Eighter -Midnight Howling-
22nder 〜とある封廟の禁断フォビドゥン D〜



#7
 Eighterとは別口で銀鯱(ぎんしゃち)の壊滅の指名を受け、自衛隊海軍特務、シーゼロは行動を開始した。
 ま、それはおいといて、ここで話はあろえVS鋼線の紅鮫の死合に戻ります。
鋼線の紅鮫「……すこしはやるじゃねぇか……」
百鬼あろえ「そりゃどうも……」
 何度かの斬撃を交わしつつ反撃に転じていたあろえだったが、この死合は膠着状態にあった。
 リーチの差である。
 鋼線の紅鮫の手刀カタールの方がリーチが長いので、普通に打ち合っていてはあろえの斬撃は届かない。
 と、言うわけで、懐に飛び込んで斬撃を見舞えばいいわけだが、相手は二刀あるため、防がれてしまうのだ。
あろえ(さて、どうしようかしら……)
 しかし、別段焦っているわけではないあろえ。まだ、万策尽きたわけでもないのだ。
鋼線の紅鮫「フッ、だが、そこまでよ、我が龍脈手刀の前に敵はない」
あろえ「大きく出たわね」
鋼線の紅鮫「喰らえ!我が必殺のぉ〜〜〜」
 と叫びつつ右の手刀カタールを大きく振り上げる。
鋼線の紅鮫「龍脈ドリルブレイカー」
 ギュワワ〜〜ン
あろえ「嘘おっ」
 あろえがそう呟くのも無理はない。手刀カタールの付け根、腕関節が高速回転しているとしか思えない感じで手
刀カタールが高速回転しているのだ。
 ズババババッ
あろえ「ああっ、私のコート!」
 突撃してくる鋼線の紅鮫をどうにか回避するも、ちょっと間に合わず赤いコートが斬り刳られる
鋼線の紅鮫「フハハハハ!これが龍脈エネルギーの真髄」
あろえ「いや、絶対それ、龍脈関係ないし……」
 こんなことに龍脈なんて名前を使われるなどと、龍脈に心があったらきっと嘆いているに違いない。
鋼線の紅鮫「先ほどはよくぞ躱した、だが次はそうはいかん!龍脈ドリルブレイカー・ダブルッ!」
 ギュワワァ〜〜ン
 要するに両手ドリルである。
鋼線の紅鮫「ドリルは漢のロマン〜」
あろえ「そんなのロマンじゃないわ〜」
 魂の叫びであった。
 まぁ、ともかく、巫山戯(ふざけ)てはいても、強力な攻撃であることは変わりがない。
 迫る両手ドリルをしゃがみ込んで回避すると同時に鋼線の紅鮫の股の間を通り抜けて距離を置く
鋼線の紅鮫「ちっ、さっきからちょこまかちょこまかと……」
 壁から手刀カタールを引き抜いて振り返りあろえを睨む
あろえ「うっわ……」
 あろえの顔が引きつる
 それは恐怖からではない。いや、ある意味恐怖なのだが……
 そう、回転を終えた両方の手刀……腕の付け根が青黒くはれ上がり、しかも掌が両手とも裏返っているようにし
か見えなかったからだ。

#8
 狂っているようにしか見えない……その点にあろえは恐怖したのだ。
あろえ(ヤバイ……なによあれ、龍脈エネルギーで回復できるからってやりたい放題すぎなんじゃ……)
 しかも平然としているのではなく、なんか薄気味悪い笑顔向けてるし……
 龍脈エネルギーじゃなくてなんか危ないドラッグでも使っているんじゃないか……思わずそう考えるあろえ
あろえ「まぁ、いいわ……とっととこんなの終わらせる」
 先ほどリーチの差で膠着していたが、それを打破できる手があると言ったが、今こそ使う時
あろえ「繍眼児(めじろ)」
 ザンッ
 斬撃と同時に光の剣閃が飛び、鋼線の紅鮫に襲い掛かる
鋼線の紅鮫「フッ」
 対する鋼線の紅鮫は両手の手刀カタールで×の字を描くような構え。
あろえ(防御しようたって無駄よ)
鋼線の紅鮫「ハアッ」
 しかし、鋼線の紅鮫は防御ではなく、攻撃を繰り出した。×の字に構えていた両手の手刀カタールを一気に薙ぎ
払う。と、同時に剣閃が飛び、あろえの剣閃をかき消したのだ
あろえ「なっ」
鋼線の紅鮫「フハハ!これぞ、龍脈クロスラッシュ!」
 だから、龍脈関係ないでしょ……と突っ込む余裕もない。
鋼線の紅鮫「行くぞッ!」
 一足飛びにあろえの間合いを侵食……してからの至近距離から叩き込まれる斬撃
鋼線の紅鮫「龍脈クロスラッシュ!」
あろえ「柄長(えなが)」
 ドンッ
 鋼線の紅鮫が両手手刀カタールを×の字に構えた瞬間を狙って斬り上げ、上空へ飛ばす
鋼線の紅鮫「ぬなっ?」
 そして、宙に舞った鋼線の紅鮫を飛び越えるように跳躍して今度は斬り降ろしを叩き込み地面に叩き付ける
鋼線の紅鮫「んげはぁっ」
あろえ「まだっ差羽(さしば)ッ!」
 ドドドドドドドドッ
 更に追い打ちの連続抜き打ち。
鋼線の紅鮫「おごごごごっ!?」
あろえ「はぁ、はぁ……こ、これなら、どうよ?」
 あろえの使用する流派、虹影流……その四大奥義を二つ一気に解き放つ。
 四大奥義のひとつひとつだけでも結構な体力を消費するのに、二つ連続して放った結果、あろえの疲労もピーク
に達しようとしていた。
鋼線の紅鮫「ぐ……や、やりおるわ……」
あろえ「……」
 ゆらりと幽鬼のように立ち上がる鋼線の紅鮫に絶句するあろえ
鋼線の紅鮫「しかし、まさか俺がここまで追い込まれるとは思いもしなかったぜ……フッ、いいだろう」

#9
あろえ「……ふっ、ふふふ、いいわ……」
 そして、あろえもキれる
あろえ「虹影流四大奥義……全部喰らいなさいッ」
 ドドドドドッ
 まずは差羽(さしば)で連続抜き打ち、鋼線の紅鮫がひるんだところで柄長(えなが)。
鋼線の紅鮫「ぐおおっ!?」
 斬り上げで宙に浮かされたところを更に上空からの斬り降ろしで地面に叩き付けられる鋼線の紅鮫
あろえ「野鵐(のじこ)ッ」 
 ゴアッ
 更に間髪入れずに炎を纏った刃で薙ぎ払う。
あろえ「そして、斑鳩(いかる)ッ」
 ザザザザザザザザザッ
 冷気で纏った刃での九回連続斬撃の上、氷に閉じ込める
あろえ「えええい!」
 ドガキンッ
 そして、氷を一気に打ち砕く。
あろえ「こ、これで、どうよ?」
 もし、これでもダメならば、打つ手なし……とはいかないものの、相打ちを覚悟するしかない……
鋼線の紅鮫「……」
 ドッ
 だが、最悪の事態は免れた、さしもの鋼線の紅鮫も虹影流四大奥義コンボの前には砕け散ったのであった。


END

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