Eighter -Midnight Howling-
29ther 〜闇影(やみ)ニ堕ツル大地(ガイア) B〜



#3
 オルタナチスの幹部、青光のカーボナードと死合っていた與鷹(よたか)。
 思った以上にヘナチョコなカーボナードに與鷹(よたか)は早々にケリを付けようとするが、そのとき、彼の化けの皮が剥
がれる
梓與鷹(よたか)「足元に水……」
 先ほどカーボナードが実践して見せたように、この状態でスピードを出し過ぎるのは危険だ。
 だが、分かっているならば、対処は簡単だ。要は走らなければいいのだ
カーボナード「フッ、アクアテイル」
與鷹(よたか)「何ぃ!?」
 ゆっくりと歩いていくと、言うことはそれだけ隙を見せなければならないといことだ。その間、カーボナードは
背後から忍び寄り、水でできた尻尾で一撃をくらわす。
 滑る足元の状態で勢いよく叩き飛ばされる。それはすなわち、ハイドロプレーニング現象が巻き起こるというこ
とだ。
與鷹(よたか)「う、うおおお?」
 まさか、こいつ、さっきまで(わざ)とこんなことを?
カーボナード「フハハハハッ!だから言ったんだ、貴様は既に我が術中にいる、とな!」
與鷹(よたか)「ええいっ壊狼闘刃(かいろうとうじん)ッ!」
 ズドオンッ
 破壊の拳気を前方に叩き付けて反動で無理やり止まる與鷹(よたか)。そして、すぐさま後ろを振り向きカーボナードを追
う……が、しかし、そこにカーボナードの姿はなかった
與鷹(よたか)「なっ、どこへ?」
カーボナード「砕け散ろ!」
與鷹(よたか)「後ろだと?」
 背後からの声に再び振り向くと、そこには殴り掛かってくるカーボナードの姿があった。
與鷹(よたか)「うおおおっ!壊狼闘刃(かいろうとうじん)!」
 バシャアアッ
與鷹(よたか)「え?」
 破壊の拳気を込めた一撃でカウンターを浴びせる與鷹(よたか)。しかし、カーボナードは突如水飛沫を上げてはじけ飛ぶ
與鷹(よたか)「水の分身?!」
カーボナード「かかったな!アクアブレイク」
 そして再び背後から声がする。振り返る間もなく、與鷹(よたか)は高水圧で地面に叩きつけられるのであった。
與鷹(よたか)「ぐく……」
 手足からじわりと血が(にじ)む。
 先ほどの技は水圧で叩き付けると同時に水の刃で斬りかかるという複合技だった。
與鷹(よたか)「こいつ……」
 巫山戯(ふざけ)ているが、強い……
 油断しているように見せかけて隙をつくスタイル、と言えばいいのだろうか。しかし、遊びが過ぎる。油断して
いるところを見せている間に勝負が決まっていたらどうするつもりだったのか……
與鷹(よたか)(いや、そこで水分身ってことか……?)
 いずれにせよ、気を引き締めてかからないといけない相手であることに変わりはない。
與鷹(よたか)「行くぞ!青光のカーボナード」
カーボナード「来いや!」
 気合新たに一足飛びにかかる與鷹(よたか)

#4
カーボナード「死ねぃ!アクアブレイク!」
與鷹(よたか)幻狼襲(げんろうしゅう)!」
 迫る水の魔手を建物ごと吹き飛ばすオーラの拳で弾き飛ばす
カーボナード「何だと?」
與鷹(よたか)「ハッ!神狼九断(しんろうくだん)!」
 ドドドドドドドドドッ
 深く懐に飛び込んでからの九連続打撃。
與鷹(よたか)「なっ?」
 だが、手ごたえがない。カーボナードはアクアジェットの応用で足元に水を出現させ、滑るように後退し、與鷹(よたか)
の連撃を回避したのだ。
カーボナード「泡沫(うたかた)のアリア!」
 水が絡みつき、與鷹(よたか)の動きを封じる。
カーボナード「うおおおおおあ!」
 どかどかどかどかどかどかどかんっ
 そして、カーボナードはそんな身動きがとれない與鷹(よたか)に拳撃のラッシュを見舞う。
※って、ここだけ普通に通常攻撃かぁ〜〜い!
カーボナード「フッ」
 パチンと指を鳴らすと與鷹(よたか)に絡みついていた水がばしゃりとただの水に戻り、地面へ落下。
 與鷹(よたか)も同様に地面に崩れ堕つ。
カーボナード「見たか!これがシュヴェールトの力!我らが第四帝国が世界を席巻するための剣!」
 グっと拳を握りしめさらに続ける
カーボナード「ドイツの水圧は世界一ィイ〜〜!」
 最早無茶苦茶である。
與鷹(よたか)「まだ、勝負はついちゃいねぇぜ……」
カーボナード「強がるなよ……先ほどの連撃を受けて貴様に闘う余力は残っていまい」
與鷹(よたか)「いや、まだだ……」
 ぐぐっと立ち上がる與鷹(よたか)。その眼はまだ死んではいないし、ボコボコにされた割にはピンピンしている。
カーボナード「馬鹿な……俺の拳を受けて立っていられるなどと……貴様、何を?」
與鷹(よたか)「それは企業秘密だ!」
 種を明かすと双狼拳の奥義が一つ、聖狼躱虚(しょうろうたうろ)である。相手の繰り出すあらゆる技を回避し
てカウンターを行うこの奥義だが、流石に全身拘束されていてはカウンターは繰り出せなかった。
 さらに言うと、拘束されていたことで無傷のまま回避することもできなかったわけだ。
 それでもあんな状態から致命傷を避けて攻撃を躱せるなんてインチキな奥義である。
與鷹(よたか)「次で最後だ!」
カーボナード「よかろう……ならばこちらも最大最強の奥義で貴様を葬ってくれるわ!」
 水が集い球体をなす。
カーボナード「喰らえ!海神(わだつみ)のシンフォニア!」
 巨大な水球が與鷹(よたか)に襲い掛かる
與鷹(よたか)聖狼躱虚(しょうろうたうろ)!」
 しかし、それをするりと回避してカーボナードの前へ迫る
カーボナード「なっ!?」
 これが先ほどは万全の状態で見せることができなかった双狼拳奥義、聖狼躱虚(しょうろうたうろ)!
カーボナード「あぎゃあ〜〜〜!?」
 かくて、與鷹(よたか)の拳の前にカーボナードは沈むのであった。


続

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