Eighter -Midnight Howling-
34ther 〜色違(いろち)電流眠中夢索(ドリーミング) B〜



#3
 鍼暴(はりぼう)組……それは任侠に生きる極道の者。そして、今彼らを揺るがす事件が起きている
権狐兵十(ごんこ・へいと)「お前ら、何者だ」
 総介、桜らが招き入れた団体……それはEighter一行に他ならなかった。
梓與鷹(よたか)「ええと、総……紹介とかしてないのか?」
(かみ)総介「フン……」
 いや、フン……じゃないから!
白拍子かんな「はじめまして……私たちはEighterの者です」
桐辻鞘火「えい……たぁ……?」
山咲(やまざき)桜「先ほど、ソンニャーレとの出会いから禅像の死まで、どうやって調べ上げたのか……それは彼らのおかげ
です」
兵十(へいと)「情報屋というわけか?」
與鷹(よたか)「……どちらかというと何でも屋……?」
 まぁ、今はそんなことはおいといて……
かんな「過激派で野心家の徒勝大和(とかち・やまと)が今回の騒動の図面を引いた張本人です」
兵十(へいと)「やはりヤツか!」
與鷹(よたか)「ソンニャーレというイタリアンマフィアもその実態は義に生きる任侠のヤクザなんかじゃなく、愚連隊みた
いなモンだ……」
総介「そして、禅像がイタリアで巻き込まれたテロもソンニャーレが仕組んだマッチポンプ」
兵十(へいと)「馬鹿な……」
鞘火「では、父を死に追いやったのも……」
かんな「……はい、大和の手によって日本に招かれたソンニャーレの殺し屋……」
兵十(へいと)「おのれ、あのタヌキオヤジめ!」
 サングラスの下のキツネ目を開かずに叫ぶ兵十(へいと)與鷹(よたか)「それだけじゃないぜ、ここんとこ相次ぐ不審火だって大和の手引きによるものだ」
鞘火「それは、鍼暴(はりぼう)組とソンニャーレを前面衝突させるため?」
かんな「ええ、そうです」
総介「さらに、大和は針暴組を乗っ取るために別の計画まで立てていた」
 そう宣言すると総介は近くの襖をすぱ〜んと開ける。
*「むぐう……」
 するとそこからブレザーに身を包み、布で猿轡(さるぐつわ)をされ、手錠をかけられた団体がなだれ込んできた
鞘火「なっ、これはどういう……?」
 そのブレザーには見覚えがある……と、言うか、鞘火が通う学校の制服だ
桜「筋書はこうです。あなたを監禁してレイプする……全てはソンニャーレの手により麻薬に染められた学生が巻
き起こしたこと……先代の娘をこんな目に合わせたソンニャーレを許してなるものか!……正統派をたきつけソン
ニャーレと前面衝突させる……」
兵十(へいと)「なっ、なんてことを!」
 手にした日本刀をギリギリと力の限り握りしめて叫ぶ兵十(へいと)
総介「そして、その隙に乗じて正統派を全員始末するというわけだ」
 だが、かんなが先に計画を察知したことで最悪の事態は免れたというわけだ。

#4
鞘火「麻薬についても情報はあるんでしょうね?」
総介「当然よ……」
 くいっと桜を顎で使うと、待っていましたとばかりに桜が語る
桜「熊谷に蔓延っている新型ドラッグ、アックワサンタ……一見すると黄色く染まった阿片の様に見えますが全
くの別物。その効果は多幸感の果てに粗相をしてしまうとの情報も……」
鞘火「でも、奴らがどこからその麻薬を仕入れているのか……それがわからない……」
 だからこそ、鞘火らは手が出せずにいた。ソンニャーレと裏でつながっている過激派は言わずもがなである。
総介「フッ、奴らは堂々と麻薬を栽培していたんだよ……無許可の畑でな」
兵十(へいと)「そんな馬鹿なッ!」
 奴らは畑を勝手に作って、そこでトマトを栽培していたのは知っていたが、麻薬など栽培していなかったはずだ
……
総介「そして、俺がこの騒動を解決するためにやってきたのはそこにある」
鞘火「どういうことよ?」
 ここまで来れば、もうお分かりですね……?
 総介が動く時間、そこには必ずと言っていいかどうかは不明だけれどオーパーツが関与している……かもしれな
い!
※待って!断定してよ、そこは!
かんな「育てているものがトマトだと言われ、見てみれば確かにそれはトマトだったならば、それが実は麻薬だっ
たなんて思いもしない……そういうわけです」
兵十(へいと)「なっ!?」
総介「これが奴らが栽培しているトマトで間違いないな?」
 そして、総介は桜に持たせていたカバンの中からトマトを一つ取り出す
兵十(へいと)「ああ、間違いねぇ!」
 断言できるのは、奴らが育てているトマトがものすごく特徴的な形をしているからだ……もこもことした茶巾を
絞ったような形のトマト……品種名をフィオレンティーノというそれは、イタリアのトスカーナ地方が発祥とされ
る、その地方で古くから栽培されているトマトだ。
兵十(へいと)「品種改良して麻薬に転化したとでもいうのか」
総介「そんな生易しいものではない……切ってみればわかる」
兵十(へいと)「はぁ?」
 そういわれ、鞘火は懐から匕首を取り出すとトマトを両断しようとする。
 ぎっぎっ……
鞘火「え?」
 それは、砂をめいいっぱい詰め込んだ袋を斬るような感触だった……
 そして、トマトの中からは黄色い粉末があふれ出す。間違いなく、それは今世間を騒がすドラッグ、アックワサ
ンタだった。
桜「トマトと称して麻薬を堂々と育てる……よく考えたものです」
兵十(へいと)「こ、これは一体どういう……」
 い、今起こった出来事をありのまま話すぜ……というのは正しくこの流れだ。


続

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