?!」
 総介がコクンと頷くを見て、鞘火も悟る。
桜「ええ、そのまさかです……有機物と無機物の魂を交換……」
與鷹(よたか)「んなぁッ!?」
 そう、大和(やまと)が今持っている刀は刀の皮を被った人間……
 実質二人で兵十(へいと)に襲い掛かっているようなものなのだ!
兵十(へいと)大和(やまと)、貴様ッ!」
 どこまで人の道を外せば気が済むんだ!と兵十(へいと)の怒り
大和(やまと)「馬鹿がッ!極道の人間が人の道を歩むことこそが、極道にとって人の道に外れるというものだ!」
 確かにそうかもしれないけど、そういうのいいから……
兵十(へいと)「ほざけ!」
 ギロリと睨み付けつつ大和(やまと)に横薙ぎを繰り出す兵十(へいと)大和(やまと)「おぅふッ?!」
 刀の皮を被った人間が大和(やまと)を強制的に退かせる。
 その際、柄が大和(やまと)にブチ当たって思わず苦悶の表情を見せる大和(やまと)であった。
兵十(へいと)大和(やまと)ッ!」
かんな「……鞘火さん」
鞘火「はい……?」
 この隙に……と兵十(へいと)が飛び込んで斬撃を見舞う。
 しかし、刀の皮を被った人間が大和(やまと)を助けるべく、強制的に横移動。
かんな「今です!」
鞘火「はっ!」
 ズバッシャアアッ
 かんなの頼み、そして、かんなの超運がタイミングを見逃すわけがなかった。
 強制横移動の先に鞘火が投げつけたのは墨汁。プラスチックの容器ごとズバっと両断し、刀身が墨で真っ黒にな
る。
大和(やまと)「なんだこれは……墨汁!?……イヤガラセかッ!」
兵十(へいと)「フッ、それで貴様の刀は目が見えまい!」
大和(やまと)「あっ!」
 二人がかりを封じる最高の手……この状態ならば、刀の皮を被った人間が大和(やまと)を助けたくても動きは鈍る。

#5
大和(やまと)「クソがっ!」
 刀を近くの池めがけて放り投げ、左手を懐の中へ
兵十(へいと)大和(やまと)!覚悟ッ!」
大和(やまと)「貴様を殺すのは、貴様だぁ!」
 懐の中から取り出したるは彷徨える変魂(チェンジリング・ソウル)
 最大にして最後の逆転劇……それは斬撃を叩き込まれる瞬間に大和(やまと)兵十(へいと)を交換し、兵十(へいと)を殺すこと!
 ズバッ
大和(やまと)「おごああああっ!?」
 姿形は大和(やまと)……が、姿形は兵十(へいと)……の手により上段から袈裟斬りされてその場に崩れ堕つ。
 そして、姿形が兵十(へいと)……はくるりと(きびす)を返し総介らのもとへやってくる。
兵十(へいと)「お嬢、逆賊、大和(やまと)、討ち取ったり!」
 そのまま鞘火に傅く兵十(へいと)
大和(やまと)「ぐ……がああああッ馬鹿な……な、なぜ……交換されないんだぁッ!」
かんな「それは、彷徨える変魂(チェンジリング・ソウル)が既に壊れているからですよ」
大和(やまと)「馬鹿な、そんな……」
 左手の方を見て愕然とする。彷徨える変魂(チェンジリング・ソウル)に藍后の刄が突き刺さっていた。
 そう、偶然壊れたのではない、総介がぶっ壊したのだ……
総介「さて、ではあとは有象無象を逮捕すればこの騒動も終わりか……」
*「に、逃げろぉお〜〜!」
 だが、しかし、逃走虚しく、ソンニャーレのメンバーは全員逮捕されるのであった。
 そして、鍼暴(はりぼう)組は正統派がこれまで通り、鞘火を組長とし、義理と任侠で裏の世界を進んでいく
 ……そういえば、刀と交換された人はもう元の姿に戻れなくなってますね……


END

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